コメディ・ライト小説(新)
- Re: 君に捧げた初恋(処女作) ( No.10 )
- 日時: 2018/08/26 12:02
- 名前: 華憐 (ID: lj7RA5AI)
「聞くってどうやってよ…」
誰もいない帰り道で、小さく呟いた。
iPhoneの画面には、吉野くんのLINEのトーク画面が映し出されていた。
簡単な業務連絡程度の会話しか交わしていない履歴を、
ぼーっと見つめながら、指は止まったままだった。
てっきり、有紗は彼のことが好きなんだと思っていた。
いや、本当は好きなのを、照れ隠しで、あんな風に言ったのだろうか。
"付き合ってもいい"
有紗の言葉を反芻する。
あの時-みんなでお酒を交わした時、有紗は確かに言ったのだ。
吉野くんと美乃里を応援すると。
でも、もしも自分にチャンスが巡ってきたら…?
付き合ってもいい。
…のか。
iPhoneをポケットにしまう。
めんどくさいな、と思わず声が漏れた。
このことを茉結に話したら、面白がるだろうか。
冴えないゼミの割に盛り上がってんじゃーん!
と笑ってくれるだろうか。
しかし、今は茉結に事の一部始終を話す気にすらなれなかった。
私はポケットに手を伸ばし、
イヤホンから流れる音楽のボリュームを少し上げた。
*
目を開くと、横に置かれた時計が、まもなく日付が変わるのを示していた。
帰ってきて、直行でベッドに飛び込んだまま、
いつのまにか眠ってしまったらしい。
うつ伏せになったまま、枕元のiPhoneに手を伸ばす。
[LINE 有紗 : 起きてる?]
[LINE 有紗 : もう寝た?]
[LINE 有紗 : 寝たよね]
[LINE 有紗 : 時間できたら電話欲しい]
[LINE 有紗 : 初音にだけ話がある]
[LINE 有紗 : 不在着信]
ぼやけた目でおびただしい数の通知を追った。
有紗に、吉野くんのことを頼まれてから2週間。
結局、私は連絡をできぬまま、
ただ有紗の伝えるニュースだけを聞いて、現状を知っていた。
夜中に連絡が来ることもしょっちゅうで、この手のLINEも慣れてきていた。
頭がひどく痛む。変な時間に寝たからかだろう。
私は力なく、そのまま目を閉じた。
*
-あの時。
私が、もっとお人好しで、もっとマメで、
もっとおせっかい焼きだったら、
何か変わっていただろうか。
それとも、あの時、二度寝しなければ、
その前に、帰宅してすぐに、ベッドに飛び込まなければ、
私は、何かに気づけたのだろうか。
私は、知らなかった。
これから起こることも、
今、起こっていることも。
何も、知らなかった。