コメディ・ライト小説(新)
- #25 ほんばん ( No.30 )
- 日時: 2019/03/25 16:53
- 名前: 空巫女 (ID: n8TUCoBB)
どうでもいいですけど、別館のBL、GL板でも小説投稿を始めたした。
タイトルは「たとえ夢であっても」です。
良かったら是非見てください。
あと、この「少女と海猫の少しだけ変わった日常」は海猫達獣人組は性別が無いのでGLでは無いです
以下、本編
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<#25 ほんばん>
「絶対、金賞取って全国いくよ!」
『おー!』
私達は部長を中心に円陣を組んだ後、各自楽器を持って舞台にあがる。
顧問の先生が、審査員の方々にお辞儀をして、式台に立ち、指揮棒を振り始める。
それに合わせて、金管楽器とサックスの音がなり始める。私も、周りに合わせて、楽譜通りにホルンを持っている指を動かす。
曲が中盤に入ると、クラリネットによるソロだ。そこにオーボエが加わり、さらに他の楽器の音色も順番に加わっていって、演奏は最高潮へ。
優しく、美しい演奏が会場を包み込む。
その時、私は今までにない満足感を感じて。
演奏が、楽しくなった。
私達は、県大会より上手くなってる。
それを実感して。
もっと吹いていたい。ずっとこの時間が続いてほしい。そう、思ったくらいに。
千影や先輩が言っていたのはこの事だったんだ。
故郷を出て、見知らぬ世界に一匹で居たところを千影に拾われて。紅実や瑠姫といった人間の友達が出来て。葵や瑠未といった、故郷での友達との再開して。今の私は、まさしくこの演奏の様____
しかし、夢のような演奏の時間はやがて終わる。
先生の指揮棒が降ろされ、演奏は終わる。
そしてそのまま、舞台袖へ。
終わってしまった...もっと、吹いていたかった。
そう思う私に、巽先輩が話しかけてくる。
「その表情だと、まだ演奏したかったのね。うんうん、楽しめたようで何より」
ポンポンと、背中を叩く巽先輩。
しかし、私は何故か、泣いてしまった。
「え、海!?」
「海猫、どうしたの!?」
狼狽える先輩。それに気付き、千影も駆け寄ってくる。
「怖い、怖いの...
今の演奏の様に、私達の生活もいずれ、終わってしまうと思うと、怖くて...」
とても自分の声とは思えない、か細い声。
今の演奏を通じて、演奏する喜びを知った。
しかし、それと同時に、終わってしまう寂しさを知った。
地獄のような時間でも、夢のような時間でも、いつかは必ず終わる。
いつかは郷に帰らなくちゃいけない。
でも、たった数ヶ月の千影達が居る日常が終わると思うと、怖い。
「私もよ」
千影からかけられた、意外な言葉。
千影は私の思いを否定するのでなく、肯定した。
「でもね、海猫。
未来の事を____終わる事を考えているくらいなら、今を見て。時間は限られているのだから、怖がっているより、この今を、大切にしましょ」
「千影ぇっ...!」
私は千影に抱きついた。そして、幼い子供見たいに泣いて。
それを、千影は優しく、慰めてくれたのだった____