コメディ・ライト小説(新)

Re: 僕の声は君だけに。【先生キャラの名前募集中】 ( No.89 )
日時: 2019/07/26 21:54
名前: ゆず (ID: oUAIGTv4)

真っ黒に染まる空に、一際目立つ提灯のオレンジ色の灯りが一列に並ぶ。
夏の昼間とは比べものならない程、ひんやりとした空気がざわざわと木々を揺らし、頬を撫でる。
普段はしょんぼりとしていて萎れたような神社の階段。それが今は、両脇には提灯が並び、祭りに華を咲かせる色鮮やかな浴衣や人々の笑い声により活気で溢れている。老若男女が通りを行き交い、また、すれ違う。
肩と肩が擦れても、誰も文句を言わないし、気にすることもない。
赤、青、黄、緑。
ただ、この雰囲気に呑み込まれていくだけだった。

毎年、夏の終わり目に開催される町の大行事の一つ__星弥祭り。
それも、ここ星弥神社で行われる祭りだからだ。特に伝統というわけでもなく、町に活気がないと主張した町長の宣言により開催された、第五回目の比較的新しい行事だ。

やっとの思いで登り上がって来た所は広く、色々な屋台に囲まれて、人の影で奥は見えないほどだった。
カバンからスマホを取り出し、画面が眩しく光る。
「まだ……六時か」
電源を落とし、元の場所にしまう。
ふと顔を上げた時、それに気づいた。ここに来た理由。それは、待ち合わせだった。
それに向かって歩き、それも俺に気づいた。
「よう、瀬ノ」
「よ、上島」
それは、瀬ノだった。
少しぼさついた髪に大きな瞳は純粋で、デニムのズボンに黒い文字が書かれた白シャツに薄い水色のジャンパーを小柄な身長と背に羽織り、誰もを虜にする優しい笑顔は爽やか少年だった。
カバンは背に回し、片手にはスマホが握られ、もう片方の腕には黒の腕時計が掛けられていた。
瀬ノは俺を見ると、すぐに反応し、笑いかけて来た。
「早いな。まだ約束の二十分も前だぞ」
「先に来てたお前に言われたくねぇよ」
「あ。それもそうだな」
「バカだろ?」
俺の言葉は瀬ノの耳に届き、なんとも分かりやすく怒ってくれた。本人には言えないが、滅多に本気では怒らない瀬ノの怒り方はすごく可愛いのだ。なんとも、幼稚園生のように子供らしくなる。もう一度言う、本人には言えないのだが。
瀬ノは俺よりも低身長ながらも頭を掴み、引っ張り下げて、グリグリと拳を強く押し付ける。
「バカ言うな」
ゆうに馬鹿力だと言う割には、瀬ノも十分馬鹿力だと思う。
「わ、わかったからやめろって。痛い痛い!」
逃げ出そうと暴れまわっている時だった。
「あんた達何してんのよ。こんな日に」
「うん。思う……」
「そうそう。せっかくぅ!」
俺は瀬ノと同時に声をする方へ顔を上げた。そこにはカラフルな浴衣に身を包んだ三人の少女がいた。
「可愛い女の子が三人も来て上げたってのに!」
三人の少女は同じく待ち合わせをしていた、ゆう、陽麻莉、いよりだった。
一瞬、彼女たちに見惚れてしまった。きっと瀬ノも同じだっただろう。顔がほんのり赤く染まり、目を離すことができなかった。
三人の浴衣は皆違う。
ゆうの浴衣は白がメインで、所々に赤や桃色の金魚が泳いでいて、桃色の帯。短い髪には小さな白の花がいくつも繋げられた髪飾りを付け、普段のはしゃぐ行動には似合わない可愛らしい女の子を描いていた。
いよりの浴衣は主に水色が多く、水に波が立ったような模様が描かれており、大人しく落ち着いた雰囲気がそのまま露わになっていた。何よりも、瞳の色にあっていた。
先日、瀬ノから話を全て聞いた。
確かに驚いたが、それよりもいよりが何に怯えていて、いつも不安そうにしていた理由を知れて、とても嬉しかった。
