コメディ・ライト小説(新)

Re: 男子校の生徒会長は今日も男子生徒に告られる ( No.6 )
日時: 2019/03/19 12:12
名前: Rey (ID: NvHaua1/)

五話 生徒会長は部活でも



盛大な拍手と共に冷やかしの声までも聞こえる【雪月花】。
レイはいつも一発で全てを決める、という一撃必殺のようなスタンスを取っている為、一つのパフォーマンスを終えたら裏へと回る。
今回も、一礼してフィールドを後にしようとした、その時だった。
「れ、玲夜!」
ガッと肩を掴まれ、何が起きたか、ぽかんと口を開けて目の前の人物を見つめるレイに。
「頼む、俺のパフォーマンス…見てくれないか」
確か、高等部三年の先輩、クラスツヴァイの生徒だった筈だが、その先輩が"やけに熱のこもった目"でこちらを伺っていた。
ーーー俺の悪い予感、当たったんじゃね?
もはや展開が読めたので帰りたい、と切実に思うが、ここで拒否ればブーイングが飛びそうなので。
「はぁ…わかりました、見ますよ、先輩の演技」
渋々、彼の誘いに乗った。
パァッと花が咲いたように笑う先輩に、"ああ、またか"と疑念が確信に変わる。
意気込んでポイントに立つ、道着姿の先輩の背を見ながら、レイは思う。
きっと、先輩は俺がはいと言うのをわかっててパフォーマンスを見てほしいと言っている。
ーーーそれが、告白とは何の関係性もない事を願うが…………。
先輩の青い弓が光を放ち、再生された的を撃ち抜く。
レイ程ではないが、数々の魔法陣を展開して、この空気が重くなるような、独特の雰囲気を肌で感じる。
ーーーーーバンッ!
突如、一際大きな音を立てて的を撃ち抜いた矢が破裂し、光を伴う。
それに魔法陣が反応、そして風や水…光を纏い、矢の爆風を躍らせた。
レイのパフォーマンスを見た後ではなんともやり辛いだろうが、それでもレイとは違うパフォーマンスの仕方で、部員は勿論ファンの皆様も魅入った。
ーーーーが。
「ぬぁんだとぅ!?アヤツ!やりおるぞ!?」
「ぶ、部活を利用して…いや違う!俺らが見ている中でのパフォーマンスこそ狙いかッ!?」
「成る程その手があったか…」
ファンの中で、賞賛、嫉妬、そして怒りに塗れた声が次々と上がった。
………かく言うレイすら、思わずため息が零れたのだが。
ーーー成る程、確かにこれは予想外だった。
まさか…。


「…演技の最中に…クライマックスで告られるとは……」


光を反射してプリズムに光るその文字は。




ーーー玲夜、好きです、と見えた。




それも、大きな字で。
【雪月花】の上空まで見える、そのパフォーマンス(告白)は、きっと文化部は勿論、他の部活の生徒も見えているだろう。
太陽光が入る入射角と反射角を全て計算し尽くした、その文字は。
ユラユラと揺らめきながら、静かに消えていった。
ーーー弓を静かに下げて、先輩は振り向き。
「……これが、俺の最大のパフォーマンスだ。玲夜、付き合ってくれなんて言わない。ただ、これが言いたかっただけだ」
少しだけ、悲しそうに笑った。
けれど、その表情はとてもスッキリしていて、レイにはそれがハッキリとわかった。
「………先輩」
これで俺のパフォーマンスは終了だ、と裏方へと消えようとした、先輩の手を取って。
レイは、静かに言った。




「先輩、俺に好きとは"言ってない"ですけど」