コメディ・ライト小説(新)
- Re: ◇梅原探偵事務所◇【最新ニュースあり!!】 ( No.12 )
- 日時: 2019/10/06 19:32
- 名前: 黒狐 (ID: 9Urj1l4Z)
「蒔ちゃん、待って」
後ろから梅原に声をかけられ、蒔は振り返った。
「……梅原さん……」
「さっきの冬也の言葉、気にしなくていいからね」
蒔はどきりとした。心を見透かされたのかと。実際、蒔は冬也に言われたことを気にしていた。
「冬也は、女の子が苦手なんだ」
「えっ?」
蒔は予想外の梅原の発言に、一瞬硬直。そんな蒔を苦笑しながら見つめる梅原。その笑みとは
裏腹に、どこか悲しみのような影を落としながら話し始めた。
「実はあいつ、2年前あいつは当時いた彼女を振ったんだ。そこまでならよくある話だけど、
その彼女から今も嫌がらせを受けているんだ」
蒔は冬也の事を知りたい気持ちから「どんな嫌がらせですか?」と問う。梅原は再び翳り交じりの
苦笑を浮かべ、仕方なさそうに答える。
「知りたがるね……まあ、教えてあげてもいいかな。毎月血液のべっとりついたナイフが冬也宛に
届くんだ。恐ろしい程に『死ね』と書かれた手紙とともに。当然迷惑極まりない行動で警察にも
被害届は出してるんだけど……名前は改名してるし、住所も転々と変えているからはっきりとした
ことはわからないんだ」
蒔はゾッとした。考えるだけでも悍ましかった。梅原だって本当はこんなことは
話したくない筈だ。顔を掌で覆っている梅原を見ていれば、分かった。そんな梅原は心配そうに
見ていた蒔に気づいたのか、何とか作り笑いを浮かべたような、そんな顔をした。
「―でも、君には違ったみたいだ」
そんなことを言われても、蒔には理解できなかった。冬也にあんなに冷たくされたからだ。あれが
他の女子と違う対応なのだろうか……?蒔はそう思った。
「俺はあんな冬也を初めて見た。普通は女子に話しかけたりしないんだ。なのに、君に対しては
言葉を交わしていた。裏が全くない君に、冬也も戸惑ってたんじゃないかな」
蒔はこの話を聞いて、嬉しいような、こそばゆいような気持ちになった。でも冬也の過去を思うと
そんな思いは持ってはいけないように思えた。