「(オッドアイ……だったか。初めて見たな)」
彼女はまだ不安なのか、それとも浴衣姿を見せるのが恥ずかしいのか、頬を染めて浴衣の袖で顔を隠していた。わからないわけがなかった。視線を瀬ノに向ける。瀬ノは誰よりも真っ直ぐにいよりを見ていた。
「何ジロジロ見てんだよ」
俺はわざとらしく、ニヤニヤとしながら言った。もちろん瀬ノは分かりやすく反応してくれて余計に顔を赤くした。
「ななななななに言ってんだよ!」
慌てて手で顔を隠す。瀬ノといよりはとてつもなくそっくりだった。
「よーし!みんな揃ったとこだし、レッツゴー!!」
「お、おー?」
ゆうを先頭に屋台の並ぶ通りを進んでいく。いよりは瀬ノと話をし、ゆうと陽麻莉は屋台を眺める。だが、俺の視線の先は一点しかなかった。
陽麻莉だ。
陽麻莉の浴衣は大人っぽい紫色に薄かったり濃かったりの紫色の華を咲かせている。闇に溶け込みながらも、見失うことなく輝いている。普段よりも少し濃い化粧をしていて、淡く桃色に光る唇。長い髪を団子にかき上げて、首筋に雪の様に白い肌が覗いている。片手にうちわを仰いでいる。
後ろから見惚れていた事に気付かれ、陽麻莉が振り返り、歯をむき出しにしてニヤリと笑う。
「何よ?私に見惚れちゃってるの?」
不意打ちの事でつい慌ててしまった。
「そ、そんなわけねぇだろ!バカ言うんじゃねぇよ」
「へぇ。ほんと?」
「あったりまえだ」
「なんだ」
陽麻莉は再び前を向いて呟く。
「嬉しかったのに」
その言葉の意味ははっきりとはわからなかった。それも、気づく前に陽麻莉はゆうといよりを側に集めたからだった。何かを企んでいるかの様に笑う彼女たち。ゆうが、せーのっと声を張り切り、三人が同時に息を吸う。
「「「私たちに奢ってー!」」ください……」
彼女たちはやってやったとばかりにドヤ顔で、いよりまでも楽しそうに笑っていた。
しかし、こちらは一気に顔の熱が冷めていた。
「お、お前ら企んでたな……」
瀬ノがなんとも言えない表情で本音を漏らした。
「やられたなぁ、これは」
バタバタと陽麻莉たちを背にして、低い体勢で瀬ノと肩を組み、二人しか聞こえない声でコソコソと話す。
「なぁ、瀬ノ……いくら持っきた?」
「この前遊びに行ったままだから……六千ちょい」
「俺もそのぐらいだ」
二人で深いため息をつき、顔を見合わせて笑った。いつもこうはしゃがれるのは困るが、そこが彼女たちの性格であり、可愛らしいところなのだろう。
「ま、奢ってやらねぇこともないぜ」
このまま、勝ち誇っている表情をされているのも悔しいため、せめてもの強気の言葉だった。

Re: 僕の声は君だけに。【No.89編集しました】 ( No.90 )
日時: 2019/07/26 21:56
名前: ゆず (ID: oUAIGTv4)

「な。言った通りだったろ」
すぐ隣に並ぶいよりに目を向ける。いよりはコクリと頷いた。その瞳は普段よりもキラキラと輝いていて、まるで犬が尻尾を振っているようだった。
「(ちょっと笑っちゃうな)」
思わず口から声が溢れてしまう。
いよりは自分の瞳の色についての反応よりも、囲まれた数多くの出店の虜になっていた。
「(まぁ、祭りなんて行ったことないって言ってたし)」
小さな歩幅のいよりに合わせているうちに、一番後ろだった上島の背が前に来ていた。いつも以上にはしゃぎまわる二人に対し、助けを求めるかのような涙目で財布を見せてくるが、とりあえず、ニコリ笑って目を逸らした。
男は女に勝てない。そう何度か父さんに言われたことがある。

