コメディ・ライト小説(新)
- Re: I R O I R I ( No.1 )
- 日時: 2018/06/14 23:24
- 名前: 蕪木 華音 ◆Y8AV9JBKn. (ID: jBbC/kU.)
<私は青春してるんですか?>
新しい制服。
新しい革靴。
新しい進学路。
今日から私は、高校生になります!
「制服良し!」
「髪型良し!」
「じゃあ、行ってきます!」
そうお母さんに言ってから玄関を飛び出す。
外は良い天気。桜も咲いてるし、何より暖かくて気持ち良い!
私__仁藤 美羽は高校の最寄り駅まで歩きながらそんな事を考えていた。
友達出来るかなぁ…。
…そもそも、自己紹介で噛まない自信があるのか?!
私、絶対噛む!
と言うより、自己紹介では何を喋れば良いのか…。
「ムムムム…」
私は手をあごに当てて「なんかちょっとかっこ良く見える、考える人のポーズ」をしながら悩んでいた。
その時背中を押されて、
「おっはよ!美羽〜!」
「ぅわああああ!」
私の友達、__長谷川 舞季が顔を覗かせた。
びびったー!
今びびらせてきた舞季は私の小学生からの友達。
私より背が高くて、明るい髪をポニーテールにしてる。
運動が得意だけど、勉強が苦手な舞季と運動出来ないけど、勉強が得意な私。対称的な私達だけどすっごく仲良いんだ!
舞季と私は同じ高校に入れて、同んなじクラスになれたらなぁ、なんて思ったり。
「高校生だねぇ」
あまりにもおばあさんみたいに舞季が言うから思わず吹き出してしまった。
「笑うなよ!本当に高校生になったんだなぁって思っただけなんだから!」
恥ずかしそうに言い返す舞季。
「はいはい」
私がそう言うと「『はい』は一回まで!」と舞季が言う。
「でもさ、高校生って青春してそうだよな」
「そうだね」
「青春したいー」
「たしかにー!」
そう言うと、舞季がニヤニヤしながら私を見てきた。
「なに?」
私が聞くと、舞季はさらにニヤニヤしながら、
「いや…彼氏持ちのリア充が青春したいなんて言うのか〜って」
と言った。
それを聞いて私の顔が赤くなっていくのがわかった。
そう、私には彼氏がいます!
サッカー部に入っている、私の彼氏__佐田 智君は、私と同じ高校で同い年。
中学2生の時に私から告白して現在、智君と付き合ってます!
「彼氏がいるとかウラヤマシー」
「棒読みになってるぞよ、舞季さん」
舞季は彼氏がいない…舞季は背が高いし、口調もこんなんだから彼氏が出来ない…。
本人的には、彼氏はそこまで欲しい訳じゃあ無いらしいけど。
「まぁ彼氏は青春の一環として欲しいだけだから」
これが舞季の言い分。
凄く、舞季らしい言い分。
「高校着きましたー!」
「テンション高い、美羽」
舞季にそんな事言われたって気にしない。
だって憧れの高校生になれるんだもん!
校門をくぐると先輩達がクラス分け表を配っていた。
沢山の人がいたから取りに行きにくかったけど、なんとか頑張って1枚貰った。
「さあ!同じクラスになれるのでしょうか?!」
テンションが私以上に上がってる舞季がそう言う。
そのクラス分け表を舞季と私で覗きこみ、自分の名前を探す。
舞季と同じクラスになれますように!
智君と同じクラスになれますように!
私のクラスは…、
「「B組だ!」」
舞季と声が重なった。
二人ともB組つまり、
「同じクラスだ!」
私がそう言うと舞季は「よろしくお願いいたします」と丁寧な口調で返した。
その改まった言い方が可笑しくて、二人で笑いあう。
こういう時間が一番楽しい。
二人で笑いあって、二人で泣きあって…。
舞季といると自然と楽しくなる。
こういうのも青春なのかなぁ。
「あっ、美羽!彼氏君とも同じクラスじゃん!」
「え?!」
もう一度、クラス分け表を見てみる。
たしかに…智君も同じ…B組だっ!
