コメディ・ライト小説(新)
- Re: BRAVE BOYS ( No.3 )
- 日時: 2019/02/14 23:40
- 名前: ブラー (ID: 1866/WgC)
第二話「突然、異世界に!?」
「わあああああぁぁぁ……」
底なしの闇へと、落ちていく勇人、誠、桜の三人。それこそ、いつまで続くかわからない程、落ちてゆく。
いつの間にか、三人の意識は途切れてしまった。
「ん……うぅ……」
勇人が眼を覚ますと、目の前に青空と白い雲、そしてそれらを囲む木々が見えた。そして、ひとしきり吹いているそよ風が肌に感じられた。
「あれ……? どこだここ……?」
上半身を起こして周りを見渡して見ると、辺り一面木と草むら。周りには本当に木しかなく、同じように木々が並んでいるように見えた。
「……どこなんだよ、ここは……」
森の中に、ただ一人座っている。すると、あることに気づく。
「あ、そうだ! 誠に、桜がいない! ったく、二人ともどこにいるんだ!?」
立ち上がり、走り出す勇人。どこまで続くかわからない森を、ひたすら前へと走った。
しかし、森を当てもなく走っても当然見つかる訳もなく、ただひたすらに森が続いているだけだった。
「ハァ……ハァ……! どこまで続いているんだよ、この森は……」
膝をつき、項垂れる。すると、ある違和感に気づく。
「ん……? な、なんだこれ!? 僕の手が!」
自分の両腕が、手甲に包まれていたのだ。それを見て、体を見てみると、上半身が金属製の鎧に包まれ、下半身がスーツとブーツで覆われていた。そして、腰には剣がぶら下がっていた。
「俺、こんな服着てたっけ? というか、いつの間にこんな服着させられたんだ!?」
自分の格好が、あまりにも荒唐無稽な格好になっていたことに、驚きを隠せない勇人。しばらく呆然とするが、唐突にある考えが浮かぶ。
「……この剣って、どんななんだろ」
剣を鞘から引き抜いてみると、両刃の長剣が出てきた。両手で柄を持ってみると、ずっしりとした重さを感じた。
「こ、これ……本物なのかな? ちょっと、振ってみようかな」
思い切り横ぶりしてみると、空を切る感触を直に感じた。そして、調子に乗って縦切り、斜め切りをする。そして、木に向かって剣を振ってみると、木がスッパリと切れた!
「えっ、えええ!? 木が、真っ二つに切れた……! まさか、この剣、本物……!?」
剣が本物だと気づいた勇人は、危なくないようにそっと鞘に剣をしまう。
(こんな危ない物、振り回しちゃダメだよな……。早く二人を探そう)
勇人は再び歩き出し、桜と誠を探し出す。すると。
「ん? なんだ?」
勇人の目の前に、突如白い鳩が現れる。鳩は勇人の目の前に来ると、ポンッと音を立てて消えてしまった。すると今度は、草むらがガサガサと音を立てた。その音は、次第に大きくなっていき、勇人の方へと近づいてくる。
「本当に、なんだ!?」
音は更に大きくなる。そして、音を立てながら草むらの中から飛び出して来たのは……。
「お兄ちゃーん!」
「ま、誠!? ってか、お前もその――」
草むらから飛び出してきた誠は、勇人とぶつかり、互いに尻もちをつく。だが、誠はというと……。
「ううっ、んむう~」
「誠……お前も着替えさせられたのか?」
誠も、遊園地にいた時とは別の格好になっていた。
全身黒のタキシードに、背中には黒いマントを羽織っていた。そして、ぶつかった衝撃で頭をすっぽり覆ってしまった黒のシルクハット。それは、誠が憧れていたマジシャンの衣装そのものであった。
誠は、シルクハットを脱ごうともがいている。そして、ポンッとシルクハットは脱げ、誠は改めてシルクハットを被り直し、勇人に抱き着く。
「お兄ちゃん! やっと会えたね!」
「ああ、こっちも会えて嬉しいよ! ……ところで、その格好は一体……?」
「あ、うん。目が覚めたらさ、いつの間にかこの格好になっていたんだ。お兄ちゃんも、違う格好になっているけど……」
「あー……。なんでかこうなっちゃったみたい」
「そうなんだ……そんなことより、桜お姉ちゃんももうすぐ来るよ!」
「えっ、桜が!?」
「あー、探した探した! やっと見つけたわよ!」
草むらの中から、桜が現れる。だがその格好は、軽装な鎧と、背中にはライフル銃のようなものが背負われていた。
「あ、桜もか……」
「そーなのよ、この銃ったら重くてかなわないわ」
「そーなのか……。ところで、なんで僕の居場所がわかったの?」
「あっ、それはね……。帽子から出てきた鳩さんが教えてくれたの!」
「帽子から出た、鳩……?」
「見ててね、お兄ちゃん」