「ねぇパパ、お姉ちゃんの目変だよー?」

ふと耳に入った言葉にいよりの足が止まる。
その声は同じく浴衣を着て祭りに来ていた女性グループだった。無理も無かった。いくら夜だからと言って、目立たない訳ではないのだ。彼女たちにとっても珍しいのだろう。しかし、タイミングが悪かっただけだ。
「……瀬…………ノ…くん」
微かに震えた指が、俺のシャツの端をぎゅっと掴む。不安そうに歪んだ表情が胸に突き刺さり、理由も分からず痛む。怒りがまた、込み上げる。
まただ。
これだ。
いよりの悲しむ顔を、いよりの絞り出すような声を聞くと息をすることさえも苦しくて苦しくて堪らない。
違う。
違うんだ。
こんな事俺は望んでいないと、何度も何度も誰かが心に訪ねてくる。
俺の方が余裕が無いなんて、情けないとは言えない。
やはり理由は分からない。それでも、
「大丈夫だから」
少しでも安心して欲しかった。
いよりの頭に触れた手が無性にくすぐったくて、髪に触れた指先がじんわりと温かくなるのが分かる。いよりの頭がスッと上がり、キョトンとしたように涙も止まっていた。それはまるで人形のように可愛いらしく、似合わない涙は指でそっと拭った。
「俺がいるじゃん。隣に」
大丈夫、そうもう一度繰り返し、小さな頭を軽く撫でる。
「あと、これもな」
これ、とは屋台に売られていた、頰に桜の模様が入った白狐のお面だった。
俺たちが話している間に陽麻莉が買ってきたもので、これで目を隠せるんじゃないのかと言った。正直なところ、ゆうが選んだら物らしいので不安だったが、ジロジロ背後から見られているので渡すしかなかった。
「要らないなら、俺が貰__」
言葉が止まる。
いよりの青色の目に溜まる涙が、提灯の灯りに反射して光る。真っ直ぐに向けられた目に縛られて、俺の視線は固まった。
いよりは嬉しそうににっこりと笑い、呟くそうな小さな声で言った。

「ありがとう」

まだ手に掴んだままのお面を、いよりの顔にぐっと押し、視界を隠す。
「せ、瀬ノくん!?どうしたんですか」
さすがのいよりも急な事に驚き、声をあげる。バタバタとした手でお面を剥がそうとするが、負けてたまるかと離れないように力を込める。「あうっ、うう……」と騒ぐ声など全く聞こえなかった。

焦っているのは俺の方だ。
「(なんだよ急に……)」
紅く染まる顔をとっさに腕で隠す。

ただ、今のいよりが、可愛すぎて仕方ない。
前にも同じ様な事があった。でも、今はそれ以上に、顔が熱くなり、はち切れそうなほど高鳴っている心臓の音が誰かに聞こえそうで、必死と抑えるのに忙しかった。

*******
この間、受験生として頑張っていた自分はついに!推薦をとりましたーー!!
頑張りましたーー!!やっと小説が書けるーー!!時間がつくれる、てすけど。

Re: 僕の声は君だけに。【No.90編集しました】 ( No.91 )
日時: 2019/07/26 22:00
名前: ゆず (ID: oUAIGTv4)

俺たちは普段通り、星弥祭りを全力で楽しんでいた。
小さな町とは言え、そのお祭りは勢力をあげるように広い範囲で祭りが行われ、提灯などの飾りや数多くの屋台が出されていた。
チョコバナナのジャンケンに負けたゆうはその場で叫び崩れ、
くじ引きでは上島はハズレを引いて、ゲーム機を当てた陽麻莉にこれでもかと言うほどからかわれていた。
もちもちポテトは揚げたての熱々でいよりは口を火傷しかけ、
ちょうどゆうが持っていたイチゴ味のかき氷に助けを求め、ゆうは楽しそうに分け与えた。
俺たちも、戦隊者ののお面をそれぞれ色違いを着けて、四人でポーズをとり、
通りすがる人全員に笑われたが、いよりがお腹を抱えて笑いをこらえていたので大成功だ。
輪投げで俺は全くかすりもせず、屋台のおじさんに苦笑いされてガムを一つ貰えたのたが、
上島といよりの間には火花が散り、ゲームで鍛えられた百発百中のかなりの腕前におじさんはストップをかけた。


