コメディ・ライト小説(新)
- Re: ツクガタリ。 ( No.1 )
- 日時: 2019/01/31 21:06
- 名前: キイチ ◆V9lDD2BSz2 (ID: gF4d7gY7)
両手首、片手首に掛けた人数。それは、もう数え切れない程になる。最後に掛けたのは......
其処まで来て、彼は現実へと徐々に意識を戻す。とある神社の境内にある平べったい石の上に座り、目蓋を閉じてまるで寝ているかのように過去の出来事を思い出していた。
日々という日々を送ってない。食事や風呂、衣食住がある暮らしを送ってなかった。否、正しくは出来なかった。そもそも人の姿になれなかった為に送れなかった。だけど、今は違う。
「けーどさ、もうちょっと早く自由に動けてたら良かったのに」
嗚呼、もうっ。と彼は、不服そうに愚痴る。言い終わると同時に頬をぷくーっと膨らませてむすりと見るだけで何か不満があると分かる顔をしている。
その様は何処にでも居そうな少年そのものだ。だが、キラキラと光に反射して煌めいている艶のある銀髪に灰色の大きな瞳は何処となく浮き世離れしていて他の人とは違う独特の雰囲気を醸し出していた。
全体的に可愛いなりをしているが、彼はこれでも二十歳を越えている。彼の名はカケルという。カケルは、暫し膨れっ面になっていたが、軈て、すちゃっという擬音が出そうな軽やかな音と共に立ち上がりそのまま歩き始める。
不服そうな顔だったのが今はスキップをしそうな程、上機嫌で口笛を吹きながら階段を足早に下りていく。時折、二段跳ばしをして本来ならしてはいけない真ん中を通り街へと繰り出した。
カケルの目的は気になった人を恋人にする事だった。
性別なんて年なんて関係なく、気になった人なら誰でもという訳ではないが、カケルなりの条件を満たしている人を億単位居る人達の中からたった一人を探すというもの。
否、恋人で終わらず共に生きる伴侶になってくれたらと、カケルは心の隅で思いながらも気取られないようにごく自然な視線で溶け込むようにして歩いていく。
- Re: ツクガタリ。 ( No.2 )
- 日時: 2019/02/21 00:18
- 名前: キイチ ◆V9lDD2BSz2 (ID: 9i/i21IK)
同時刻。カケルが動き出したのを感じとったように野良猫達と戯れていた男性が怪訝そうに眉を顰め舌打ちを一つしてから猫櫛をズボンポケットに突っ込んでその場から立ち上がる。
「彼奴......懲りてねえな」
探すのは良い、まだ。 と舌打ちのみならず、ため息も吐きたくなる程に彼奴には手を焼いていた。そもそも、彼奴に出会わなければ会いさえしなければ否、そもそも俺を使っていた人間が罪を犯さなければカケルを察知することはなかった。それなのに、こうして分かってしまう。
ほっとけば良い。そう何度も頭に過った。そう出来たら良かったが、ほっとく事が出来なかった。それは、彼もカケルと同じ人間ではなく付喪神だからでもあるがそれ以上にまだ人の姿をとれてから年月が其れほど経ってなく危うさがある。それもカケルは4回目の行動で、3回とも自分で駄目にしたのもあってか、ほっとく事がままならない。ほっとおいたら人間が壊れてしまう事になりかねない。その為、誰かがストッパーにならないと何度も繰り返しては同じ過ちを犯す。それは、避けたい。否、避けなくても
「俺らと違って、脆く弱いんだから」
少しは気ぃ使え。と此処には居ないカケルに云うように言葉を吐き出した。苛立っているのか、自身の頭を掻くような仕草をしてからズボンポケットに手を突っ込むと、野良猫達、一匹一匹に目を配らせる。その目は柔らかく優しい眼差しをして此処から立ち去るのを惜しむような名残惜しそうなゆったりとした動作で歩き始めた。
"またな。"と小さく野良猫達にたった一言告げて、気だるげにかったるそうに街中へと繰り出す。
脳裏に浮かぶのは、血で染まった自分自身と自分を使った男性。それに自分の目の前に倒れている女性の姿。
俺は。俺は......そんな使われ方されるような物じゃねえのに。 そんでなくても、命が尽きるのが早くすぐに俺を置いていっちまうのに。
女性のやめて!と云う言葉。助けて。と掠れた声で云う言葉も鮮明に思い出される。あの時に、人になれていたらあの女性は生きていた。
- Re: ツクガタリ。 ( No.3 )
- 日時: 2019/02/26 06:13
- 名前: キイチ ◆V9lDD2BSz2 (ID: SUkZz.Kh)
野良猫達と戯れていた男性の名はキリヤという。キリヤが街中へとカケルと同じように否、カケルが暴走しないようにする為に繰り出した頃、とある高校では。
午前の授業が終わったようで、お昼休みの時間になると、皆いそいそとグループを作ったり、教室じゃない場所で食べる人或いは購買に行く人と様々。その中で一人の男子は誰かと食べる
一時保存。