コメディ・ライト小説(新)

#21 おおかみ ( No.25 )
日時: 2019/03/18 17:52
名前: 空巫女 (ID: jd737JEz)

<#21 おおかみ>

『千影ちゃん、開けて!』
扉をドンドンと叩く瑠姫。
「嫌よ。そもそも何で貴方が私の家を知っているのよ...」
私は大きくため息を吐くと、扉を開けて問う。
「あ、えっと、それは...」
「言えない事?学級委員でもあろう貴方が、何をして、クラスメイトの家を特定したの?」
言葉を詰まらせる瑠姫を、私は問い詰める。
すると、今まで無言だった、獣人が口を開いた。
「その説明はわたくしから。私は、紫狼の獣人。名前は未だないの。ここからが本題なのだけど、私が、主たる瑠姫様に、同郷の者...正確には、貴方様後ろに居る猫に会いたいと、無理を申し出たの。それを、瑠姫様は同級生たる紅実を通じて、この家の位置を調べてもらった。それ故、罰するならば私を」
狼の獣人は、その場に跪く。
獣人に跪かれるって、何とも言えない不思議な気持ちね。紅実も葵相手に同じ思いをしたのかな...
後、紅実も黒なのか。まぁ理由が理由なので仕方ないよね。
「頭をあげて。理由を知った以上、あれこれ言うつもりもないから。罰したりもしないわ」
私は獣人と同じ目線になるように、しゃがむ。
「い、いいの?」
頭をあげた獣人は目に涙を浮かべていた。
自分で言っても、罰されるのが怖かったんだろうね。
「勿論よ。海猫に会いたいんでしょ?話してきなさいよ。あ、海猫はね、猫の名前」
私は獣人の手をとって、家に入れる。
瑠姫が、“何で私は駄目なのに狼はいいの?”的な、視線を、こちらに向けているがスルーする。まぁ、瑠姫の場合獣人が絡んだ時の行いがあるからね。
獣人は許されたと解ったら直ぐ様、海猫に抱きついた。
「嗚呼、ずっと会いたかった!僕より早く郷を経って、ずっと心配していたの!海猫なんて、いい名前まで貰って、羨ましい!」
雰囲気ががらっと変わったよ、この狼。
1人称だって私から僕に替わっているし。
尻尾が千切れるんじゃないかと、不安になるぐらい振っているし。
それに対して海猫は...
「ま、待って。言いにくいんだけど、誰?」
狼の獣人の事を忘れていた模様。
獣人は、一瞬にして顔から表情が消える。
そのまま、床にヘタっと、座り込んでしまった。
「ぼ、僕の事、覚えないの?」
「うん...ごめんね」
海猫は申し訳なさそうにしている。
そりゃね、わざわざ自分に会いに来てくれた人の事を忘れてしまっているんだから。
「僕は、貴方を追いかけてここまで来たのに...」
「本当にごめんね...わざわざ来てくれたのに...」
俯く獣人。そして必至に謝る海猫。
そんな時だった。何処からか声が聞こえたのは。
「どうしたのさ、あんた達は。ていうか海の家ってここだったんだ」
そこにいたのは白鳥の獣人である巽先輩だった。