コメディ・ライト小説(新)

Re: 男子校の生徒会長は今日も男子生徒に告られる ( No.16 )
日時: 2019/04/03 10:21
名前: Rey (ID: NvHaua1/)

三話 生徒会長と学園祭



三限目、四限目と続いた魔導学によってメンタルがボロボロになった玲夜(モノホン)は、ようやく幻惑魔法が解除されて元の姿に戻った隣人をシメながら、昼休み…屋上へと来ていた。
ーーーーそれはもう、言わずもがなのシチュエーションである。
「……なんで俺まで来てんの?要らないよね?」
「いや、告白された後のメンタルケアを頼もうかなぁと」
「メンタルケア…!?………あ、そっか。八神いないから?」
「そ…にしても、屋上の呼び出しは久し振りだなぁ。…少しトラウマが蘇るケド」
屋上には人っ子一人おらず、呼び出し人はあと数分後に来る予定だった。
それも、集合時間よりも早くきてしまうレイの癖である。
そんなレイの隣人君はげっそりとやつれており、スタンバイオーケーと言わんばかりに屋上の屋根に登っている。
側たら見ればヤンキーが授業をサボって寝てるようにしか見えないのは内緒にしておこう。
…ここで、呼び出し人が来るまで高等部一年の頃あった屋上告白のトラウマを掘り返そうと思う。
ーーーーーそう、あの日もこうした天気のいい晴れた日で、今月…六月の、梅雨特有のジメジメ感が少し残った日であった。
勿論の事、呼び出された玲夜は大人しーく待っていたのだが。
……いや、来なかったわけじゃない。
ちゃんと来たのだ、ご本人登場なさったのだが。
その時の告白フレーズが……
「俺、皇さんと付き合わなければここから飛び降ります」
…現に屋上の柵を乗り越えて、フェンスを片手に掴んで、そう言われたのだ。
数秒思考がフリーズして、ようやく事態を把握した………………つまり。
ーーーーー君、それ告白じゃない…………








……………脅迫だーーーーーッ!!!!



サッと青ざめ、飛び降りを阻止しようと伸ばした手は…だが。
「………そう簡単に死なすかよォッ!!!」
"本当に授業をサボっていたヤンキー"が柵に飛び移りその手を引っ張り、鮮やかな救出劇を目の前に繰り広げられていて。
はっと我に帰れば、陸がめんどくさそうな顔で"レイィ……お前あと少しで人殺しだったぞォ…?"と。
もはや何が何だかわからなかったが、とりあえずその殺人罪は免れたらしい、と。
全く手を加えてもないし、言葉も発していないがとりあえず助かったらしい、と。
……飛び降りようとしていた御本人も、何が起こったのかわからず硬直状態だったのは、本当に同情する。
……とまぁ、陸がいなければ本当にスクープになっていたこんなトラウマがフラッシュバックして。
そのメンタルケアと、あわよくば運動神経が良い隣人君に、あの日と同じようにヤンキーのように屋根に登らせて、柵に飛び移れるようにしていたのだが。