誠はシルクハットを頭から外し、軽くフチを叩く。すると、シルクハットの中から鳩が飛び出し、辺りを飛び回る。そして、鳩はポンッと音を立てて消えてしまった。
「どう? 凄いでしょ?」
「お前、どうしたっていうんだ?」
「わかんない! でも、一人でいる時帽子を叩いてみたら、鳩が出てきて飛んで行っちゃったの。それで鳩を追いかけていったら、桜お姉ちゃんとお兄ちゃんに会えたんだ!」
「……つまりは、そのシルクハットがなんか凄い力を持っているってことなのか?」
「わかんない!」
「まあこういうのは、使って行くうちにわかるでしょ。私の銃だって、さっき撃ったら本当に銃弾が出ちゃったんだから、仕方ないわよね。私達本当になんか力が使えるようになっちゃっているみたい」
「……一体なんでそうなったんだい? まあ、僕も腰の剣が鋭い切れ味を誇っていたから、人の事は言えないけど……」
「それよりも、あっちに大きなお城が見えたわ。とりあえず、ここがどこかもわからないし、あのお城に言った方が良いんじゃない? いろいろ聞けるかもしれないし」
「まあ、てがかりがない以上、そこに向かうしかないか……」
三人は合流し、桜の言うお城へと向かうのであった。
その城は、森を抜けた一面の草原の上に立っていた。草原の中にポツンと立つ城は、どうにも哀愁が感じられた。
城に辿り着いた三人は、門の目の前に立っていた。門を勇人がノックしてみるが、反応が無い。
「留守なのかなあ?」
「いや、こっちに気が付いてないだけかもしれない」
「どっちにしろ、入れて貰えないんじゃこのまま野宿ってことになりそうね~」
「えーっ!? 暖かい布団で寝たいよ~!」
野宿に対し、誠がわがままを言い始めた時だった。
「ホーッ、ホッホー! 安心したまえ勇者一向よ! 野宿はしないぞ!」
突如、その声が聞こえたと同時に、三人の目の前にガラガラと音を立てながら現れたのは。
「なぜなら、このボク様がお前らを倒すからだー!」
三人の目の前に現れたのは、馬車……ではなく、コウモリのような生き物が引っ張っているリヤカーに乗った、頭に角を生やした白い肌の赤マントの子供であった。リヤカーの横には、『黒馬王号』と汚い字で書かれていた。
「……」
「……」
「……」
余りにも唐突な事に、三人は固まってしまう。そんな中、勇人が口を開く。
「えーっと、君は……」
「コラー! こういう時は、『な、何者だお前は!』と聞くのが礼儀だろう! お約束を無視するのは良くないぞ!」
「じゃ、じゃあ……。な、何者だお前は!」
「よくぞ聞いてくれた!」
(お前が無理矢理聞かせたんじゃん)
「世界を支配せんとする、第五天魔王ルシファーの愛息子! いずれ第六天魔王になる(予定)の男! ガンナー様とはボク様のことだー!」
と、リヤカーの上でカッコつけるガンナー。それを受けて、もう一回三人は固まってしまう。
「お前達は異世界から来た勇者なのだろう!? なら、ここでボク様が華麗に消し去ってくれる! よぉーし、行くぞー!」
そうして、リヤカーから取り出したのは、ボウガンとおもしき弓矢であった。それを即座に発射するが、矢は勇人の頬をかすめただけで、当たらなかった。
それでも身の危険を感じた三人は、焦る。
「ちょっと何!? なんで僕らが殺されなくちゃいけないの!?」
「な、なんでなんでえ!?」
「というか、ここ私達の世界とは違う世界なの!? やだー! こんな所で死にたくなーい!」
「ホーッホッホー! 貴様らの最後だぁ!」
ボウガンに矢をセットするガンナー。もうダメかと思われた、その時!
「ぷぎゃっ!」
「えっ!?」
突如、飛んできた光の玉が、ガンナーを吹っ飛ばしたのだ。余りにも唐突な展開が多すぎて、もうついていけない三人。すると、三人の目の前に、紅いマントと王冠を身に着けた、髭の濃い男が現れる。
「全く、こんな所にまで魔物が来るとは……おちおち出かけることもできないな」
「あ、あなたは……」
「私の名前はアーロン。この城、ヴァイオレット城の王様だ。君達は、違う世界から来た人達みたいだねえ……。なあに、心配いらないさ。君達のことは私が守ってあげるからね」
「えっ」
「さあ、我が城にご案内しよう」
アーロンが門の前に立つと、巨大な門はひとりでに開いた。そして、アーロンはその中に入っていく。
三人は、最初は入ろうか躊躇するものの。
「どうしたんだい? 何も危害は加えないよ。さあおいで」
と、優しい言葉をかけられたことで。
「お兄ちゃん、行こうよ。あの人、僕達を助けてくれたみたいだし、それに……あったかいお布団で寝たいから……」
「うん、行こうか」
「その方が良いみたいね」
ユウト、マコト、サクラの三人は、ヴァイオレット城へと足を踏み入れるのだった。
第二話。終わり。