コメディ・ライト小説(新)
- #11 てんじくあおい ( No.13 )
- 日時: 2019/02/26 19:34
- 名前: 空巫女 (ID: ze9J8nGv)
<#11 てんじくあおい>
「先程、お部屋での独り言が此方に聞こえましたが、夢扱いされるとは、実に悲しいものです」
表情がシュンとなるのと共に、耳もペタンと垂れる。
「夢扱いしたのは悪かったよ!それよりさ、お前も獣人なんだな?」
キッチンまで声が聞こえたのは驚きだが、私の独り言でかなりショックを受けた様なので、謝っておく。あと、違う事は無いだろうが、獣人かどうかの確認をしておく。
「まぁ。我が主は既に獣人の事をご存知だったとは。となると、先日、主とご一緒していた水色の人は猫の獣人で?」
え、待って?なんで海猫を獣人だって解るのさ?
「今度、猫に会わせて頂けないでしょうか?あの子は私の幼なじみなのですよ」
成る程...世の中って広そうで案外狭いのか?
「あのさ、少し気になったんだけど、なんで“猫”って呼ぶんだ?名前が解らないなら“彼女”って呼べばいいのに」
これは少し気になった。さっきも人呼ばわりだったし。
「ああ、それに関しては少々問題があって....獣人には性別は無いのですよ」
何か爆弾発言来たんだけど!?性別が無いって...
「朝食は我が用意致しました。宜しければ冷める前に食べて頂けないでしょうか」
「さらっとスルーしやがった!!」
狐に言われ、テーブルを見ると、なんか凄かった。ここは高級和食料亭かな?明らかに一般人の朝食に出るメニューじゃない。
「まぁいい。折角だし食べるよ。後さ、昨日の夜、どうしてたんだ?親が帰って来た筈だが」
「それはご心配なく。両親様とは既に居候の話はついております。学校側にも、転校の手続きは済んでいます。しかし、最終的には我が主の判断となりますが」
なにこの有能は狐は!?狐と言えばずる賢い手を使ってそうだが、それは偏見だと、後にお叱りを受けた。両親とも、正面から頼み込んだみたいだし、料理の食材に関しても、自身が此処に来る前、故郷で集めた物だそう。
「う〜ん。親から了解得てるならいいよ。住んでも。」
「ありがたき幸せ。それで、お願いが。故郷ではお世話になる者に名を頂くと言う掟がありまして...」
へぇ、名前ねぇ....海猫みたいに、黒だから黒狐?いや、もっといい名前がある筈だ。そうだ!
「“天竺葵”ってのはどうだ?略して葵。この名前はな、私が好きな花の名前なんだ。“ゼラニウム”とも言う。花言葉は、信頼、尊敬、真なる友情。まぁ、花の色は黒じゃないけどさ」
べ、別に掟があるから仕方なく考えてやったんだからな!...っていいかけていまった。危ない危ない。
「天竺葵....素敵なお名前を授かり光栄です。これからはこの名に誓って主に忠誠を捧げます。」
私の前に跪く葵。
「いや、忠誠なんていいから!」
跪かないでよ!忠誠なんて大袈裟だし!
“しかし”と、言う葵を説得させるのには時間がかかり、気づけば料理は冷めてしまっていたのだった。