コメディ・ライト小説(新)
- Re: 片恋.・。*平行線の恋模様*。・. ( No.20 )
- 日時: 2019/03/02 00:40
- 名前: Aika (ID: ix3k25.E)
Episode13:揺れる心。
『―――輝っ! 大好きだよ』
今でも時々、夢に見る。
長い髪をなびかせながら、優しげな瞳で俺を見つめて――――。
満開の桜のような、 まぶしい笑顔で俺の名を呼ぶ君の姿を――――。
目の前から、 君がいなくなったことなんて
自覚しているはずなのに――――。
前に進まなきゃいけない。
そう頭では分かっているはずなのに――――。
俺の時間は… 君がいなくなった1年前から
止まったまま――――。
■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■
.・。*柚月side*。・.
気がつけば、 中間試験前となり
部活動はお休みの期間に入った。
しばらく、皆瀬先輩の姿を見なくて済む…。
そう思うとなんだか、ほっとした。
結局…あの雨の日から部活の中でもまともに話すことができなくて、お互いによそよそしい感じになっている。
というか、あたしが一方的に避けている。
だって…
誰だって、 あんな風に抱き締められたら意識するはずだ。
それがたとえ、 好きじゃない相手だとしても。
「はぁー…」
自然と大きな溜め息が出た。
あの日から…あたしは、変だ。
前まで…あれほど、 達也が好きって思っていたのに。
今では、 達也のことよりも
皆瀬先輩を気にしている自分がどこかにいる。
朝の登校中。
移動教室の時。
お弁当の時間、購買に行った時。
帰り道――――。
最近になって、 探しているのは――――。
アイツの面影だ―――――。
もしかして…あたし、 皆瀬先輩のこと――――。
「なっ…ないない!」
思い当たった考えに、 自問自答する。
違う、 こんなのは恋じゃない。
ただ、抱き締められた理由が分からなくてモヤモヤして、アイツのことばかり考えているだけだ―――。
そうだ、 その通りだよ。
だいたい、 皆瀬先輩とあたしは相性最悪だし絶対に好きになるわけない。
自分にそう言い聞かせて、あたしは教科書を鞄に詰めて帰り支度をした。
スクールバッグをのぞいて、あたしはふと一冊の本が目に入った。
それは、この間図書室で借りた本だった。
返却期限は今日の日付になっている。
「やっばー!返してこなきゃ」
その場でそう言い、あたしは足早に図書室へと駆け足で向かった。
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図書室へ足を踏み入れると、試験前だからかいつもよりも多くの生徒が利用している。
勉強している生徒もちらほら見える。
カウンターへ本を返却したあと、あたしは
せっかく図書室に来たし試験前だから勉強していこうと思い、空いている席に腰かけた。
すると。
「―――あれ? 上田じゃん」
聞きなれた声の方向に視線を向けると。
声の主を見た瞬間、自分でも顔がひきつるのが分かった。
いま、 一番顔を合わせたくない人がそこにいた。
「みな、せ先輩………」
「何あからさまに嫌な顔してんだよ。地味に傷つくんだけど」
「す、すいません」
そんなに顔に出てたのか、あたし。
「上田も勉強かー?」
「まー、 そんなとこです」
数学の問題集を解きながら、あたしは適当に先輩の言葉に返事をした。
早く何処かに行ってほしい。
そんな希望を心の中で祈るが、その祈りは届かず
先輩は空いていた隣の席に腰かけた。
なんで、隣に座ってるのこの人。
「数学やってんのかー」
「まぁ…………」
あれ?ここって、どうやって解くんだっけ?
やば……分かんない。
シャーペンが止まっていると。
急に先輩が口を開いた。
「――――正弦定理じゃなくて余弦定理」
「えっ―――?」
そう言いながら、先輩は解説をしながら
丁寧にノートに書き込んで教えてくれた。
「―――先輩って……勉強できるんですね」
「馬鹿にしてんのか、お前。こう見えても俺は学年3位だぞ」
「嘘ー!!!」
今日一番の驚きかもしれない。
「驚きすぎだろ……ったく、失礼な奴」
「じゃあ、ここはここはー!?」
「あー、これか。これはな―――」
先輩に勉強を教えてもらいながら、
あたしはふと気づく。
―――あれ?
なんだ、 あたし……普通に先輩と話せてるじゃん。
横目で先輩を見ると。
この間のことなんか、まるで気にしていないかのようにあたしと接してくれている感じだ。
先輩のなかでは、 やっぱりあれは……深い意味なんかなかったのかな。
そう思ったとき。
あたしは、何故だか分からないけど胸の奥がもやっとした気がした。
どうして、自分がこんな気持ちになるのか……このときは深く考えなかった―――。
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気がつくと、辺りは真っ暗になっていて。
図書室にいる人もあたしと先輩だけになっていた。
「―――やっばー、 そろそろ帰らないと」
「あー、そうだな。じゃあ、帰るか」
当たり前のように一緒に帰ろうとする先輩にあたしは思わず聞き返してしまった。
「えっ……一緒に帰るんですか?」
「当たり前だろ。夜遅くに女の子1人で歩かせるかよ」
何気ない一言に、ちょっとだけドキッとした。
普段は……女の子扱いなんかしてないくせに。
天然でそういうことを言うのは……ずるい。
あたしは、熱くなっている顔をなるべく先輩に見られないように隠しながら先輩のとなりを歩いた。
お願いだから、 もう
あたしの心をかき乱さないでほしい。
お願いだから―――。
「―――上田? どーしたんだよ、さっきから黙って」
「なんでもないですっ」
「何キレてんの?」
「キレてないですよーだ」
達也でいっぱいだった、あたしの心を
揺らさないで欲しい――――。
そんな心の声は…… 貴方の元には届くはずもなかった――――。