コメディ・ライト小説(新)

#7 ぶかつけんがく ( No.9 )
日時: 2019/02/23 16:09
名前: 空巫女 (ID: 7z32XAKr)

<#7 ぶかつけんがく>

授業を終えて放課後、16時の音楽室。今は部活動の時間だ。
「あの、桐谷きりたに先輩。今日の16時半頃に私の従姉妹が見学に来ますので、宜しくお願いします」
私はクラリネットの準備をしている3年の先輩に、海猫が来る事を伝える。
「解った。千影ちゃんの従姉妹なら、千影ちゃん同様にいい子だろうから、大歓迎だよ」
私が今話しかけているクラリネットのパートリーダーである桐谷先輩は、快く了解してくれた。
でも、海猫はいい子ではあるけど、従姉妹ではないのよね...獣人っていっても、信じてもらえないだろうけど。

何故海猫が、部活動見学をする事になったのかというと、この高校では部活参加は絶対なので、転校生扱いの海猫も、部活に入らなければいけない。海猫は私と同じ吹奏楽でいいと言ったが、私が一応何ヵ所か見学するようにと、言っておいたからだ。

あれから個人練習をしていると、廊下から足音が聞こえた。
「す、すいません...部活見学に来ました白鳥海猫です...」
扉を開けると同時に、疲れきった海猫が入ってきた。私は指を止め、慌てて海猫の前へ。
「海猫!?どうしたの!?」
「剣道部に言ったら...紅実に叩きのめされた..」
紅実...知り合いだからといって、見学に来た子を叩きのめすなんて...今度説教しなくちゃ。
「ね、千影。疲れて耳とか消しておくの辛い....出したら駄目?」
「駄目。私と紅実以外の人が居るとこでなんか、絶対駄目よ」
「むぅ...」
海猫は駄目と言われて頬を膨らませる。可愛いけど、人前で耳とか出したら面倒になるから、何しようと駄目だけどね。
そして、タイミングを見計らって、桐谷先輩が来る。
「貴方が海猫ちゃんね。千影ちゃんから話は聞いてるよ。私はクラリネットのパートリーダーの、桐谷だよ。ようこそ、吹奏楽部へ!」
先輩はいい笑顔で海猫に話しかけている。この笑顔...営業スマイルみたい。
「あれが白鳥さんの従姉妹!」や「待って可愛い...」と声が聞こえたのは気のせいだろう。
「見学って事だけど、今日は個人練習なんだよね...折角だから体験していく?」
「いいんですか!?」
桐谷先輩の提案に食いつく海猫。
「うん、いい..「ちょっと待ってください。」
桐谷先輩が何か言おうとすると、打楽器パートである筈の瑠姫が割り込んできた。
「あくまで白鳥さんは“吹奏楽部の見学”に来たんですよ?それをクラリネットパートで独占するのはどうかと。見学に来たのだったら、一通りの楽器を見ておくべきでは?
それと、白鳥さんが他の楽器経験者の可能性だってありますし」
瑠姫が先輩、しかもパートリーダーに向かって堂々と話す。流石学級委員だけあって、度胸もある。
「楽器経験は無いです...あと、海猫で結構です」
これが堂々とした瑠姫に対して海猫から出た言葉だった。さて....今日の部活見学は修羅場になりそう..