「おおおおお!良かったね!美羽!」
「っ…嬉しい!」
私がそう言うと舞季は「良かったな〜!」と言ってくれた。
「うん!あ…」
元気に言った舞季に返事をした私は偶然、友達と楽しそうに会話してる智君が目に入った。
…こっちに気づかないかな…
そんな私の視線を感じてなのか、智君がこっちを見つけた。
「…/////」
視線が合って少し…恥ずかしい…。
恥ずかしがっている私に比べて、智君は私と視線が合っても…何て言うか…無理やり口角を上げた様な不自然な笑顔を見た。
…何かあったのかな…?
「美羽〜、彼氏君と仲良くするのはいいけど、そろそろクラスに行きますよ〜」
舞季に言われちゃった。
「あっ、はーい」
校舎の中に入る前に智君に手を振ったけど、智君は友達と楽しそうに会話していてこちらに気づかなかった。
教室に入ると沢山の人がいた。
皆、新しい友達を作る為に色んな会話をしている。
私、友達作れるのかなぁ…
不安になった私だったが、
「ちょっと良い?」
前から二人の女子が話し掛けてくれた。
「うん、大丈夫だよ」
私が言うと、二人の女子は笑顔で自己紹介をしてくれる。
「私の名前は、立川 萌だよ!よろしくね!」
「私は鈴木 未波。よろしく」
萌ちゃんは髪をボブにしている子で、すっごく明るい!
未波ちゃんは背が高くて、髪は舞季と同じポニーテール。かっこいい系の女子。
「あたしは、長谷川 舞季。よろしくね」
「私の名前は仁藤 美羽。よろしく」
よし!この文だけでも、噛まずに言えた!
私の自己紹介が終わり、適当に色んな事を話してた。
どこ中〜?とか得意科目は〜?とか。
最後に出た話題。
萌ちゃんがこう言った。
「彼氏いる〜?」
私はいる。けど言っても大丈夫かな…?
「あっ、ちなみに私はいるよ〜」
萌ちゃん、可愛いから彼氏はいるだろうな〜とは思ってたけど、ここまではっきり言うか…。
「私もいない。と言うより、彼氏は特にいらない」
「分かるわー。本当それな」
未波ちゃんと舞季はあっさりと彼氏いない宣言をした。
三人が言い終わった、つまり私の番か…。
「私は彼氏…いるよ」
私が言った時の反応。
舞季はさっきと同じ様にニヤニヤしてる。
未波ちゃんは「そうなんだ」と結構あっさりしていた。
萌ちゃんは…一瞬だけ笑った気がした。笑ったと言っても良い笑い方じゃなくて、凄く嫌な笑い方。
なんだろう…?
「ねぇ、美羽ちゃんの彼氏ってさ__(キーンコーンカーンコーン)」
萌ちゃんが何かを言ったけど、途中でチャイムが鳴った。
「なに?」そう聞こうと思ったけど、萌ちゃんも未波ちゃんも自分の席に行って着席してしまった。
「あたし達も席に座りますか」
舞季に言われて私は自分の席に座る。
…さっき萌ちゃんは何を言いかけたんだろう…。
そこが謎。
クラスの中を見渡す。
面白そうな人。暗そうな人。一人でいる人。そして私の彼氏の智君…。
智君と目が合う。
心臓が高鳴って、恥ずかしいなぁ…。
「えーと、今週から部活体験が始まります。体験したい部活をこのプリントに書いて、顧問の先生に渡して下さい」
始めましての担任の先生がそう言う。
部活体験か…。やっぱり私は美術部かな。運動苦手だし。
舞季はバスケ部って言ってたし、智君はサッカー部かな。
萌ちゃんと未波ちゃんはどうするんだろう。
休憩時間、未波ちゃんと萌ちゃんに何部に入りたいか聞いてみた。
「私はバスケ部」
未波ちゃんは舞季と同じ。
未波ちゃんも舞季も背高いからなぁ…。
「私はサッカー部のマネージャーやりたいんだ!」
萌ちゃんはサッカー部。しかもマネージャー。
「萌ちゃん運動出来そうなのにマネージャーでいいの?」
私が萌ちゃんにこう聞いたら、
「彼氏にサッカー部のマネージャーやってくれ、って言われちゃったから」
照れくさそうにそう言う。
いいなぁ…。
智君は私に「マネージャーやってくれ」、って言ってくれなかったし…。
羨ましい。
この高校は文化部が少なくて美術部か吹奏楽部しかない。
吹奏楽部も大変そうだし、一番いいのは美術部かなって思う。
だから私は早速、美術部に本入部しました!
