コメディ・ライト小説(新)

Re: 晴れでも傘が必要になることがあります。【コメント募集中】 ( No.13 )
日時: 2018/04/05 14:44
名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
参照: http://ちょっと久しぶり。

桐生も惚れ直しちゃったりしてね──楓の言葉が頭の中で繰り返された。
星に限ってそんなことがあるだろうか。……あって欲しいなと願う自分がいる。

「……おはよ」
後ろから声がした。振り返らなくても分かる……星だ。
「おはよ」
振り返り、ぎこちない笑みを浮かべて私もそう言った。
一瞬、星が目を見開いたように見えたけどそれは気のせいだろうか。

それ以上私達は何も言葉を交わすことなく、星は自分の席へ──私はゆっくりと体の向きを元に戻した。


.*・゚

「俺が好きなのは、大庭だから」
中学生の時、私も星と同じでバスケ部に入っていた。
部活帰りに初めて2人きりで帰ったその日、私は星に告白された。

星のことは嫌いじゃなかったしむしろ好きだったのかもしれない。良い奴だったしバスケも文句なしに上手い。
もしかしたらこんな好条件で異性と私が付き合えるなんてこと、これが最初で最後かもしれない──私の頭にはふとそんな考えがよぎった。

「……ほんとに?」
素直に私も頷こうと思っていたが口から出た言葉は私の意思とは異なるものだった。
疑い深い──私の悪い癖が出てしまった。

「うん。……いきなり変なこと言ってごめん」
辺りは薄暗くてはっきりと星の顔なんて見えなかったけど、多分赤かったんじゃないかなと思う。

告白してきた相手に私なんてことしてるんだろう。──自分がその立場ならって考えると恥ずかしさで死んでしまうかもしれない。

「じゃあ俺、こっちだか……」
「待って!」
星のエナメルバッグを引っ張った。

「わ、私も星のこと好き」
ぎこちなくて、声が裏返っていて──。 それでも私なりに振り絞った精一杯の声だった。

「そっか。 俺嫌われてんのかと思った」
大きく息を吐いて星は嬉しそうに笑った。


その場には私と星しかいなかったのに、1週間も経たないうちにクラスどころか学校中で私と星が付き合い始めたという噂は広がった。

「どっちから告白したの?」
「大庭さんが、詰め寄ったって聞いたよ?」
「もうキスした?」
なんで人間はこんなにも噂話が大好きなのだろう。
でも、誰かから私と星の間柄について聞かれるたび曖昧に返答しつつも心の片隅ではちょっと嬉しかったり誇らしかったり……そんな感情もあった。



今が高2だから、そろそろ付き合い始めて3年。
高校では中学とは違って、みんなから大きく冷やかされることもなく私と星の関係は当たり前のこと、というように扱われた。
今だってクラスも離れていないのに……こんなにも星を遠く感じるのはなぜだろう。

鞄から携帯を取り出すとカレンダーのところに通知がついていた。
何か今日に予定が入っていただろうかと不思議に思いながら開くと、「星」と書いてあった。


──忘れていた。
今日は星と出かける予定だったのだ。
つい2年前までは星と出かける前日はソワソワして眠れなくなるくらいだったのに。

やっぱり星のことを遠く感じる原因の1つは私の星に対する思いが薄れてきていること、なのだろうか。


あとで今日の予定のこと、星に聞いてみようか。


.*・゚

いつも私はコロコロと視点を変えて小説を書いていますが、今回のこの作品は視点固定でいこうと思います。
参照数の記念とかで番外編を書く時があったらその時はもちろん別の視点から書こうと思います。

byてるてる522

Re: パソコンだとここが長いと指摘受けました笑← ( No.14 )
日時: 2018/04/14 20:44
名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: lKhy8GBa)
参照: http://久々PCから。

1時間目が終わったと同時に、私は教科書やノートをとんでもなく雑に机の中へ放り込んで立ち上がった。
──もちろん向かう先は星のところだ。

冷やかされることはない。 だから人前でも何の抵抗もなく星には話しかけることができる。
……と後ろからわざとらしくぶつかられた。

「あぁ大庭さんいたんだ。 ごめんね、双葉見えなかったんだぁ」
わざとらしい。 口にはけして出さず心に留める。
たまたま悪意のある言い方になってしまうこともあるだろうが、絶対にこの子──芽吹めぶき双葉ふたばの場合はわざとだと思う。

