コメディ・ライト小説(新)

Re: 男子校の生徒会長は今日も男子生徒に告られる ( No.9 )
日時: 2019/03/20 13:49
名前: Rey (ID: NvHaua1/)

二話 生徒会長は料理上手


「と、とりあえず…飛鳥、お前一旦下に降りろや。ロクに飯食ってねェんだから」
「えぇ……でも、まだクエストが途中…」
「飛鳥、俺からも頼む、その画面早く閉じて欲しい。俺のメンタルが死ぬ」
「………………わかったよ…」
「おい飛鳥ァ…」
実兄(陸)は拒否して、レイの願いは聞くようで。
渋々ディスプレイをシャットダウンさせる飛鳥に、恨めしそうに睨む陸はほって置いて。
「…そいや、急にお前来たけどよォ。親は平気なのかァ?」
…いや、ほっておけない事を言っていたから構って。
「あ、忘れてた。…うわ、不在着信8件……」
「それ、だいぶマズイじゃないかい…?」
「昔っから、レイの親御さんは過保護だからなァ…」
カバンから携帯を取り出せば、不在着信8件の文字に、あからさま顔をしかめる。
陸が言う通り、レイの親は過保護中の過保護であり、何処へ行くにもGPSというモノがつきまとう。
まぁ安心安全な事に変わりはないのだが。
陸の家にいる、ということは最先端技術のおかげでわかっているだろう。
なので、この不在着信のコールは……。
「悪い、少し電話してくる」
「おー」
大体察しがつくが、このまま二桁を記録わけにもいかないので、廊下に出て"母"の名前をタップした。
ーーーーprr『玲夜!?貴方今日陸君の家にお泊りするつもりかしら!?』
「いや早い……」
…ワンコールもせずに電話に出た過保護な母に、レイは呆れを含んだ声色で言う。
いや、まぁそんな気はしてたけども。
『晩御飯作る前で良かったわ!それで?泊まるの?泊まらないの?』
「ん〜、どうしようかな。あ、今日の晩御飯次第で」
『貴方ねぇ………今日はハンバーグよ?』
「泊まる」
『……………言うと思ったわ………』
バッサリ切り捨てたレイの晩御飯事情、その一。
レイは、スイーツがとても好きだが、肉が嫌いである。
母が言うハンバーグは90%が豆腐のいわゆる"豆腐ハンバーグ"なのだが、それすらも嫌うという。
本人曰く"肉なんざ獣臭くて食えたもんじゃない"だそうで。
『まぁいいわ。とりあえず、陸君と飛鳥君によろしく、それとお世話かけますって言っておいて?』
「はいはい、わかってるよ………それじゃ」
『ええ、また明日!』
ツー、ツー…と電話が切れた事を確認して、レイは真後ろにある部屋のドアノブに手をかけ。
「…大体理解出来た?」
と、一言。
すると、帰ってきた言葉は。
「おー。今日泊りだろ?服は俺の貸すわ。そのかわり、飯よろしくゥ」
「久しぶりだね、レイがここに泊まるの。ねぇ、一緒にゲームしよう?」
ーーーー筒抜けだった、とイタズラな笑みを浮かべた、二人の嬉しそうな声だった。
「料理担当、やっぱ俺か。んで飛鳥、絶対俺負けるぞ?天下のチャンピオン様に勝てるわけねぇだろっての」
対するレイは少しゲンナリと。
別に料理が出来ないわけではなく、逆に母から根気強く教えられたおかげで出来る系男子な部類だが。
ゲームに関しては、全く歯が立たないのは明瞭だ。
が、キラキラとした目でこちらを見る飛鳥……リンドウ学園高等部"一年"クラス【ドライ】の、"後輩"の目に弱いレイは。
「…わかったよ……そのかわり、手加減してくれよ?」
最低限の力でやってくれ、と。
切実な願いを口にした。
ーーーーが。
「え?ゲームで相手に手加減する…なんて。そんな相手を侮辱するような事、ましてレイ相手にするわけないだろう?」
ーーーーーーどうやら、飛鳥はとんでもなく腹黒いらしい。
隠れドエスという代名詞が似合いそうな、ニヤリと細められた赤い目は。
………正直、吸血鬼のようで、"死んだわ"と内心白目を剥いて倒れさせるのには十分で。
「ぷっ…ふふッ……ど、ドンマイ、レイ…アハハッ!」
飛鳥の隣に座っていた陸にとっては、それがとんでもなくツボに入る出来事だったようで。
「…飯作んないからな」
「「ごめんなさい」」
静かに、料理放棄を宣言すれば仲良く仲直りしたドS兄弟。


ーーーーーご飯って、偉大だなぁby玲夜




そうして、レイの晩御飯クッキングが始まった。
といってもドS兄弟こと八神兄弟は上でゲーム対決をしているようで、全く知らないからレイが独りでに始めた独自コーナーだが。
…深夜テンションに入ってるのは置いといて。

「…あ〜、何作ろ。…オール5日か、身体に優しいやつ………酢和えとかか?肉は俺が嫌いだが…陸は肉食だからなぁ……マスクマスク」
ブツブツ呟いて…というかほぼ普段の声量だが、独りでに喋っているところをリンドウ学園の生徒が見れば二度見するだろうこの光景。
だが、意外とレイはそういう性格である。
温厚でありながらキレると怖い、それでもって物事に集中すると独りでに喋ってしまう、そんなタイプなのである。
だからこれが彼が集中している、という合図のようなものなので、スルーしておこう。
ーーーースチャ、とマスクを装着したのは、衛生的な面で着けたのではなく、ただ肉を焼く時の匂いなど、"そういう"用途のためであり。
ビニール手袋も然り。
よしっと力強く頷いて、レイは陸が買ってきた大量の肉の一つ、鶏胸肉のパックを取り出して、ビリビリとラップを外す。
眉をひそめるレイだが、ここに泊まらせてもらう以上、作らなければ何も始まらない。
そういえば、八神兄弟の親からの了承はいいのか、と思う人がいるだろうか。
その回答としてはーーーー。


二人の親は、他界している、という事だ。




なので、ここ八神家にお邪魔して家事を手伝う事自体、珍しい事でも何でもない。
だからこそ、レイは料理を母に教えてくれと頼んだわけなのだから。
ちなみに、今日の献立はというと、レイが初めて作った海外料理であり、初めて二人に振る舞った料理である。



ーーー今日の晩御飯の献立は、シンガポールチキンライスと、サムゲダン、きゅうりともやしの中華風酢和えサラダ


そして、それらの献立が、ガッチリ兄弟の胃袋を掴んだのは言うまでもない。