美術部の先輩は三年生が3人と二年生が2人。
さすがにもう本入部している一年生はいないと思ってたけど、一人いた。
村田 修一君。私と同んなじクラスで、クラスの中でも一人でいる事が多い人。
顔はかなりかっこいい方だけど、性格が好まれないらしい。
「えっと、始めまして…」
「………始めまして」
私から話かけないと多分何も喋らないんじゃ無かったのかな。
それ位、喋る気がなさそうな返事だった。
梅雨、雨が降ってる日。
私は美術部で絵を書いていた。
美術部は結局、私と修一君以外の一年生は入って来なかった。
それで現在、活動中なんだけど…、雨だと気分が落ち込むし、逆に暑くなるし…。
おまけに隣で絵を書いている修一君は何にも話さないし…。
つまらないなぁ…。
私は何気無く、サッカー部が体育館で練習している所を眺めた。
智君…頑張ってるかなぁ。
萌ちゃんはいいなぁ。
智君の近くにいれて。
サッカー部の人が体育館で水を飲んで休憩している時、体育館に繋がっている渡り廊下では、萌ちゃんがサッカーボールを運んでた。
大丈夫かな…。
そこに智君が来て萌ちゃんが持ってたサッカーボールを一緒に運ぼうと声をかけた。
智君は優しいなぁ。
智君が萌ちゃんの所に着くと、智君は萌ちゃんに何か言い、萌ちゃんは恥ずかしそうに笑った。
そのあと萌ちゃんは智君の頬に…キスを…した。
…………え?
なんで?
なんで萌ちゃんが智君にキスしてるの?
だって萌ちゃんには彼氏がいる筈でしよ?
それに智君は私の彼氏だよ?!
なんで?!
「………なんで?」
そう私は呟いた。
胸が締め付けられる様な感覚。
この感覚は何?
分からない…でも真実を確かめないと…萌ちゃんと智君はなんの関係なの?
そう思うより速く私は美術部を飛び出し、萌ちゃんと智君がいた渡り廊下へ走ってた。
なんで…なんで…。
「どうして…?」
そんな思いを抱えて走ってたら渡り廊下に来た。
そこにいるのは智君と…萌ちゃん。
「…なんで?なんで智君と萌ちゃんが一緒にいるの…?」
萌ちゃんがこちらに気付き、智君も私を見た。
「なんでって、私達付き合ってるもん」
「は?」
思わず、そうな声が出た。
いやいや、おかしいでしょ。
「萌ちゃんには彼氏がいるんじゃ無かったの?」
私がそう言うと萌ちゃんはため息をつき、
「気づかないの?智が私の彼氏だよ」
意味が分からない。
「智君は私の彼氏じゃないの?」
これは智君へ聞いた。
そうだ、って言って欲しかった。
けど、智君は
「俺は萌の彼氏だ」
そう言って首を横に振った。
なんで?
なんでなんだよ!
