コメディ・ライト小説(新)

Re: 片恋.・。*平行線の恋模様*。・. ( No.21 )
日時: 2019/03/02 01:35
名前: Aika (ID: ix3k25.E)

Episode14:夜風吹くなかで。






薄暗い夜道を、 皆瀬先輩と二人で歩く―――。
一緒に帰るのは…あの雨の日以来で緊張してしまう―――。

隣で歩いている先輩を横目で見る。

普段と変わらない…いつも通りの横顔だ―――。
やっぱり、 この間のことなんか先輩にとってはなんてことないんだな―――。

ぼんやりと、 そう考えていると。


「なんか、 今日はやけにおとなしいな…お前」


不意に先輩が口を開いて、 あたしの顔を除きこみながらそう言ってきた。

あたしは、とっさに否定する。


「そっ…そんなことないですよ、 いつも通りです」
「そーかー?…なーんか、最近避けられてる気もするし、俺なんかした?」

なんで、 こういう時だけ鋭いんだこの人は!

心のなかでツッコミを入れてから、あたしは先輩の言葉に返す。

「気のせいじゃないですか?あたしは、普段と同じように先輩と接しているつもりです」
「まー…上田がそう言うならいいんだけど」

先輩は自分の頬を掻きながら、ボソッとそう言った。
その仕草が少しだけ可愛く思えて。
あたしは、クスッと笑ってしまった。

「あー!何笑ってんだよ、お前」
「いや、 先輩にも可愛い一面があるんだなーと思いまして」
「なんだそれ!意味わかんねー」

可愛いと言われたのが照れ臭かったのか
先輩の横顔はほんのりと赤く染まっていた。

隣にいて話をすればするほど。

先輩の新しい一面を見つける。
そして、その一面を見つけるたびに。
ドキっとしてしまう自分がいる―――。

そんな想いとは裏腹に。
これは恋じゃない。
そう言い聞かせる自分がいる―――。



そんな風に悶々としているときだった。



「―――あれ?…柚月と、 輝?」



見知った声の方向へと顔を向けると。
そこには、 達也がいた。

皆瀬先輩も、達也の方に顔を向けていて手を振りながら話しかけていた。

「おー!達也じゃん。何?塾?」
「まぁな、これから行くところ」

それから達也はあたしと皆瀬先輩を交互に見てから口を開いた。

「輝が女子と一緒に帰るってめずらしーな」

意味ありげに、そう言う達也に
皆瀬先輩は笑いながら返す。

「たまたま、図書室で会って成り行きで一緒に帰ってるだけだよ」
「ふーん…成り行き、ね。そっか、俺はてっきり―――」

それから、一呼吸置いたあとに。
達也は続きの言葉を紡いだ。

「―――――もう、 星羅のことは忘れて柚月に乗り換えたのかと」
「―――――そんなわけないだろ」

力強く、 達也の声をかき消すような皆瀬先輩の鋭い声が響いた。

いまの…星羅さんって、 誰―――?

横にいる先輩に目をやると。
いままでに見たことがない、 怖い表情になっていた。
しばらくの沈黙のあと。
達也が再び口を開く。

「まっ…そーだよな。お前にとって星羅は特別、だもんな」
「…………………」
「じゃ、 柚月のこと…しっかり送り届けろよー」

そう言い捨てて、 達也は去っていってしまった。

それから、 先輩は呆然とその場に立ち尽くしていた。
星羅さんって人が出てきたとき。
先輩の表情がまるで、人が変わったみたいな顔になってた。

「あ…あの、先輩―――」
「あー…わりぃ、ボーッとしてた。じゃあ、行くか」
「―――はい」

ほんとは、 星羅さんについて聞きたかった。
だけど。
あんな、先輩の顔をみたら聞くなんてとてもじゃないけどできない。


―――星羅さんって…一体…?


あたしのなかで、 そんな疑問を残して。
その日は先輩と別れた―――。