コメディ・ライト小説(新)

Re: ◇梅原探偵事務所◇ ( No.6 )
日時: 2018/12/25 08:10
名前: 黒狐 (ID: 9Urj1l4Z)

「―…」
「―…」
 今、目を覚ました蒔は、近くで聞こえる小さな声の会話に耳を傾けながら、上体を起こした。今蒔が居るのは、ふかふかと柔らかいダブルクッションのベッドだった。

「おー、あの子起きたぞ、皐月。」
「そうみたいだね。やあ、君大丈夫かい?」

蒔は見覚えのある顔だなと思いながら、お礼を言った。

「あ、ありがとうございました。えーと…」

蒔は気を失ってしまったため、二人の名前が思い出せなかった。

「ああ、オレの名前は梅原うめはら皐月さつきさ。この梅原探偵事務所の所長だよ。」
「俺は名干なぼし冬也とうやだ。この皐月の助手だ。」

それを察したのか、二人は自分の名前を名乗ってくれた。

 梅原皐月と名乗った者は、薄茶色の長い髪をサラサラとなびかせ、
そんな様子を見ているだけでも夢心地にさせてくれるような、モテコーデの
青年だった。身長はかなり高く、おそらく蒔よりも25センチは高いので、
推定180センチ以上だろう。

 名干冬也と名乗った者は、皐月よりは長くはないが、顎下まで伸びた
漆黒の黒髪と、同じく黒縁メガネのキリッとした青年だった。
制服もマッチしていて、こちらも身長180センチ位だろう。

「ありがとうございました。梅原さん、名干さん。」
「いーよ、いーよ。実はさ、中島瑠依の件は、前々から警察に頼まれてたんだよねー。」
「え…?中島瑠依…!」

 蒔は『瑠依』という名前を聞くと、身の凍るような寒気が全身を走った。

「ご、ごめんね。悪いこと思い出させちゃったみたいだね。」
「いえ…大丈夫です。でも、思い出したのは悪いことだけじゃなかったです。」

 蒔は胸を張ってこう言った。

「そんなピンチを、梅原さんたちが助けてくれたじゃないですか。」

そう言うと、皐月は少しの間唖然としていたが、突然フッと吹き出した。

「え?何で笑うんですか?」

 そう蒔が問うと、

「だって、初対面でそんなこと言う?…ぷはっ」

と、ますます笑っていた。



バシッ



突然皐月が前に倒れこむような姿勢を取った。蒔はいきなりの事に驚き、
大丈夫ですか、と声をかけようとした。

「いいってぇぇぇ!!」

その時、皐月が悲痛の雄叫びを上げた。そんな様子にますます蒔が驚いていると、

「うっさい!そんな会話はよそでやれ!君も君だ!こんな奴の相手はしなくともいい。用がないなら帰ってくれないか?うちも暇じゃあないんでな。」

グサッと刺さる言葉の矢。しかし、蒔は負けない。それどころか、

「かっちーん」

と、怒りが込み上げていた。

「用ならあるっつーの!人の話は聞けよ、この真面目野郎!!」

今までの蒔とは全然違う言葉に、皐月と冬也はあんぐりと口を開けていた。
これは、蒔の怒りのボルテージがMAXになると発動してしまう、
ゲームで言うとスキルのようなものだ。

しかし、何と言えど蒔の悪い癖である。


***皆様へ。
この蒔は、決してキャラが崩壊したわけではありませんので
ご安心ください。
                      作者より***