萌ちゃんと智君がいる所から私は走った。
ただ嘘だって、夢だって思いたかった。
湿気ってる廊下を走って、走って、転んで…これが夢じゃないって痣を作った身体が教えてくれた。
一心不乱に走って、辿り着いたのは美術部室。
部室では、修一君が先輩に話していた。かなり緊迫した感じで話している。
でも、この時の私には何にも見れなくて、ただ心の中で何かが消えてしまった、と言う虚無感があった。
ガラリと扉を開けて部室に入ると、先輩達は話すのをやめて私の方を見た。
「………何があったんだ………?」
珍しく修一君から話掛けてくれて、修一君の声を聞いたその時………、
その声が合図だったかの様に、私の目から涙が溢れた。
「………っ!………ヒックっ………」
本当に智君が好きだったんだ。
中学生二年生の時にサッカー部で活躍する智君に恋をした。
一方的な感情だったけど私から告白して、智君が「いいよ」って言ってくれて、嬉しかった。
それから、一緒に映画を見に行ったり遊園地に行ったり…沢山、デートをした。
三年生になってからは、受験勉強で忙しくてなかなか話せなくて寂しかった。
けど、智君が好きだったんだ。
悲しい。
智君が他の人に取られちゃうとこんなに苦しいの?
私はどうしたらいいの?
「大丈夫か………?」
こんな私にも修一君は声を掛けてくれる。
でも、私はただ泣くことしか出来なくて…。
キーンコーンカーンコーン
部活終了のチャイムが鳴り、私達帰らなければいけない。
その時に部活の男子の先輩が修一君に何かを言って、私のリュックを取ってくれた。
帰りな、みたいな事に伝えたかったらしい。
涙でグシャグシャになった顔を制服の袖で拭いながら私は美術部室を後にした。
帰り道。
この前までは舞季と一緒に帰っていたけど、舞季も部活があって一緒には帰れない。
独りぼっちか…なんて思って横を見ると…修一君がいた。
「なんで…?」
さっきまで泣いていたから、声がかすれていたが、しっかり聞こえていたのだろう。修一君は、
「先輩に言われたから」
と言った。
さっき男子の先輩が修一君に話したのはこの事だったんだ。
「それと、仁藤が心配だったから」
なんで私はこんなにも人に心配を掛けてしまうのだろう。
舞季や修一君にもいらない不安を掛けてしまって。
本当に申し訳ない。
修一君の方を見ると、頬を赤く染めていた。
「…どうしたの?」
すると修一君は恥ずかしそうにして、
「いや…、先輩に言われただったら仁藤の後を追いかけないのに…。俺は仁藤の事が大切なのかな…って思ったから」
今度は、私の頬が熱くなった。
なんでそんな事…言えるの…?
恥ずかしいじゃん……。
「とっ、とにかく、さっきは何があったんだ?」
修一君が聞く。
泣いた理由か…話したくないけど…修一君なら。
「さっき、何気無く渡り廊下を見ていたら私の彼氏が、私の友達と…キスをしていたから…。彼氏の所に走って行ったら、まぁ、要するにフラれちゃって…」
話したら修一君はそうなんだ、と頷いて、
「……ドンマイ」
と言ってくれた。
普段なら、「もっといい台詞言えよ!」みたいに思うかもしれないけど、誰かにそう言って貰えるとやっぱり心の支えになる。
「じゃあ、今日はこの辺で」
この道を歩いている時も、修一君とあまり話さなかった。
けど、少しの会話だけでも修一君は凄く優しくて……格好良い人なんだ。
「うん、じゃあね」
そう私がそう言って笑うと、修一君も笑う。
今まで見たことの無い笑顔にちょっとドキっと来た。
………ずるいよ…/////。
7月になった。
梅雨が終わり、気温が高くて汗が邪魔になる。
修一君とは同じクラスだったけど、教室で話す事は無く、いつも部室で話していた。
梅雨の事はもう思い出したくない。
あの日から萌ちゃんとは話して無いし、智君とは目も合わせてない。
舞季と未波ちゃんには何があったのかを話した。
舞季は「そっか…」と言っていたが、未波ちゃんは特に何にも言わなかった。
未波ちゃんと萌ちゃんは同んなじ中学校だからかな。
でも、未波ちゃんは萌ちゃんの話題を振って来る事は無いから助かる。
他愛の無い言葉。
これだけでも楽しい。
普段と変わらない一週間。
でも今日は違った。
「なぁ、美羽」
智君が話しかけてきたんだ。
「なに?佐田 智君?」
舞季が、私より速く聞いた。
智君はなんでフルネームなんだよ、と呟いてから、
「なんだよ。俺は美羽に話してんだ。邪魔すんな」
と言って私の方に近づく。
「………なに?」
私は智君に聞いた。
梅雨にあった事を思い出すと、智君とは目も合わせたく無かった。
萌ちゃんと仲良くしてなよ。
キスする位好きなんでしょ?