「…ぼ、僕…生徒会長の事が好きです!つ、付き合って、とかは言いません…でも、友達…になってください…ませんか…?」
ただただ時間通りに来て、ただただ可愛らしく髪をいじりながら、ただただ、普通に告白された。
むしろ、こんな普通の告白が最近無かった気がして、少しホッとした。
「うん、恋愛的な目では見れないけど、友人としてなら、ウェルカムだよ。改めて、皇玲夜、高等部生徒会長だけど…出来れば玲夜って呼んでほしいかな」
「っ!はいっ!玲夜先輩!僕はひいらぎ冬馬とうまです!高等部一年【アインス】です!」
「あ、やっぱり?どうりで見たことあるなぁって………君、"ホワイトタイガー"君でしょ?」
「はわっ……わかっちゃいました…?」
…三限、四限目の授業を思い出して、苦い思いで対応するが、目の前の…冬馬は、まんざらでもないようで。
「僕、あの時の先輩…友達から写メ送ってもらったんです。ほら、待ち受けに!」
「出来れば消して欲しかったなぁなんて」
「するわけないじゃないですか!これ僕の家宝ですよ!」
「………そっか(ツッコミ放棄)」
それはもう素晴らしい笑みで携帯の待ち受け画面を見させられても…と。
しかもその画像は猫耳の生えたレイの写真である。
俯きがちに、けれど黒い髪の中から見える人間の耳は赤く染まっていて、完璧に照れてるのが丸わかりだった。
第三者として、改めて見ると明らかなる照れで、こちらまで赤くなりそうだ。
…まぁ自分だし。
今更だが、魔導学は高等部全生徒の授業であり、アインスだけで一年から三年までのアインスが合同で行う。
「…あ、もう降りてきていいよ、隣人君」
「へーい……よっと」
軽く忘れていたが、視界の端でヒラヒラと手を振られ、屋根に登っていた隣人君に降りて、と呼びかける。
すると、やはりいるとは思わなかったであろう、冬馬。
「あれ!?な、へ!?ヤンキー!?」
携帯を素早く胸ポケットに入れ、重心を低くし臨時体制を…だが。
「じゃない。俺は生徒会長のメンタルケア係(代理)だ」
食い気味に否定してみせた隣人君……その顔をよく見て、冬馬は''あ、玲夜先輩になってた人?"と訝しげに目を細めた。
「よし、とりあえず昼休みも終わる頃だし、教室に戻ろっか。隣人君も、巻き込んでごめんね」
「いんや、別にいいよ。魔導学の借りって事で」
トン、と屋根から飛び降りた隣人君は、軽やかに着地して、クルクルと屋上の鍵を回し。
「次…五、六限目ってあれだろ?……文化祭の、出し物決めるあれだろ?」
………………ヒュ〜〜〜…………
屋上だからか、少し強い風によって前髪がパサパサとはためき、レイはすぅ……と。
「…そ、だった………遂に、きたのか……地獄の、『リンドウ祭』が………っ」
口から魂がフヨフヨ〜と飛び出したように天を仰いだ。
はぁ、と隣人君がため息を、え?と首を傾げた、冬馬君と。
「あ〜…柊よ、お前編入生か。でもリンドウ祭は知ってんだろ?」
「あ、はい。リンドウ学園の"文化祭"ですよね。…でもなんで玲夜先輩あんな死にそうなんです?」
「…ん〜……なんて言えばいいかなぁ。とりあえず、生徒会長からしたら本当に地獄なんだわ」
「……はぁ……?」
まだピンときていないようだが、これ以上文化祭…『リンドウ祭』の事を掘り下げると、地獄耳を持つレイの魂が本当に天に召される気がしたのでやめておく。
寒くなってきたし、戻ろうぜ、と抜け殻になっていたレイの背を押して、モヤモヤしたままの冬馬を隣に、ひとまず告白イベントは終了した。




「……はい………まぁた、来てしまったな…リンドウ祭が………」
「本当、リンドウ祭なんて無かったらいいのに」
「ちょっと生徒会長もネガティブモードになってんだけど。和葉先生と混ぜたら危険でしょこれ」
死んだ魚の目のアインス担任、斎藤さいとう和葉かずはと、同じく死んだ魚の目の生徒すめらぎ会長れいや
誰かが混ぜたら危険とか、そんな危険な薬物のような扱いをした気がするが、そんな事スルーするようで。
「…いちおー、候補聞くぞ〜………はい、なんかやりたいモノありますかぁ……」
チョークを片手に背後に問うた声に、はい!と元気よく手を挙げた一人が、
女装メイド喫茶ッ!」
「はい却下」
「生徒会長ぉ!?」
案の一つを提案するも、バッサリ切り捨てたレイによって涙声に変わったが、担任は全く気にせずにチョークを削って。
「……………喫茶店、と」
黒板に白く、"喫茶店"と書いた。
「あ、ならお化け屋敷とか?」
「それは他がやんだろ………俺らしか出来ねーことやろーぜ?」
「となると…周りと違う要素って言えば玲夜しかいないよね。…でも」
一斉にレイの方へと向けられる視線は、けれどムッス〜とふくれっ面によって四散した。
絶対にリンドウ祭に参加したくない、という意思表示だが、担任、和葉は問答無用、と。
「………どうせ、高等部門の『女男装コンテスト』に出るんだろせーとかいちょー……メイド喫茶でも変わらないだろー……」
「変わりますよ?ってかまたアレ出るんですか!?嫌ですよ絶対出たくないからな!?」
「いや皇出なかったら誰出るんだよ………女装枠は皇でいいとして、男装枠だが……」
「話進めんなぁ!!」
もはや出し物の話からも脱線している。
まとめ係のレイがボケに回っているようなもので、現状、ツッコミ役は誰一人としていないらしい。
嫌だ、だのふざけんな、だの喚いている生徒会長(笑)をスルーして、ひとまずこのリンドウ学園における文化祭…すなわち、リンドウ祭の詳細を。
リンドウ祭は他の学園における文化祭とは違い、規模が大きく、なおかつ三日続けて行われる一大イベントの一つ。
初日に中学部が文化祭の出し物を出し、構内一色中学部になって高等部と大学部はお客さん係(強制)だ。
ちなみに、二日目ならば高等部、最終日は大学部となる。
勿論、保護者や地域の方々の来訪もあるため、このリンドウ学園には人がてんやわんや。
そんな中、各学年の日程に必ずあるもの…それが、アインス担任の斎藤和葉も言っていた『女男装コンテスト』
略して、ジョダコン。
大体察するが、この学園は一貫して男子校…共学校とは違い、花が無いと思われがちだが、それは男子校の意地で。
"無いのなら作ればいいだろ華やかさ"と。
信長、秀吉、家康も呆れ笑いするであろう五七五を詠いあげた……つまりは。
男装でイケメン感をアップさせ!更に元々顔が良い人を女装させればぁあら不思議ッ!
側から見ればラブラブカップル(テーマによる)が出来上がりぃ!!


