コメディ・ライト小説(新)

Re: 片恋.・。*平行線の恋模様*。・. ( No.16 )
日時: 2019/03/02 00:42
名前: Aika (ID: ix3k25.E)

Episode9:雨のなかで―――。






授業も上の空で気づけば放課後―――。


『皆瀬先輩と達也先輩…どっちが好きなの?』


芽生のさっきの言葉が頭から離れなくて…
ずっと、 反芻している。


―――変わらない。



今だって、 あの頃と変わらない気持ちがたしかにあたしのなかにある。


達也が…大好き―――。


そう思っているはず、 なのに。



「なんで…こんなに、もやもやしてんだろ」




やめやめ!
もう、あれこれ考えるのは止めよ。

あたしは、心のなかで首を横にふりながら難しく考えないようにした。
今日は、珍しく午後練が休みの日だしとっとと帰ろ。

そう思い、 下駄箱に行った矢先…。




「嘘だろ…」



外は、 いつの間にか大雨が降っていて、傘なしでは帰るのが難しい状態―――。



「最悪…」



こういうときに限って、 傘持ってきてないんだよな―――。
もういいや。走って帰ろ。


そう思い、 足を踏み出したとき。




「―――おい」




後ろから差し出された傘に…ビックリして。
振り返ると。



そこには。





「―――風邪、 ひくぞ」





見知った…同じ部活で同じパートの先輩の顔。
いちばん顔を見たくなかった先輩の顔にガッカリして。
あたしは、いつもみたく憎まれ口をたたいてしまう。





「―――なんで、 先輩なんですか」
「は?」






中学生の頃に、 傘を差し出してくれたのは―――。




達也だったのに。





期待していた人物じゃないからか、いつもよりもイライラしながら、あたしは皆瀬先輩に向かって言う。





「―――いいです。濡れて帰るんで」
「はぁ!?こんな雨で、馬鹿言うな」



断るけど。なおも、引き下がらない先輩。
放っておいてほしいのに。
なんで、 そっとしておいてくれないの?


その事にたいして余計、苛立ちを感じながら。
意地になって、強い口調で言い返す。




「いいからっ!もう、 放っておいてくださ―――」
「無理」



言葉を遮られた。



続けて、 口にした言葉は。




信じられないひとこと。





「―――なんでかわかんねーけど…お前のことは放っておけない」




真剣な瞳で、 まっすぐにあたしのことを見る君にあたしは、なにも言い返せなくて。


イライラしていたのも忘れて呆けてしまい

言葉を失う―――。




「―――だから…黙って傘に入れよ」




いつもの先輩は…顔を見れば憎まれ口ばっかり言うくせに。
今日は、なぜだかいつもよりも優しくて。



調子が狂う―――。



結局、 先輩の気迫に負けてしまい。
一緒に帰ることになってしまった。





お互いに会話なんかなくて。
雨音だけが鳴り響いていて―――。



達也と帰ったあの雨の日が脳裏にフラッシュバックしてくる―――。


なにか、 会話しなきゃいけない。
そう思うのに。



何を話したらいいのか、 わからなくて。



さっきから、そんな悪循環が頭の中で起きている。



そんなとき。

曇天の薄暗い雲が
鋭く光ったと思ったら。



―――ゴロゴロッ…。




勢いよく雷の音が聞こえて―――。




「ギャッ…」



ビックリして、 思わず先輩の腕を掴んでしまった。


それから、ハッとして我にかえって。



「す…すみません!すぐにはなれま―――」


怒られると思って…とっさに離れようとするけど。
その手を先輩はなぜだか離してくれなくて―――。



「あの…せんぱ―――」


言いかけたとき。


―――ドサッ…。



スクールバックと傘が勢いよく落ちて。




気づいたら。




――――あたしは、 先輩の腕の中に閉じ込められている形になっていた―――。