私に近寄らないでよ!
「美羽。俺さ、美羽をフったこと後悔してるんだ」
嫌だ。聞きたく無い。
「だから、美羽に謝りたくて」
謝ん無くていいから!
もう、ここにいないで!
私は耳を塞いだ。
何も聞きたく無い。
その時……本を読んでいた修一君が立ち上がって智君の前に立った。
「俺になんの様だよ」
智君は修一君にそう言い、睨みつけた。
修一君は臆する事なく智君に一言、
「お前、最低だな」
と言い私の腕を取った。
修一君に腕を引っ張られて、私は立ち上がる。
智君は一瞬、何を言われているのか分からないといった感じだったが、意味が分かるとかぁっ、っと顔が赤くなり修一君の襟元をガッと掴んだ。
「どういう事だよ。お前はなんで知ってんだよ!」
修一君は唖然と、
「全部、仁藤から聞いた。お前が何をやったのかも。仁藤がどれだけ悲しんだかも知らずに、お前は新しい彼女と仲良くしてたんだろ」
と言い、智君の腕を振り払い、私の腕を引っ張った。
……修一君?
修一君に腕を引かれて私達は教室を出た。
廊下。
「どうしてそんなに怒ってるの?」
私はそう聞いた。
すると修一君は
「仁藤はさ、あんな事言われていいの?フラった奴が付き合おう、って言ってたんだよ。もっと怒りを出してよ」
と、言った。
もうとっくに智君に怒りを覚えている。
でも、それを伝えられる様な勇気を私は持っていない。
「ごめん……」
私がそう言うと、修一君は、
「仁藤が悪いわけじゃ無いから。謝んないで。こっちも悪かった」
そう言い、謝った。
教室では舞季が智君に何か言っていた。
その教室を呆然と見ていたら気づいた。
………萌ちゃんがいない?
なんでだろう。
萌ちゃんはいっつも智君にくっついていたのに。
萌ちゃんがどこに行ったのか。それは、廊下の隅を見た時に分かった。
「……っ!……ヒック……!」
赤い目を擦りながら、しゃくりを上げている萌ちゃん。
「……どうしたの」
私がそう聞くと萌ちゃんは顔を上げて、こう言った。
「ごめんなさい……美羽ちゃん……智君を取ったりして……。
私、智君にフラれたの……やっぱり美羽の方が良いって……。
ごめんなさい………」
萌ちゃんが何を言ったのかは伝わった。
萌ちゃんも智君にフラれたんだ。
だからこそ智君が苛つく。
「萌ちゃん。私、誰が一番悪かったのか分かったよ」
そう私が言うと、萌ちゃんは顔を下げた。
萌ちゃんが一番悪かった、と言うと思ったのだろう。
けど、違う。
「一番悪かったのは__私だよ。
だって、智君と一方的な感情で付き合って、フラれて泣いてさ。
萌ちゃんもそれで悲しんだし、修一君にも__迷惑かけちゃった。
ごめんね、萌ちゃん、修一君」
私はそう言い、萌ちゃんと修一君に頭を下げた。
萌ちゃんは申し訳なさそうな顔をしていた。修一君は前髪が顔にかかってるせいで表情が分からなかった。
その時___舞季と言いあっていた智君が廊下に来て、私に
「美羽〜!」
と言い、抱きつこうとする。
……嫌だ!
私は目を固く瞑り、智君のホールドを拒んだ。
でもこれだけじゃ、智君は抱きつこうとする。
どうしよう……。
…………あれ?
