コメディ・ライト小説(新)
- Re: 君に捧げた初恋(処女作) ( No.4 )
- 日時: 2018/08/14 21:51
- 名前: 華憐 (ID: 4J23F72m)
翌週のゼミの授業は、ゼミ内の役割決めと、
次から始まるプレゼンテーションの割り振りからスタートした。
絶対にゼミ長になる、と、宣言していた有紗は、
その思惑通り、見事このゼミ開講以来、初の女性ゼミ長となった。
「ね、副ゼミ長やってくれない?」
ゼミのメンバーの名簿にふりがなをつけながら、
有紗は私にそう言った。
「わたし?いいけど…」
「ほんと?ありがと!頑張ろーね!」
有紗は、はじけた笑顔で、
「せんせーい、副ゼミ長決まりましたー!」
と教壇にかけていった。
ゼミ長や副ゼミ長と言っても、
せいぜい連絡事項をメールで流すくらいしか仕事がないのは、
有紗も私も知っていた。
とりあえずの、肩書き作り、といったところだろうか。
もっとも、有紗は私と違って、かなり張り切っていたのだが。
「はい、じゃあ次はプレゼンの割り振りしまーす。
私は最後でいいから、とりあえずみんな希望のところに名前書いてー!」
さっそく教壇で、せっせとしきり始める有紗の声に、みんながのそのそと動く。
2回目の顔合わせだが、お互いほとんど会話を交わすことはなかった。
私は黒板にプリントの文字を写しながら、また小さくため息をついた。
揉め事がめんどくさいのか、割り振りは誰ひとり被ることなく上手くいった。
有紗が順番に名前を読み上げる。
「・・・・・6番は、吉野くんと川合さん。」
唯一の男女ペアだった。
教室の隅で、大人しそうな女の子が、呼ばれた名前に、静かに頷く。
反対側の端に座る吉野くんも、同じように首を振った。
「7番は、森くんと西桶くんで…」
有紗は続けて名前を読み上げた。
私はその目がさっきから、端の2人に向けられていることに、気づいていた。
*
授業終わり、案の定、有紗は吉野くん達の元へ行った。
半ば強引に引っ張られるようにして、私もその輪に入った。
「ちょっとちょっとー、いきなりカップル登場の予感ー?」
「そんなんじゃねーよ」
有紗の言葉に、手を振る吉野くん。
その雰囲気からすると、前回の飲み会で、かなり親交を深めたらしい。
「そういえば、この間、初音ちゃん来なかったよね?どしたの?」
吉野くんが急に私に向き直って言った。
「あ、ごめん、バイトだったんだよね」
「そっかー。超盛り上がったのに、な?」
吉野くんは、有紗に同意を求めるように言うと
「そうだ、グループLINE、ゼミの。副ゼミ長なら入らないと」
と、携帯の画面を差し出した。
「ID入れてよ」
携帯を受け取りながら、ちらっと有紗を見ると、
この場の主役を取られたのが気に入らないのか、
心なしか、膨れているように見えた。
「有紗、また飲み会企画してよ、ね?」
気を使って話を振ると、
「そうだ!っていうか、もういっそこの4人でご飯行こう!」
と、有紗は明るく返した。
どうやら有紗は、川合さんも仲間うちに入れたいらしい。
「美乃里ちゃん?だよね!」
「うん!有紗ちゃんに、初音ちゃんだよね、よろしく!」
声をかけられた美乃里は、ぱっと笑顔になって、そう言った。
さっき、大人しげに首を振っていた雰囲気とは、少し違う気がした。
「じゃ、来週のゼミ終わりはご飯!ってことで!おつかれ!」
有紗の一声で、あっさり解散した。
私は、有紗が吉野くんの元に、何か言いに行くのを横目に、そっと教室を出た。
iPhoneの画面には、彼からグループLINEの招待がきたことを示す
通知が明るく浮かんでいた。