コメディ・ライト小説(新)
- Re: 片恋.・。*平行線の恋模様*。・. ( No.29 )
- 日時: 2020/06/12 22:32
- 名前: Aika (ID: XWWipvtL)
Episode20:紅く染まる。
これ以上… 好きになりたくない。
生まれて初めて、そう思った瞬間だった――――――。
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結局… 今日の練習は全く身が入らなくて。
気がついたら、 下校時刻になっていた。
外はすっかり夕暮れで、真っ赤な空が一面に広がっている。
鞄片手に誰もいない廊下をひとり歩いていると。
廊下の曲がり角で…
「あ…」
よりによって… 今、一番会いたくない相手と鉢合わせになってしまった。
「あ…わりぃ…って、なんだお前か」
先輩はいつも通りに
そんな軽口を言っている。
いつもなら… それに対して何か言い返せてるはずなのに。
今日は… 何も返せない。
――――――今日のわたしは…変だ。
先輩の顔を見ると… どうしたって
意識してしまう。
普通に今まで通りに話したいのに。
それがうまくできない…
何とも言えないもどかしい気持ちになってしまう。
こんな気持ちになるのは… 初めてで。
どうしたらいいか分からなくて… もやもやする自分がいる。
駄目だ。
こんなぐちゃぐちゃな気持ちのまま先輩の隣にいたら…何を言ってしまうか分からない。
早く… この場から離れよう。
「さ…さよなら」
そう言って… 先輩の横を通り抜けようとしたとき。
「―――――待って」
予想外の展開に。
わたしの鼓動は… 波打つ。
先輩が…わたしの腕を、 力強くつかんでいる。
な、 何が…起きてるの――――――?
混乱するわたしの気持ちを無視して。
先輩は、 口を開く。
「―――――――俺のこと… 避けてる?」
そんな言葉が…出るとは思ってなくて。
わたしは、 とっさに。
「…っ… そんなことないですけど…」
言葉に詰まりながらも…否定する。
「そんなことあるだろ… 明らかに今だって、なんかよそよそしいし」
「わっ…わたしに嫌われたってどうだって良いじゃないですか」
全然… 腕を離してくれない先輩に
苛立って。
強い口調で思わず言い返す。
本当は…こんなこと、言いたくないのに。
素直になれない自分が… 本当に嫌だ。
どうでもいいとか…そんな答えが返ってくるのだろうと内心思っていたが。
返ってきたのは…
「――――――どうでもよくない」
思わず… 耳を疑ってしまうようなひとことだった。
「――――――嫌なんだよ… なんでか知らねぇけど、お前に避けられるの… なんか嫌なんだよ」
その言葉に…
また
鼓動が大きく高鳴る。
わたしを見つめる先輩の顔は。
夕焼けのせいか… 仄かに赤く染まっていた―――――――。