数秒経っても抱きつかれた感覚は無い。
そっと目を開けてみると修一君が智君の腕を掴み、捻っている。
智君は痛みで顔が歪んでいた。
修一君はかなり怖い顔をしている。
「仁藤が一番、悪いわけないだろ!
一番悪いのは智と____俺だよ!」
修一君がそう言い切った。
……なんで?なんで修一君が悪いの?
「俺は仁藤を助けれなかった!先輩達がいなきゃ、仁藤の事はどうすればいいか分からなかった!だから俺も一番悪い奴だ!」
でも…でも!
「修一君は私の事、支えてくれたよ!」
精一杯、声を出した。
それほど修一君には感謝を伝えたかった。
修一君は、ビックリしたみたいで智君の腕を離してしまった。
けど智君は私に何もしなかった。
修一君を睨みつけてから、教室に戻る智君。
そんな智君に目もくれず修一君は目を見開いたまま私に、
「……さっきの……本当か…?」
と言った。
さっきの、とは修一君が私の事を支えてくれた、と言った事。
「……本当だよ」
そう私が言うと修一君は顔を下にして、小さい声で、
「……ありがとう」
と言った。
「……こちらこそ、今日だけじゃなくて毎日沢山、助けてくれてありがとう」
恥ずかしかったけど、それほど修一君には感謝の気持ちがあった。
次の日。
朝練があった舞季に置いていかれた私は、一人教室に入った。
教室の中の私の机の前には、萌ちゃんがいて、
「どうしたの?」
萌ちゃんに声を掛けると、萌ちゃんは振り向き、私に、
「これ。昨日はありがとう」
と言った。
渡されたのはぺアルックのキーホルダー。
「修一君とお幸せにぃ〜!」
え?え?!
「どゆこと?!」
私は萌ちゃんに、聞いた。
「ふふふふ。修一君に聞いてみなよ!そのぺアルックをあげてね!じゃ!」
え?!
萌ちゃんはそう言うとトイレに行っちゃったし…。
丁度良い時に修一君が来た。
私は修一君にあいさつをした後、
「えっと……これ、あげる」
萌ちゃんからもらったペアルックの一つを渡す。
「萌ちゃんから。お幸せに、だって」
修一君は私のその言葉を聞いたら、耳まで顔を真っ赤にして、自分のカバンにペアルックを付けた。
「仁藤」
私も修一君と同じ様にカバンにペアルックを付けてる時に修一君が私に聞く。
「なに?」
同んなじキーホルダーを付けるとカップルみたいだなぁ、と思いながら私は聞いた。
「俺、仁藤……じゃ無くて、美羽の事が_________好きになってしまいました!」
そうなんだ____って……え?!
告白ですか?!
「なっ、何、急に!」
「あの梅雨の日から美羽の事を見るとドキドキして……。でも、昨日やっと分かったんだ。俺は美羽の事が好きなんだな……って」
私の顔は真っ赤。
それ以上に修一君も真っ赤だった。
「おはよー、ってあれ?美羽と修一君?どうしたの?」
部活の朝練が終わり、教室に入ってきた舞季が聞いてきた。
それどころじゃなくて!
その日から私達は付き合い始めた。
秋になった。
舞季と未波ちゃんはバスケ部の県代表になったけど、強豪校と戦って負けて、全国大会初戦敗退。
萌ちゃんはサッカー部のマネージャーを辞めて、チア部に入った。
野球部に格好良い先輩がいるから、甲子園まで応援するんだって。萌ちゃんらしいや。
智君は…サッカー部もサボる様になって……。今、彼女募集中らしいけど、いい進展はなさそう……。
皆、青春してんなぁ。
私達?
そりゃ、変わった事は……あるけど。
まず、修一君が私のことを『美羽』って呼ぶ様になった。
次に、修一君の書いた絵が県の展覧会に選ばれた。
………それ位かな。
まだデートも勉強が難しくて、出来ていない。
寂しいなぁ。
でも、今日修一君にあったら言うんだ。
「今からでも青春して良いですか?」
って。
デートして、笑いあって、支えあって。
お互いの事を大切にしていくんだ!
END