コメディ・ライト小説(新)

Re: 仮定したなら反論だ! ( No.1 )
日時: 2019/02/09 20:51
名前: ゆら葵 (ID: 7YSFrjgb)

『春は、出会いと別れの季節だ。』
誰が言い出したのだろう。
今や、鉄板になっていて、感動やありがたみを、その言葉に感じなくなっている。『これを使っておけば、なんか、カッコよく聞こえね?』感が、半端ない。そんな、耳当たりのいい言葉が、五万とある。数えたことは無いが。
私は特に日本語に興味があるのではない。ただ、一般的に言う、[中二病]なのだと思う。
私の名前は、甘之川華詩乃。まぁ、この名前を読めた人は、一人もいない。振り仮名を振ると、【あまのがわかしの】。[甘之川]が苗字で、[華詩乃]が名前だ。親的おやてきには、『天の川だし〜、星座の名前にしたくて〜。カシオペア?的な?星座があるらしいから、それで、華詩乃にしたの〜。』みたいな説明をされた。なんとまぁ、甘ったるい名前をつけられたもんだ。華詩乃なんて、“sweets(菓子の)”じゃないか。甘之川なんて、マンガのキャラじゃあるまいし。
まぁ、自己紹介(名前に対しての八つ当たり)はここまでにしておこう。“親が親なら、子は子”。だから、少し中二病なことを考えていたのだ。
『出会いと別れの季節』。私は、そんな風に考えた事はない。
いままでの経験からして、出会いは“入学”、別れは“卒業”と仮定できる。
が、しかし!
別れの方が、順序的に先ではないか?3月に卒業、4月に入学だ。先に出会ったら、学校なんて、パンパンになってしまう。自分が卒業、入学する側だとしたら、サイクルがおかしくなる。一度に、二つの学校に在学している事になる。〔出た分、入る→出た分、入る〕にならなければいけないのに。
が、しかし!
『別れと出会いの季節』は、『なんか、乗り換えてるっぽくてやだ〜。』と、言ったところか。私的には、その通りだと思うのだが。
「ふぅーむ。」
あ、そういえば、今日、初めての発声?!
「ちげーよ。」
隣から、声が聞こえた。そいつの名前は、
「…なんだっけ。」
幼馴染で、よく話す相手だが。
「あれれ、ド忘れ、ド忘れ。私は一生懸命思い出そうとしたよ?でも、どうも…。」
あ、ちなみに、私は中学生一年生。今は昼休みで、隣の席の人に、“今日初めての発声”ということを否定された。
「なんだっけじゃねーよ。てかお前、ずーっと、ぶつぶつ言ってたからな。ま、言ってなくても、お前の考えることなんて、すぐ分かるし。」
すごく、呆れたように、ソイツは言った。紹介しよう。まずは名前だが…。
「どうも、堤真一です。」
「いや、おっさんっ!」
はっ!つい、突っ込んでしまった…。私が何も言わなければ、『なに〜?あいつ、自分でイケメンとかいってる〜。ださいよね〜。』などと、“言ってる〜”をわざわざ平仮名にするほどの奴らから言われたに違いないっ!
あー、惜しいことをした。
私はアイツがボケていることに気付いた。だから、反射的に、突っ込んだのだ。
そうそう。コイツの名前は、白銀圭右。まぁ、【しろがねけいすけ】と読んだ方が多いだろう。
が、しかし!
振り仮名を振ると、【しろがねけいう】。右が【う】とは、まぁ、えらいこっちゃ。
「おい。勝手に人を“ダサい”とか何処かの馬鹿に言わせた挙句、名前の解説をするな。俺に被害ないけど、俺の親をいじめてるぞ。」
「…!中学一年生で、マザコン⁈
…ま、まぁ、主観はそれぞれだよな!元気出せ!」
「マザコンじゃねーし、元気も、もともとあるわ。」
私は“けいう”とか、呼びにくいから、“ケー”と呼んでいる。私が親だったら、まずこんな名前をつけないが。読めないし。
まぁ、それは良いとして、『春は出会いと別れの季節』だったか。
「…ねぇ。ケーはどう思う?」
「んー。いいんじゃね?オレは使わないけど。」
コイツ…。本当に私のこと、分かってるな……頭の良さをここに使ってるのか。
話を戻そう。
私は先ほども言ったが、ケーとずぅっと一緒だ。
ここで大事なのは、私がコイツとしか喋れないこと。“喋れない”では無く、“喋らない”と訂正しよう。“しか”では無いが、固定のメンバーで過ごしている。
だから!
…“別れ”をしたことが少ないのだ。
私が別れを経験したのは、春では無い。…まぁ、それは置いておいて。
春に“別れ”を経験したのだろうが、記憶がない。私が大事なのは、いつものメンバーだけだ。他は気にかける必要もない。出会いも同様だ。
他のメンバーは2人。女子と男子1人ずつ。池田楓と川岸柊。
私はため息をつきながら言った。
「あいつらは、今、どこにいんだろうな。」
「行方不明みたいに言うな。あの2人、階段に向かってたぞ。どうせ2人きりで弁当食べんだろ。」
私はもう一度ため息をついた。
今までは4人で行動していたが、2人が付き合うとなると、私たちが、余る。これは、ケーが可哀想だが…。
これは、2人との“別れ”と、言うのだろうか。
「…ケーも入ってくればいいのに…。」
私が文句みたいに言ったら、
「…邪魔できないだろ。わざわざ階段まで行ってんだぞ?」
今度はケーがため息をついた。
「…ケーは“他に”好きな人、いないの?」
「は、はあぁ⁈そんなのいねーよ!」
「…つまんないなぁ。恋愛とか興味無いけど、ケーなら応援してやろうと思ったが。」
一番の友達だし、私になんて構ってくれなくていいし。好きな人といた方といた方が楽しいだろう?
「っ⁉︎」
そう言う意味で私が言ったら、ケーは驚くほどびっくりした顔をしていた。
そのあと、ケーは小さな声で
「…お前が何してくれるんだ……。」
と言った。
私はその言葉の意味が分からなかった。だが、深く考える必要が無いと思った。
「ま、私は好きな人とか居ないんだが。」
私はまた、ため息をついた。
ケーは嬉しそうに笑いながら、言った。
「お前に、好きな人はいらねーんだよ。」
その笑顔は、出会ってから、そうそう見ない顔だった。