コメディ・ライト小説(新)

Re: 片恋.・。*平行線の恋模様*。・. ( No.19 )
日時: 2019/02/08 02:22
名前: Aika (ID: PyqyMePO)

Episode12:恋を忘れるには―――。




「あ…先輩」
「あ?…あー、 なんだお前か」

朝の登校中。
バッタリと、大きいマスクをした皆瀬先輩と鉢合わせてしまった。

先輩の顔を見た瞬間。
こないだの…雨の日の出来事がわたしの頭の中にフラッシュバックする―――。

バカみたい。
なんで、あたしがこんな奴に振り回されなきゃいけないんだろ―――。

心の中にそんな黒い感情があったからか、苛立ちながら言葉を返す。

「お前かって…朝から失礼ですねっ!風邪はもう大丈夫なんですか?」
「あー…まぁな。まだちょっと咳が出るぐらいだ」
「そう、ですか。それでっ、あのっ…」

あたしは…あの日…雨の日になぜ先輩があんな行動を取ったのか…何故か気になっていて―――。

聞こうとしたけど、 上手く口が動かなくって。


「な…なんでもないです」
「あっそ、 なら行くわ」


先輩はさして、気にした様子もなくスタスタとあたしから去っていく。

―――なんで…先輩はあんなにも普通にいられるの?
まさか、覚えてない…とか?

あの日から熱があったみたいだし。
その可能性はなきにしもあらず、だけど。
あたしだけが…覚えてるってなんかずるい。

モヤモヤとした感情を胸に抱えながらあたしは、学校までの道を歩いた。



□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □


*輝 side*


「はー…俺、 普通…だったよな?」

下駄箱に着くなり、誰に言うでもなくそう言葉を漏らす。

「なんの話よ?」
「うっわ!!って…なんだ、夏希かよ」
「なんだって…ひどいなー、人が心配してたって言うのに。LINEしても全然返してくんないしさー」
「そーれは…悪かったよ」

クラスメイトでもあり、部活仲間でもある夏希にそう憎まれ口を叩かれる。
まったく…今日は朝からいろんな奴に皮肉なことを言われるなー。

「てかさー、輝って最近…同じパートの1年の女子と仲良くない?」

脈絡もなく、突然夏希からそんなことを言われた。
同じパートの1年って…

「おい…それ、上田のことか?」
「雨の日」

そのワードにギクリとする。
まさか、こいつ―――。

「―――――あの子のこと、抱き締めてたでしょ?」
「みて、たのか?」
「まぁねー、で?」

除き混むように見つめる夏希の瞳は冷たかった。
それから、問いかける。

「――――上田さんのこと、好きな―――」
「――――好きじゃねーよ」

聞かれる前に被せるように答えた。

それを聞いた夏希は嬉しそうな表情を見せる―――。

「そうだよねー、 好きなわけないよねー。だって」

それから、夏希はそっと耳元に口を近づけて言葉を紡ぐ。




「――――輝が好きなのは… 星羅ちゃんだもんねー」




そうだ。
俺が好きなのは… 今も昔も
ただひとり。




「輝の筋金の一途っぷりは、そう簡単には揺れないもんね。 けど、待ってて」
「?」





「絶対に…輝を振り向かせるのは、 わたしだから」
「夏希―――」
「星羅ちゃんなんて、すぐに忘れさせてあげる」


夏希の真っ直ぐな瞳が、俺だけを見つめる。

ため息をついて、俺はその言葉になにも答えず教室へと向かう。
背中からひどいーと言う夏希の声がこだました。
俺だって…星羅のことを早く忘れたい。
けど、そんな簡単なことじゃねーんだよ。


星羅以上に好きになれる人なんかいないんだよ。





恋の忘れ方があるなら、 誰か教えて欲しい―――。





そんなことを、このときの俺は感じていたんだ。