コメディ・ライト小説(新)
- Re: BRAVE BOYS ( No.2 )
- 日時: 2019/02/09 21:12
- 名前: ブラー (ID: 1866/WgC)
第一話「遊園地での出来事」
「やーっと着いたわ! 勇人君」
「ねえねえお兄ちゃん、早く行こうよ!」
「ああ、すぐ行くよ」
(こういう所に来るの……久しぶりだなあ)
彼の名前は、藤堂勇人(とうどうゆうと)。16歳の高校生である。隣にいるのは、9歳の弟である藤堂誠(まこと)と、従姉の一ノ宮桜(いちのみやさくら)(19歳)である。
彼らが今いる場所は、人でごった返す遊園地。観覧車やジェットコースターといったアトラクションに、親子連れやカップルがこぞって詰め寄っている。
そんな中に混じっている3人、勇人と誠と桜である。
事の発端は、一昨日の電話である。桜が、電話で「明後日の日曜日暇? 暇なら一緒に遊園地行きましょう! チケットが当たったのよ!」と電話をかけてきたのが始まりである。
何人分あるのかと尋ねると、3人分という返答が返ってきたため、勇人が誠に遊園地行くか? と尋ねたところ、絶対に行くと返答したので、桜と誠、勇人の三人で行く事になったのであった。
遊園地に来て早々、誠ははしゃいでいるが、実は内心勇人もワクワクしている。こういう所に来るのは、実は結構久しぶり。こういう楽しい所は。
今は、1日遊び放題券を入り口で買って、遊園地に入ったばかりの時だ。
「あーっ! お兄ちゃん見てよ! ステージでマジックショーやるんだって! 観に行こ観に行こー! 僕、マジックショー好きだから!」
「はいはい。そんなに急いで行かなくても、ショーは時間になればちゃんと開かれるから、それまでアトラクションにでも乗って時間を潰していよう。ね」
「で、でも……早くしないと、良い席が取られちゃうよ……!」
「まーまー、気楽にいこーよ。ショーまでは1時間もあるんだからさあ」
「むー……」
こうして、三人はショーが始まる前に、ステージの近場で時間を潰すことになった。
まず三人は、射的場へと向かった。エアガンで的を打ち抜き、得点の高い人が商品を貰えるゲームである。
しかしこのエアガン、一般的によくあるハンドガン型ではなく、ライフル型のエアガンである。これがクセモノであり、銃身が安定しないのだ。
それにより、誠と勇人は得点が振るわない。
「うーん、30点だって」
「僕は……10点」
「全く二人とも、情けないなあ。貸してごらん、銃っていうのは、こうやって撃つのよ!」
勇人からライフルを奪い取り、的に相対する桜。桜は、いとも簡単に的の真ん中らへんを撃ち抜く。続けて的を打ち抜き続ける。それは、どれも真ん中を撃ち抜く神業プレイである。
「わあ~! 桜お姉ちゃんすっごーい!」
「どうやったら、そんな風にポンポン的を撃ち抜けるのさ? コツとかあるの?」
「まあ、ちょっとしたテクニックがあるのよ。教えないけど」
「ちぇっ」
続いて、射的場の近くにあったアクションゲームに群がる三人。剣状のコントローラーを使って遊ぶゲームである。
最初に桜がやったものの、剣が妙に重くて振り切れない。次に誠がやろうとしたもの、剣が重くて持つことすらままらない。
「これ、重すぎて全然遊べないよ~」
「全く。ほら、貸してみなよ。こうやるんだよ」
勇人がやってみせると、面白いようにバッタバッタと画面の中の敵が切れていく。二人が重いという剣を、簡単に振り回してスコアを稼いで行く。
「お~凄い凄い。流石、元は剣道やっていた勇人君だねえ。なんで止めちゃったの?」
「まあ……色々とね」
「凄いぞ、お兄ちゃん!」
アクションゲームを終えた後、外に出て時計を見てみる三人。すると、ショーの時間はもう近いようだった。
「ねえ、お兄ちゃん。早く行かないと、ショーが始まっちゃうよ! 観たいんだよ~マジックショー!」
「はいはい、ちゃんと行くから。そう焦らないでね」
「全く、よっぽど楽しみなのねえ。誠君」
誠に引っ張られるままに、ショーが行われるステージへとやってきた勇人と桜。既に、結構な人がステージに詰めかけていたようだった。それでも、誠は楽しそうにしている。