「花火が無いってとこは、かなり残念だよねぇ」
「何言ってんだ、陽麻莉。こんな小さい町で出来るかっての」
「その通りだな。でも、いよりは花火見たことある?」
「一応……外国です、けど……」
「そうなの!?だめだよぉ〜日本とは大違いなんだから」
全然違うよ、そう言いながら身振り手振りを付けてゆうが喋りだす。
俺たちは出店の出ている道を外れ、神社の側の石階段に座り込んでいた。そこには提灯の灯りが通っておらず、薄暗い場所だった。
全然違うよ、そう言いながら立ち上がって階段を登り、身振り手振りをつけて喋りだす。余計灯りから離れたせいで、表情は見えなかったが、花火の日本と外国の違いとやらをスラスラと話す、ゆうはきっとドヤ顔だ。
女子三人は片手にわたあめを持ち、もう片方にはりんご飴を持っている。それに対して男子の俺らは荷物が軽くなったように、ふと財布の中を覗くと五百円玉がたった一枚転がっていた。
散々遊んだ結果だ。しかし、俺にとっては初めてだと言ういよりが今も楽しそうに笑ってくれている事が何より嬉しかった。

Re: 僕の声は君だけに。 ( No.94 )
日時: 2019/07/26 22:03
名前: ゆず (ID: oUAIGTv4)

7月24日より。作者、ゆず。題名『僕の声は君だけに。』再開。

Re: 僕の声は君だけに。 ( No.95 )
日時: 2019/08/04 23:04
名前: ゆず (ID: oUAIGTv4)

「(あと……十分ってとこか)」

出店から漏れ出る電気に腕時計を当てて、打ち上げ花火までの時間を確認する。
星弥神社、ちょうど出店が出るこの辺りには木も生えておらず、真っ直ぐ上を向けば、満天の星々が見られるほどに花火を眺めるには絶好の場所だった。
このままここにいれば、無理に移動する必要もない。きっと、おれ達とは違って慣れない浴衣を着飾っているいよりたちは疲れているだろう。ゆうも今は笑顔で振舞ってはいるものの、最初に比べれば歩くペースが減っているのは間違いなかった。この辺で出店街を抜けて、いよりが持ってきてくれたと言うシートをひいて見るのも悪くない。
「そろそろ花火始まるみたいだし、あっちに……って、いより?」
ひょこひょことおれの裾を引いていたのは、いよりだ。目線の先には何やら賑わっている一つの出店。ガチャ。ポンッ。人々の歓声の合間から聞こえてくる音はたしかに聞き覚えがあるものだった。
「射的、かな?」
再びいよりへと視線を向けると、これもまた見覚えがある、というよりかは毎日のように見たくもないのに見せられている表情をしていた。口角がどんよりと下がり、眉は内へとより、口はぎゅっと縛ったかのように丸くなって、頬も膨らんでいる。何というか、うんざり、といったような表情だった。


「いらっしゃぁ〜い!」


群れる人々の中から、嫌にはっきりとした女の人の声が周囲に響く。
「ねぇ、そこのお兄ちゃん。射的していかな〜い?」
大人びているのに、嫌でも耳の奥に残る、駄々をこねる猫のような甘い声。母音が余韻に浸る喋り方。か弱いふりして、こちらを挑発してくるような物言い。
「もちろぉん。私を撃ってくれてもいいんだけどぉ?」
人と人の隙間からひときわ目立つ姿。
毎日入念に手入れされたかのように、真っ直ぐに垂れ下がる黒髪。大人っぽさを引き立たせる古風な花柄の紫の浴衣。ほんの少し開いた桃色に染まる唇。腰の帯と、髪に咲き誇る無垢で真っ白な花。
この聞き覚えのある声。間違いない。あの時、いよりの電話の相手の……!
「おやぁ?これはこれは、今会うにはもったいないお客さんが、ね」
期待していたような、嬉しそうな、でもどこかいたずらのようにニヤリと笑い__



