コメディ・ライト小説(新)
- Re: 透過探偵Ravi ReLive ( No.4 )
- 日時: 2018/10/16 00:10
- 名前: リセ ◆5JU.BStCfg (ID: Bf..vpS5)
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「うへぇ……やっと着きました……」
「流石に駅のある市街地から一時間はキツいです……。馬車をチャーターするべきでした……」
「調査する前からへばっててどうするのさー……」
「そういうレミ君だってへばってるじゃないですか! うぅ……少し息を整えてからお邪魔しますか……」
彼らは探偵団「ReLive」であり、現在依頼のあったこのテンダー邸へとやって来た、のだが。彼の屋敷は一番近い列車の駅のある場から歩いて一時間かかる小さな町にあるというのにも関わらず「馬車をチャーターすると結構お金がかかってしまう」とサクラが言ったために彼らは徒歩でここまでやってくるというよく言えば経費の節約、悪く言えば馬鹿な行為をしたのである。
「お前らこんな距離でへばってるのかよ。体力無いねぇ」
「ラヴィはもう死んでるから疲れるなんてことないでしょ……」
「こんな距離生きて歩いたら疲れるに決まってますよ!」
「そんなことは無いさ。幽霊だって人の世から霊界に、霊界から人の世に移動すれば疲れるもんだ。因みに俺は生きてた頃は旅をしていたからコレの二倍は少なくとも歩いてたぞ」
そして彼──ラヴィはReLiveの中でも中枢的で、それと同時に異常な存在である。彼はもうとっくのとうに現世で役目を終え死んでしまった身であり、ReLiveのメンバーであるリサ、サクラ、レミの三人と霊感の強い人間以外には直視することは不可能である。まぁ、彼らにでさえラヴィの存在は透き通って見える程度なのだが。
「ほら、何時までも他人の家の前でだらしないことをしているんじゃないよ。俺はお前らがいないと出来ないことが沢山あるんだからな」
「「「はぁ~い……」」」
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「探偵団の皆様、ようこそいらっしゃいました……。僕は皆様に依頼書を送りました、ピノキア・ライアと申します。以後、お見知りおきを」
彼らを出迎えたのはテンダー博士の若き助手、ピノキア・ライア。博士が亡くなってから一週間、ずっと片付けをしてきたと思われるのにその顔には疲れの表情を一切見せていない。リサ達とは大違いである。
「わ、わたしはリサ・エーデリスです。よろしくお願いします」
「サクラ・ブロッサムです。よろしくお願い致します」
「ボクはレミ・ブライト! よろしくお願いします!」
「はい、よろしくお願いします。早速ですが今から貴方達が調査する間使ってもらう客室に案内いたしますね」
「「「ありがとうございます」」」
軽い自己紹介を済ませた後、ピノキアによって彼らは屋敷の奥へと案内される。彼にはラヴィの存在は見えていないのか、彼が堂々と屋敷に上がり込んでも気がついていない様子である。まぁ、調査したことをまとめたりリサ達に助言や助け船を出すのは彼の仕事なので居なくなられると彼らが困るのだが。
*
「ここが貴方達が使う客室です。他にもここの客室を使っている方がいらっしゃいますので部屋を間違えないようにご注意ください。それと、屋敷の中には生前の博士の趣味であったからくりが大量に設置してあります。なので客室の中と研究室以外の廊下などに置かれている小物にはお気をつけ下さい。少しでも動かしたり振動を与えてしまうと作動してしまい、屋敷のどこかに飛ばされ最悪の場合暫くこちらに帰ってこられない場合もありますので、その辺は慎重にお願い致します。それでは、ごゆるりと」
そう言うと彼はリサ達の前から立ち去って言った。
「からくりだらけの屋敷……しかも運が悪いと戻ってこれないとか、とんでもないトラップハウスみたいだね、ここは」
「まぁ、俺には関係ないけどね」
「幽霊が触って反応するからくりなんてあったら怖いですよ……」
「あの、今から何をしましょうか……?」
「そうだね……。先ずは聞き込みだね。屋敷中を回れば誰かしらと出会うだろ。さっきの依頼者もメイド二人と騎士団リーダーとお孫さんが居るって言ってたし。俺はお前らが話を聞いているあいだに幽霊の力を応用していつも通り他人の心を読んでいくから、表面上の証言集め、頼んだよ」
「はい、分かりました!」
「誰か近くに居ないかしら……あ、早速あそこにメイドさんらしき人がいらっしゃいますね」
「よーし! 聞いてみよう!」
サクラの指さす方向には掃除をしているメイドらしき人影が。
「あ、仕事中にすいません……。お話を伺ってもよろしいでしょうか?」
「どうぞ。話は聞いております。探偵団の方々ですよね。私はここのメイドを務めております、アルマーニ・キャロンと申します」
「アルマーニさん、よろしくお願いします。それでは早速ですが……博士の最期の作品は一度も見たことはありませんか?」
「ええ。見たことありませんわ。それにそもそもお亡くなりになられる一年前から既に何ももう作っていないように見えましたし……。からくりは増えましたが」
「なるほど……」
(ふーん……。博士なくせに一年前から既に制作の手を止めていたのか……。さて、こいつは心では何を考えているんだか)
《博士がロボット制作をしている所を見なくなってからというもの、屋敷のからくりがさらに増えた気がしますわ。老後はからくりに専念していたのかしら?》
(ふむふむ……。まぁ、操作の邪魔になりそうなからくりがないといいがな。バリバリありそうだけど)
どうやらアルマーニの証言によると、テンダー博士は死ぬ一年前から既に本業であるロボットの発明や研究は行っていなかったらしい。
「えっと、作品を見たことはなくてもどんなものか分かることがあれば教えてください」
「そうですね……博士はよくロボットを作っていましたし……新しい革新的な凄いロボットなんじゃないでしょうか。博士が作ったと言えば高値で売れるでしょうし」
「ふむふむ……」
(革新的なロボット、ねぇ……。そもそもこの世にはそんなにロボットは出回っていないし、日常的に使える便利なものだったらいい値で売れそうだな)
《何を作っていたかは知りませんでしたが、その情報がちょっと外部に漏れてそれを聞き付けた盗賊が盗んだに決まってますわ!》
(盗賊かぁ。そういや依頼書にも隠し部屋の窓ガラスが割れたとか言っていたな……って、んん?)
「仕事中に答えて下さりありがとうございました。あの、よければ他の方々がどこにいるか分かる範囲で教えていただけると嬉しいです」
「私の同僚が一階の食堂にいたと思いますわ。調査、頑張って下さいね」
「「「はい、ありがとうございました」」」
三人はお礼を言うと一階の食堂を目指して歩いていった。
(さて、一人分の情報も集まったしさっさとあいつらについて行くか)
そして、彼もリサ達を追いかけるように去っていった。
そして残ったのは、メイドのアルマーニのみ。
「い、今の透き通って見えたあの方は何者ですの……?」
どうやら、彼女には「彼」の存在が見えていたようだ────。
*Day one - first part fin.