そして、ショーは始まった。ステージに現れたのは、シルクハットにタキシードを着た、マントのマジシャン。そこで行われたマジックは、シルクハットから鳩を出したり、ハンカチからウサギを出したりとありふれた内容だったが、誠は楽しそうに見ている。
そうして、大脱出マジックでショーが終わった時、誠は勇人に言う。
「お兄ちゃん。僕ね、大きくなったらマジシャンになりたいの! そうして、帽子から鳩を出したりして皆を喜ばせたいんだ!」
「ふーん? 初耳だね。でも、マジシャンになるにはかなり頑張らなきゃいけないって話だよ? それはもう、何年も修行しなきゃいけないくらい」
「できるもん!」
「というより、誠君はあの格好がしたいだけでしょ。シルクハットにマントの正装が」
「だって、カッコいいんだもん! あの格好が!」
「フフフ。でも、格好から入るのも悪く無いわよね」
そんなことを話しながら歩いていくと、とある建物が三人の目に入った。『ミラーワールド』という、銀色で装飾された建物。
「見て、お兄ちゃん! なんか面白そう!」
「おお~、鏡の迷路かな?」
「誠君も良いのに目をつけるね~。んじゃ、行きましょ」
「行こう行こう!」
そうして、ミラーワールドに入って行った三人。中はもちろん、一面鏡で作られた迷路であり、ちゃんと道を確認しないと鏡にぶつかることも多々ある。
「また、ぶつかっちゃったよ……」
「これで誠君、5回連続で鏡にぶつかったわね~」
「ハハハ、全く誠ときたら……これ以上ぶつかってると迷路から出てこれないよ?」
「だ、大丈夫だもん! ちゃんと出れるもん!」
強がっていても、誠はちょっと焦っているようだ。それを、楽しそうに眺めている勇人と桜。
しかし、そんな楽しい出来事は、ある出来事によってぶった切られてしまう。
バツン!
「わっ!?」
「ひゃあっ!?」
突如、アトラクションの電源が落ちてしまった。当然、辺りは真っ暗になってしまい、三人は驚く。桜は勇人にすり寄り、誠は兄である勇人に抱き着く。
「お、お兄ちゃん……!」
「大丈夫、落ち着いて。すぐに復旧するはずさ」
だが、明かりはいつまで経ってもつかない。
「もう、かれこれ30分くらい経っているのに、全然明かりがつかないわね……」
「お兄ちゃん……僕怖いよ……」
「心配ないさ。きっと大丈夫」
だが、明かりはいつまで経ってもつかない。それにより、業を煮やした桜は。
「ねえねえ~。いつまでも電気がつかないんじゃあ、ずっとここで立ち止まっていてもしょうがなくない? とりあえず先に進んでみようよ~」
「ダメだ。こんな暗闇の中、歩き回りでもしたら鏡にぶつかって大怪我するかもしれないだろ?」
「大丈夫大丈夫、壁沿いに歩いていけば、迷ってたってちゃんと出れるはずよ。とにかく、いつまでもこうしている訳にもいかないでしょ? 誠君が怖がっているし」
「そりゃあまあ……そうだけど」
「そうと決まれば、行くべきよ! じゃあ、私が一番前で先導するから、手を繋いでついてきて」
「じゃあ、そうするよ。ほら、誠も一緒に来て」
「うん……」
そうして、この暗闇の中を歩き回る作業を始めた。
しかし……。
「アレ? おかしいな……?」
「どうしたの?」
「さっき明かりがついてた時は、目の前に道があったはずなのに、いつの間にか無くなってる」
「あ、そう? じゃあ、戻ろうか」
そうして、来た道を戻ろうとするが……。
「あ、アレ? 来た道が……無い?」
「ちょっと、こんな状況でふざけているの?」
「流石に私だってふざけないわよ。私だって、訳わかんないんだから!」
「こんな時にケンカは止めて! お兄ちゃんも桜お姉ちゃんも!」
「あ、うん。わかった。しかし、どうす――」
その時だった。全員の足から、床を踏んでいる感覚が、失われる。地に足がつかない。まるで、空中にいるような……いや、本当に空中に浮いている感覚が……!
「なっ――うわあああっ!」
「きゃああああ!」
「わーーーっ!」
悲鳴が暗闇に響き渡った。その暗闇に声は吸い込まれ、三人は落ちて行った。どこまでも深い、底なしの大穴に。暗闇の中へと……。
第一話。終わり。