目線が合った。


Re: 僕の声は君だけに。 ( No.96 )
日時: 2019/08/04 23:27
名前: ゆず (ID: oUAIGTv4)


「うふふっ......」と口元を手で覆い上品に笑いながらも、すでに捉えたかのように決してブレない視線がこちらに向いている。やばいな。正直一体何がやばいのかは理解できないが、この目つきを、味見をするかのようにじっくりと全てを覗く視線を、おれは知っている。たが、今はまだいい方だ。知っている、という方がよっぽどタチが悪い。狙っているわけでもないのに、ふと気を許すとさっと懐に入ってきて離さないと言わんばかりに手を真っ赤にさせて掴んでくる。決して強い力でもないというのにぎゅっと瞑る目に涙が溢れていて、この手を離してしまったらと不安になると一気に手の力が抜けてしまう。それに気づいた君は、おれの気も知らずに、視線が合った途端無邪気に笑う。
そう君__いよりは。

もそっと動いて服を引っ張るいよりが変わらない目つきのまま、おれ達に向けてではなく、視線の主、悪気もなく射的台に乗る女性に向かって言った。
「......ここで何してるの、おば......まな姉さん......」

Re: 僕の声は君だけに。 ( No.97 )
日時: 2019/08/09 23:05
名前: ゆず (ID: oUAIGTv4)


「ん?いより、あの人知ってんの?」
おれ達に買わせた練乳たっぷりのいちご味のかき氷を満足そうに頬張りながら、いよりの身体にトンっと軽くぶつかる。斜め後ろの完全なる死角からきた振動に驚きながらも、お母さんに声をかけられた幼い子どものように優しく微笑みで一目陽茉莉をチラ見した後、同じくおれ達が買ったレモン味のかき氷を目の前に掲げる。そんなことしたらあの人が見えないのでは、とツッコミたいところだが、意図的な気もしたので、やめておこう。
「私が住んでる……家の家主……宇佐野うさのまなみ…………めんどい」
最後に聞こえてしまった言葉と宇佐野さんという名の女性にウインクをされて恥じらいながら赤面する上島がゆうと陽茉莉の二人に腰と頭に拳を入れられ砕け落ちる姿に苦笑いする。
「え!?ちょっ……ま…………」
隣にいた適当な若者に持っていた銃を押し付けて射的台を飛び降り、真っ直ぐこちらに歩いてくる。それも、いよりでは無く確実におれの方に来ている。素性もはっきりしていない、しかも「めんどい」宣言をされている女性にいきなり近づかれ、反射的に後ろに下がる。
「うわっ……な、なんですか?」
避けていることを察知したかのように一気に距離を詰めてくる。伸ばされた手を避けようとして背後にいた上島にぶつかり、最悪にもガッチリと肩を掴まれて確かめるかのように、かなりの近距離でまじまじとおれの顔を見られる。
何が何だかわからないまま、眉間にシワを寄せながら鋭い目がおれの目線から外さないのが気まずくて、不覚にもおれが先に目線を外した。それを見逃してくれなかった彼女はニヤリと笑ったのが外した瞬間、横目で見えた。
「……っい、痛」
頬を膨らませて唇をぎゅっと絞っているいよりがおれの左腕を思わず声を上げてしまうほどの力で掴み、敵意むき出しで宇佐野さんを睨みつける。
しかし、いよりの存在なんて御構い無しにおれを力任せに射的台の前まで引っ張る。

「よし、坊や。射的をしないかい?」

Re: 僕の声は君だけに。 ( No.98 )
日時: 2022/04/24 18:54
名前: ゆず (ID: KRYGERxe)


「よし、坊や。射的は得意かい」