コメディ・ライト小説(新)

#19 たいかいにむけて 剣道編 ( No.21 )
日時: 2019/03/12 12:33
名前: 空巫女 (ID: pNKCfY7m)

<#19 たいかいにむけて 剣道編>

<<紅実side>>

武道場。
「はぁ!」
私が持つ竹刀が試合相手の先輩の胴に当たる。
「そこまで!勝者、古波蔵紅実!」
葵が旗を挙げて勝敗の宣言をする。
私はその声を聞くと、竹刀を下ろした。
「凄い...古波蔵さん1年なのに...」
「海世先輩が負けた!まさか、手加減!?」
観戦していた部員からは、そういった声が出る。
中には失礼なものもあるが、仕方ない事だ。なんせ、相手は2年にして全国レベルの“宮城みやぎ海世かいせ”先輩なのだから。宮城先輩はおまけに性格がいいし、イケメン男子だし。
「「ありがとうございました」」
相手と挨拶をして礼をし、面を外しながら試合場から出ると、葵が駆け寄ってきた。
「お見事でしたよ、我が主!まさか宮城殿に勝つなんて!」
葵は子供みたいにはしゃぎながら、私に抱きついてくる。
「そんな、まぐれだし...あと」
苦しい。苦しいよ、葵。葵は気にしてなくても、獣人って力強いのだから加減してほしい。
そんな会話をしていると、宮城先輩が私達のもとへ。
「古波蔵、先程の試合は見事だった。あれはまぐれじゃなく、お前の実力だ」
「あっ、ありがとうございます!」
格好いい。それが宮城先輩を見た、私の素直な感想だ。
「おい、古波蔵、大丈夫か?顔赤いぞ、熱があるのか?」
「だ、大丈夫です!」
私は顔が赤いのを指摘され、顔を反らす。
「まさか、主...宮城殿が好きなのですか...?」
「うっさい!」
耳元で囁く葵に怒鳴り付けてしまう。
だって、図星だし。
私は中学から剣道部だったのだけど、入った理由は単純で、見学の時に先輩が試合をしている姿に惚れたから。
この高校に進学したのだって、宮城先輩と試合がしたかったから。私にとって先輩は好きな人であり、憧れの存在で、先輩に実力で勝つことを目標にしてきた。そんな先輩に“お前の実力だ”って言われたら、顔が赤くなるのも当然だろ!?
「大声出すくらい、元気があるなら良かった。今年の大会は決勝まで古波蔵と当たりたくないな...中学の頃なら俺が勝てただろうが、今じゃお前もかなり強くなったからな」
そんな私の気は知らず、先輩がそんな事を。
私だって、先輩と試合するなら決勝がいいに決まってる。出来るのなら、全国大会での決勝がいいな。
「おい、古波蔵、天竺、宮城!いつまで話しているんだ!」
「「は、はいっ!」」
顧問の先生に怒られてしまった。
私と葵は走って移動する。その後ろから宮城先輩がついてくる。
そして、最後にボソッと私の耳で囁いた。
「今日はお前が勝ったが、大会は負けないぞ」
と。
「私だって、負けませんからね!」
私は気合いを込めて、返事をする。大会まで半月。絶対、優勝してみせる!