コメディ・ライト小説(新)
- #22 じゅり ( No.26 )
- 日時: 2019/03/19 23:32
- 名前: 空巫女 (ID: atRzAmQi)
<#22 じゅり>
「鳥先輩、どうしてここに!?」
海猫が驚きの声をあげる。
声をあげるのは、仕方ない声だと私は思った。
だってね、同じ部活の先輩が、自分の家の側にいたら誰だって驚くからね。
「こら海、鳥先輩やめなさい。昔なら名前が無いなら仕方ないにしろ、今は可愛い義妹に貰った“樹李”っていう立派な名前があるんだから!」
巽先輩は、胸をはって、ドヤ顔をする。
「名前を貰った...?巽先輩って獣人...?」
瑠姫は名前を貰ったのと、“義妹”というワードだけで、巽先輩が獣人だということを当てて見せた。この様に、瑠姫は普段なら頭はいい。
あれ?それ以前に瑠姫は巽先輩が獣人だって事知らなかったのね。
後で解ったんだけど、海猫や葵が有名過ぎて、獣人としての巽先輩の知名度は思ったより低く、知っているのは、ホルンパートのメンバーと、私や紅実等の一部だけだそう。
「あ、それでね。アタシがここにいる理由なんだけど、実はアタシの家ってこのマンションの上の階なのよ」
「「「な、なんだって!?」」」
巽先輩と、狼の獣人以外の声が合わさる。
「せ、せ、せんぱいが、ままま、まさか...」
海猫が凄い狼狽えていた。うん、気持ちは解るよ。
「落ち着きなさい」
「にゃあ」
狼狽えられると、話が進みにくいので、顎を撫でる。すると不思議な事に、海猫は落ち着くのだ。いや、落ち着いているのかは不明だけど、静かになったから良しとしよう。
「へぇ、海ってこうすれば静かになるんだ」
「あ、これは恐らく私がやらないと効果ないです」
「おおう、そうなんだ」
感心する巽先輩に言っておく。
「それで話を帰るのだけど、お盆休みの真最中なのに、なんでこんなに人が集まってるの?」
首を傾げる巽先輩。
「嗚呼、それは...」
私は口を開くも、言葉が思い浮かばずに、そのまま口を閉ざしてしまう。
そして、瑠姫が何か言いかけたのだが、それよりも先に先輩が狼の獣人の薄紫色の髪の毛を弄り始めた。暫くすると、狼の獣人は伸ばしっぱなしの癖っ毛だったのが、2つのお団子結びに。
「あー!貴方、眠り狼っていわれてた紫狼!?」
海猫は、思い出したのか大きな声を出す。
「そう、そうだよ!」
獣人は思い出してもらえて嬉しいようで、尻尾を高速で振っていた。
「もしかしたら眠り狼なんじゃないか、って思ったから髪型を郷にいた時の髪型に戻したらまさか本当に...前はいつも眠そうにしてたのに、今じゃ全然違う...」
髪型を弄った巽先輩は驚いていた。
そして、私も驚きで唖然としている。眠り狼がどんなのかは知らないが、海猫や巽先輩が揃って解らない程違うって凄い...
「あ、瑠姫。そういえばまだこの獣人の名前、決まってないのよね?この際決めちゃえば?」
巽先輩が突然そんな提案をしてきた。確かに名前があれば、雰囲気が変わっても誰だか解るからね。
「そうですね。でも、私名前のセンスが...千影ちゃん程じゃないけど...」
瑠姫、今何て言った?私への悪口があった様に聞こえたのだけど...そんな私の気持ち等知らない巽先輩は、話を続ける。
「そんな時こそ、アタシの義妹に頼めばいいのよ!樹、おいで!」
一瞬柱に話かけた様に見えたが、柱の影から小さな女の子が。いつの間に柱の影に...?
「はじめまして。巽樹、中学3年生です」
自分以外全員年上だから緊張している筈なのに、巽先輩の義妹、樹ちゃんは堂々と自己紹介をした。凄いな。しっかりしている。
「えっと、お話は柱の影から聞かせて頂きました。盗み聞きの様になってごめんなさい。
そして、これは私からの案なんですけど、獣人さんの名前には、自分の名前の漢字を入れるといいと思います」
謝ってお辞儀をしたあと、すらすらと意見を述べる樹ちゃん。ヤバい、この子凄い。
「成る程、...なら、瑠姫の“る”と、狼の“み”で、“るみ”!瑠未なんて名前はどうかな!?」