コメディ・ライト小説(新)

Re: 片恋.・。*平行線の恋模様*。・. ( No.17 )
日時: 2018/10/13 15:13
名前: Aika (ID: iLRtPlK2)

Episode10:それぞれの。






雨の音が鳴り響くなか―――。

あたしを抱き締める手は
とても温かくて…。



「―――せん、 ぱい?」



問いかけると。
不意に先輩はハッとして。
勢いよくあたしを離して距離をとる。



そして、 赤い顔で



「―――俺…何して…」



口に手を当てながら慌てた様子でそう呟いていた。
あたしは、 何も言わずただ先輩の顔を見つめていると。


「ごめん!」



大きな声でそう言い、 先輩は走り去っていく。
あたしは、先輩が置き去りにしていった傘を拾い…その場から歩きだす。

―――まだ、 鼓動はドキドキと小さく高鳴っていた。



なんで?





抱き締めたんだろう、 先輩は―――。





「―――わけ、分かんない」





雨の音だけがその場に静かに鳴り響いていた―――。




■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □



翌日。
先輩に傘を返そうと思い、朝一番で先輩の教室に行くと。


「あー、皆瀬?今日は風邪で休みだってよ」


クラスメイトの人にそう言われた。
風邪で休み、か。


「分かりました」


それだけ言って先輩のクラスから出ていくと。

「あれ?…柚月?なんでここにいるの?」

偶然に、達也と鉢合わせをしてしまった。

「実は昨日、皆瀬先輩に傘を借りて返そうと思ったんだけど…いないみたいで」
「あー…アイツ、風邪って言ってたっけ」
「うん。だから、今日の帰り…先輩の家まで返しにいこっかな」

何気なくあたしがそう言うと。
不意に達也の顔が曇った。

「―――え?輝の家まで行くのか?」
「うん。ないと困るだろうし。お見舞いも兼ねていこっかなって」

言い終わる前に達也があたしの手から傘をとり。
ぶっきらぼうな感じで言う。

「―――俺が行くよ」
「え?でも―――」
「プリントとか届けるついでもあるし。俺が行く」

あまりの達也の強い口調にあたしは、何も言えなくなってしまい。

「―――わかった、 よろしくね。達也」
「おー。てか、そろそろホームルーム始まるから戻れ戻れ」
「そだね。じゃね!」

お互いに手を振り、別れる。







「―――はー。…何をムキになってるんだ、俺は」




達也が廊下でそう呟いた声は
あたしの耳には届いてなんかなかった―――。