…それが、ジョダコンである。
レイが嫌々と首を振るわけも大体わかるだろう。
………つまりは、まぁ……そういうことだ。
しかも、毎年変わるおテーマは生徒会が決めたり…。
ネタバレになるから嫌だby陸
そんな意見もあったりしたが、レイが
「いや、お前まだ生徒会入ってねぇだろ」
ポツリと言ったこの言葉により、あ、そっかと当時の陸(高一)は引き下がったが今回はそうもいかない。
………と、思ったが今日陸休みだった。
「…え〜……それじゃ、もうこれでいいよな……せんせーもう疲れたよ…………」
「異議ナーシ!」
「おっしゃ!なら六限目から作業開始だ!」
ほとんど意識が上の空だったレイだが…どうやら、決まったらしい。
なんとか、マトモな出し物であって欲しいがーーーーーー。



「…………んじゃ、この"グリム童話喫茶"で…けってーい……」
「ちょちょちょちょ待て待て待て待て」
「……せーとかいちょー…もう待ては使えないぞー…………」



考える前に声が口から溢れていた。
いや、結局喫茶店かよ、いやそうじゃない。なんだグリム童話喫茶て。それ、女装メイドと何が変わらないの?と。
原点回帰していた出し物の案に物申す生徒会長をジト目で見る担任。
それは、周りからも似た目だった。
「玲夜……もう、諦めろ。な?」
「決まったことだし…ねぇ?」
「生徒会長の女装………うぇへ、へへへ、えへへへへぇ………」
「おいコラ最後!携帯の容量開けるために保存してた写真とか消すんじゃねぇよ!!あと笑い方!!」
諦めと悟った色、妖しくキラリと光った色、そして絶対良からぬことを考えている色、と。
まさに十人十色……いや、せめて反対の意見をだな…?
さまざまな色がある中で、唯一反対の色を宿している目は、レイの海色だけだったのが予想通り、と。
「…はぁいけってーい……なら、後はジョダコンのしゅつじょーしゃだなー………」
断固拒否するというレイをあっさり切り捨てて、書類に書き込んでいく担任。
…それは、ジョダコンの出場者、女装枠に"皇 玲夜"とも書いていた。
「一人(女装枠)は会長で、男装枠は誰やんの?」
「ねぇなんで俺の意見ガン無視するの?」
「顔がいいなら"隣人"でいいんじゃね?」
「これ新手のいじめ?なぁ俺いじめられてんの?」
「え、俺やるの?男装…って要はコスプレだろ?俺に似合わないと思うけど…」
「…ダメだこいつら全然俺の話聞かねぇ」
「女装もコスプレだろ…明日テーマ決まんだったら男装枠は明日決めてもいいかもなぁ」
「…………もういい。俺はもう寝る」
「あ、玲夜が不貞寝し始めた。また写真会出来るねこれ」
「あーあー何も聞こえな………………おい待て写真会ってなんーーーー」
「よっしゃこれでジョダコンも終わり!って事でグリム童話喫茶のメニュー考えようぜ!」
…流れるようにスルーされまくったレイの末路は。
ただ、自分が不利な状況下に置かれると何が何でも話を聞いてはくれず。
そして、授業中に寝れば、その寝顔が皆の携帯に保存されていた、という…謎の倦怠感の原因を知った事と…。
そして、レイの隣の席にいる生徒こと隣人りんとがジョダコンの男装プリンス枠として出るらしい、という…つまりは女装枠確定(絶望)という………まさに、現実逃避ものの現実リアルだった。





…………………陸のお休み連絡届けないとなぁ(白目