コメディ・ライト小説(新)
- <#30 おとまりかい・その3> ( No.37 )
- 日時: 2019/04/08 12:30
- 名前: 空巫女 (ID: n/98eUHM)
<#30 おとまりかい・その3>
時間は少し遡る...
<<葵side>>
「そんで、話って?」
海猫殿の部屋にて。我は千影殿に頼まれたので、話を聞くことに。
「海猫殿、最近何かありましたか?千影殿が心配しておりましたよ?」
我は直球で問うと、少し間が空いた後、海猫殿は小さく口を開く。
「やっぱ、隠せてないか...私ね、大会の時思ったんだ。演奏が終わるように、この生活もいつか終わってしまうって。......だって、郷から出て生活するのは、長くても1年だもん。だから、そう考えると辛くて...」
海猫殿はうつむき、霞んだ声で話を続ける。
うつむいている為、表情は見えないが、きっと泣いているのだろう。
「やはり、その事でしたか」
千影殿に様子を変と言われて、ピンと来るのがこの事しかなかったから。
それにしても、まだ数ヶ月なのに、こんなに千影殿の事を...でも、現実は残酷なのです。
「追い討ちをかけるようで申し訳ないですが、我から...いえ、郷の長から1つ。我と海猫殿の帰りは、夏休み最終日の昼。つまり、明後日の朝にはここを出ないといけないのです」
「嘘...ねぇ、嘘って言ってよ...」
我からの宣告をされると、海猫は涙で顔をくしゃくしゃにして。袖で涙を拭き取るも、また涙が溢れて...
やはり、この事実を聞いた貴方は泣くのですね。もっと早く、この事を伝えるべきだった。
でも、我が告げる事は、実はもう1つある。
我は海猫殿に近づき、小さく囁いて...
「海猫殿。実は、長からの伝言がもう1つ...」
*
<<千影side>>
翌日。
「千影、紅実。突然だけど、明日、私達は郷に戻る事になったんだ」
朝早く起こされたと思ったら、海猫からそんな重大な発表がされた。
「マジかよ...きょ、今日はエイプリルフールじゃないんだぞ?」
紅実は現実を受け止めれないのか、そんな事を聞いている。
「本当だよ。郷が決めたことは絶対だもん」
海猫の言葉と共に、葵が頷く。
そっか...それなら、仕方ないわね。
なら明日は元気に送ってあげよう。そう決意する。
けれど。海猫が居なくなったらこの家には私しか居ない。
学校に行けば、紅実も瑠姫もいる。
それでも寂しい。海猫が居ない日常は考えられないし、考えたくもない。
海猫を郷に送りたくない____
そんな私の考えは、海猫の声によって消される。
「『時間は限られているのだから、怖がっているより、この今を、大切にしましょ』...だよ?千影が言ってくれたじゃん。まだ1日ある。24時間はあるから」
覚えのある言葉を言う海猫。その言葉は大会の時に私が言った言葉。
そうね。まだ1日もある。この1日を大切にしなくちゃ。
「そう、だったわね。私が言った言葉を貴方に思い出させられるなんて」
私がクスッと笑うと、海猫はニコッと微笑んだ。