今までこういうことは何度かあったし、今も私がちょっと星の方へ行こうとしただけでこれだ。
きっと芽吹双葉は私を嫌っていると同時に、星に好意を抱いているのだと思う。

「うん。こっちこそ何かぼーっとしちゃってたから」
愛想笑いを浮かべる私がに落ちないのか芽吹双葉は何も言わずに、その場を去っていった。


.*・゚


「……で、何で廊下?」
結局私は星を呼び、廊下で話をすることにしたのだ。
「まぁ……何となく」
「話は今日のことだろ?」
「そう!」
星は覚えてたんだ──遠く感じるとか思ってたけど、距離作って……お互いの事考えてなかったのって私の方だったのかな。

「部活あるから少し遅くなるけど、駅で待ち合わせで良い?」
「了解。 私も今日は図書室に寄りたいなって思ってたから丁度良い感じかも」

2人で教室に入る──今から楽しみかもしれない。


携帯を取り出し、日記アプリを開いた。


──最近同じことを繰り返しているかのように面白味のない日記が続いていたけど、今日は違う。
今日のページの1番上にそう書いて、アプリを閉じた。

そんなに自分がマメな人間だとは思わなかったのだが、偶然クラスメイトが話していた日記アプリを暇つぶしに入れてみたら毎日書く癖がついてしまったのだ。
かれこれ1年以上は続いている。

その場の気持ちが包み隠さずに書かれているから、あとになって見返そうとは思えないのだが落ち着く。
国語の授業や課題として出される作文などは好きではないのに不思議。


楓に一度、「蕾の日記って読んでみたい」とすごく目をキラキラさせながら言われた事があったっけ。
……まさかそんなに興味を持たれるなんて思っていなかったのと恥ずかしさで、激しく拒否してしまったけれどもう少し面白味のある毎日を──今日みたいな日を過ごせたら、見せてもいいのかなと思ったりする。


数分遅れで担当の先生が入って来た。


だらっとした雰囲気だったが、先生の口から「小テストを行う」と一言。
ブーイングの声を上げたのは私だけではなかった。


.*・゚

久しぶりにパソコンから書いてみました。
iPadとは違うキーボードの押し心地が楽しいです笑(*´`*)

もうちょっと他の作品も更新します( ᐛ )و

byてるてる522

Re: 晴れでも傘が必要になることがあります。【コメント募集中】 ( No.15 )
日時: 2018/04/17 17:01
名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
参照: http://最近雨風続きですね。

「つーぼみー」
背中にズシンと重い何かが乗っかる。──「何か」というのは他でもない楓だ。

「ん。 どーかした?」
「小テスト、どうだった?」
けして楓は私の傷口をえぐろうとしているわけではないと分かっている。 けれどそんな……今さっき目にした現実離れした小テストの結果を忘れようとしていた最中だったのに。
「多分楓が想像している以上に最悪でした」
「ふーん」
聞いておいて、その薄い反応はなんだ。

「じゃあ楓は?」
「いつも通りかな。 可もなく不可もなくってとこ」
楓は私と違って家でも多分毎日勉強している。
だからテスト前だろうと気持ちに焦りはないし、今日のような特にテストなどが近くない日と変わらない様子で飄々ひょうひょうと過ごしている。

「……またテスト前、よろしくお願いします」
私は毎回テスト前に学校では楓に、家では陽向ちゃんに勉強を見てもらっている。
2人とも教えるのが上手くて分かりやすい。
「考えておきます」
ふんわりと、でもいたずらっぽさも含まれているようなそんな表情で楓は言った。
こうはいうものの、楓は必ず私に勉強を教えてくれる。


──私はいつも楓に何かを与えてもらってばかりなのだ。


.*・゚


授業が終わった。
楓は「弟達の迎え行くから」と私がのんびり支度をしている間に教室を出ていった。

校庭や体育館、テニスコートから活気ある声が聞こえる。

階段を通って図書室に入る。 図書室の先生といかにも本が好きそうな人たちがバラバラに席に座り本を読んだり、自習をしたりしている。
テスト前になると席が全部埋まるほど自習をしにくる生徒がいるんだとか。


適当に文庫本サイズの本がたくさん並んでいるところへ行き、特に何を読むとか決めているわけではないから本の題名をサラサラと眺めて、気になったものを手に取って……を繰り返す。

