コメディ・ライト小説(新)
- Re: 片恋.・。*平行線の恋模様*。・. ( No.6 )
- 日時: 2018/04/03 01:25
- 名前: Aika (ID: tcaX5Vvk)
Episode3:散りゆく初恋。
達也を好き―――。
やっと、自分の気持ちに気づくことはできたけど。
特に達也に想いを打ち明けることなく。
時は過ぎていき。
お互いに進級して。
あたしは、中学2年。達也は、中学3年になった。
「―――中学…3年か」
3年生ってことは。
来年から達也は高校生になるわけで。
会えない時間が増える、 ということ。
幼馴染みだし、 家も隣同士だから全く会えなくなる訳じゃない。
そう考えても、 やっぱりさみしい気持ちは消せなくて―――。
「こんな気持ち…気づかなきゃよかった」
そうすれば。
こんな風に寂しく思うことなんかないのに。
「―――ゆっづきー!」
そんなことを思いながら、いつもの通学路を歩いていると。不意に背中から名前を呼ばれて。
振り返ると。
そこにいたのは。
笑顔であたしのもとへと駆け寄ってくる幼馴染みの姿だった。
途端に鼓動が大きく波打つ。
―――その顔は…反則だ。
「おはよ!」
息を切らせながらそう言って、あたしの隣にくる。
「…おは、よ」
真っ赤になっている顔を隠しながらあたしも、挨拶を返した。
達也を好きになってからなるべく、不自然にならないように接しているつもりだけど―――。
絶対に挙動不審だよね、 あたし。
「今日から柚月も2年で…先輩だなっ」
「そう、だね。後輩に教えられる自信がないけど」
「そんなことねーよ!お前のドラム、俺…好きだし」
『好きだし』
その言葉に…妙に反応してしまって。
途端に顔が熱くなる。
ドラムの音が好きだって…分かってる。
けど、 それでも。
そんな貴方からの言葉がすごく嬉しかった―――。
「―――だから、 自信もてよ」
そう言って達也はあたしの頭に手を置いて。
髪の毛をわしゃっとした。
―――なんか、 子供扱いされてるみたい。
その行動に不満は感じるものの…嫌なわけではなくて。
むしろ。
頭を撫でられることに心地いいと感じてしまう自分がいた。
「あ!達也に…上田さんじゃん!おはよー」
そんなとき。
偶然、 通りがかった吹奏楽部の達也の同級生の男子たちに達也があたしの頭を撫でているところを見られてしまった。
達也はバツが悪そうな感じで、あたしの頭から手を離す。
あたしは、 達也の同級生たちの顔が見れなくて。
黙って下を向いてしまった。
「達也~。道の真ん中で何いちゃついてんだよ?」
「え?何、 上田さんとそういう関係なの?」
予想通り。
今の場面から…あたしと達也が恋人同士だと勘違いしているみたいで。
そんな風に茶化してきた。
このノリ…ほんとに嫌だな。
「―――付き合ってないよ、 柚月とは」
はっきりと、 同級生の男子たちにそう告げる達也に少しだけ気持ちがガッカリしている自分もいて。
複雑な想いでいっぱいだった。
まぁ、 たしかに付き合ってないのはほんとのことだしね。
「―――でもさ、 達也って…上田さんのこと好きなんだよね?」
そのとき。
突然、 1人の男の子がそんなことを言い出して。
思考回路が止まった。
―――え?
達也が…あたしのことを、 好き?
バッと、 勢いよく横にいる達也を見ると。
達也の顔は真っ赤に染まっていて。
慌てて口を開いている。
「バッカ!!言うなよ!!!」
言うなって…ことは。
今のは、 本当のこと―――?
嬉しい…そう思ったのは束の間だった。
「―――それで?上田さんは、達也のことどう思ってるわけ~?」
「俺は、 両思いに一票~」
「いや、 俺は達也の片想いに一票かな」
あたしの返事を一斉にもとめてきて。
賭けをしている男子たちもいて。
なんだか、嫌な気持ちでいっぱいになる。
人の恋路が…そんなにおかしいのかな―――。
なんだか、
達也が好きだってことをこの人たちの前で伝えるのが嫌になって。
あたしは、気づいたら
思ってもいないことを口にしていた―――。
「―――達也は…ただの頼りになる幼馴染みです」
―――瞬間。
茶化していた空気が一気にさめて。
気まずくなったのか、 そそくさと茶化していた先輩たちが去っていった。
二人っきりになった瞬間。
自分が言ってしまった言葉に、 改めて後悔の気持ちでいっぱいになった。
弁解、 しようと思ったけど。
「―――ごめんな、 なんかアイツらがうるさくて」
達也の声が重なってしまった。
あたしは、その言葉に返事をする。
「いいよ、 別に。気にしてないから」
達也はあたしと目線を合わせないまま、会話を続けていた。
「―――悪い、 俺…先に行くわ」
「あっ…待っ」
『待って』
そう言いかけて…達也の制服の裾を掴もうとした。
けれど。
―――パンッ!!
その手を強く振りはわれた。
視界に映ったのは。
涙でにじんでいる、 貴方の顔―――。
「―――ごめん、 今は…柚月の顔を見るの…辛い」
その言葉に、 あたしは何も言えなくて。
去っていく貴方の背中をただ、 見つめるばかりだった。
―――「ごめん、 達也ッ…」
達也が去ったあと。
ひとり。
その場に立ち尽くして、 涙を流した。
あたしのせいで…あたしの言葉のせいで。
達也を傷つけてしまった。
ほんとは。
―――あなたが…好きなのに。
あたしの恋は…自分の本当の想いを言えないまま、終わったんだ―――。
桜の花びらが舞うなか。
初恋が散った…13歳の春――。