「あ、この本……」
少し前に買いたいな、と思っていた本だ。 ハードカバーで値段もそれなりにするから結局買うのを諦めたんだっけ。
文庫本が出ていたとは……しかも図書室にあるなんて。

引き抜いて貸し出しのカウンターまで持っていった。

久しぶりに図書室に寄ってよかった。
いい本が見つけられた。──幸せだ。

……そろそろ駅へ向かおうか。
ちょっと早いけれど本を読んで待っていたらきっと時間が経つのなんてすぐのはずだ。


昇降口を出て部活中の人とすれ違い、学校を出て駅へと歩みを進めた。
額からするりと汗が一筋流れた──……。


.*・゚

若干短めです(((;°▽°))

byてるてる522

Re: 晴れでも傘が必要になることがあります。【コメント募集中】 ( No.16 )
日時: 2018/05/05 15:49
名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
参照: http://GW全部部活。

私と同い年くらいの5人組の男女のグループが前から、ゲラゲラと見ているこっちが恥ずかしくなるくらい大きな声で笑って歩いてきた。 周りなんて気にもしてない。
「痛っ……」
そのうちの1人の背が高い……星より高いくらいの身長の男子が肩にぶつかってきた。
思わずその男子を見ると、相手も思いきり私を睨んでいた。

「いいよ、行こうよアキ」
女子がアキと呼ばれたその男子を呼んで、またその5人組は向こうへ歩き始めた。

どう考えても前を向かず、不注意で私の方へぶつかってきた相手が悪いのにあんなに睨まれちゃたまったもんじゃない。
──本当にちょっといい気分だったら、すぐこうやって嫌なことが起こる。


人があまりいない駅の前のベンチに座り、星に居場所を伝えてから私は本を開いて読み始めた。
人通りが多い駅前の中でもここは、過ごしやすい。 駅前で待ち合わせする時は大抵ここだ。


*

「お待たせ」
星が来た。 本を読むのが遅い私はまだ20ページも読んでいない。

「うん」
「行こっか」
並んで歩く。──歩く時、少し前はお互いドキドキしながら手を繋いで歩いたっけ。
私も星も緊張しまくりで手汗がひどくて笑いあった。

今も私達の距離が離れてるわけじゃないけれど、ちょっと距離が遠く感じる。

行き慣れたお店に入る。
私はこのベリーソースとチョコレートソースがかかったやつで、星はキャラメルソースとナッツがかかってるやつをいつも頼む。

「蕾はほんとにそれ好きだよな」
「星こそいつもそれ頼んでるよね」
ちょっとしたやり取り。 注文したものが来たら、あとはもう話すこともなくて携帯をそれぞれいじってるだけ。
これって一緒にいる意味……ないっていうのかな。


──と、いきなり星の携帯が鳴った。
「悪い」
星はその場で電話に出た。

「もしもし……え? 今日だっけ?……いや、まぁちょっと今は……」
何やら電話で少し揉めているのか、「今は」のあとにチラリと私の方を見た。
ん?……もしかして何か私のせいで揉めてる?

「あ、気にしないで行っていいよ。 また今度来直そうよ」
「そう? じゃあ……あ、わかった今から行くからちょっと待ってろ」
星は注文したものも残したまま、荷物をパッと持って店の出入口から出ていった。




扉が閉まって、そこについていたベルが鳴ったその刹那──。
車の急ブレーキをかける耳を塞ぎたくなるような心地悪い音と、ぶつかる音。そして座っていたその場の振動とレジで会計をしていた店員さんの悲鳴で、ぶつかった場所がここだということを私は理解した。

思いきり車が店に突っ込んでいる。

「星……?」
車の周りに集まる人、急いで救急車を呼ぶ店員さん、私以外にもこの店にいたお客さん。
たくさんの人の中の1人の私はたった1人、車の下にいる……星の名前を呼んだ。

起きたことが頭の中で整理できず、パニック状態。





目から涙があふれて、店員さんに肩を揺さぶられて何か言われているのはわかるけれど……意識がどこかへ吸い取られいくような感覚。 瞼が重い。

.*・゚


今回の更新はちょっと展開がぱぱっとしていましたが、これにて#1は終了です。
次回から#2になりますᕕ( ᐛ )ᕗ

byてるてる522