コメディ・ライト小説(新)
- Re: 空飛ぶ島の冒険家 ( No.6 )
- 日時: 2019/03/30 15:41
- 名前: azuno* (ID: s00TEuml)
ドリッテ島。一人の少年は島の中でも有名だった。顔の右上半部には
火傷の痕がある。
おばさん「あらクレインちゃん今日も魔物退治お疲れ様」
クレイン「はぁ…」
お婆さん「お姉さんのお世話もして偉いねぇ」
クレイン「いやそんなことは…」
一方ユニたちも同じ道を歩いていた。
ミーニャ「賑わってるわねぇ」
ゼロ「そうだな」
???「皆さん観光に来た冒険家の方ですか?」
車椅子に乗った長い黒髪の女性は声を掛けた。
ユニ「はい確かに冒険家です」
???「まぁ!素敵です。私サラっていうんですけどね、良かったら
色々お話聞いても良いですか?」
ゼロ「あ、でも俺たちまだなったばかりですけど…」
サラ「そうなんですか?ごめんなさい私ったら…。私、弟がいるんですけどね
冒険家に憧れてるんですよ。でも私のせいで夢も諦めてしまって」
ユニ「何か病気ですか?」
サラ「いいえ怪我です。といっても事故なんですけどね」
サラは器用に車椅子を操作する。
クレイン「姉さんソイツら誰?」
現れた少年はユニたちを怪しんでいるようだ。警戒されていることは
すぐ分かった。
ミーニャ「アタシたちは冒険家よ。アタシがミーニャでこっちはユニと
ゼロ貴方はサラの弟ね?」
クレイン「…用が無いなら他に行け」
サラ「ま、待ってクレイン。この人たちを歓迎しましょう?」
クレインは渋々頷いた。
- Re: 空飛ぶ島の冒険家 ( No.7 )
- 日時: 2019/03/30 17:30
- 名前: azuno* (ID: s00TEuml)
ユニ「ここで二人暮らしをしてるんですか?」
サラ「えぇ私はこんな体だし両親も幼い頃に死んでしまった。その時
からでしょうクレインが変わったのは…」
別の場所でクレインの腕に深く注射器の針が刺さる。中には暗い赤色の
液体が入っている。これを体内に入れることになったのは一週間前、
フードを目深に被った男ライアルにある条件を持ち込まれた。
ライアル「俺は黒の王の幹部ライアルだ。なぁちょっとこれを使ってくれ
ないか?勿論タダでとは言わない。金ぐらいなら払ってやるさ」
今のクレインに必要なのはとにかく生活を安定させること、それには金が
必要不可欠だった。その要求をクレインは鵜呑みにした。
少なからず彼自身も気付いていた。この液体は闇、自身を操り何かを
しようと企んでいる。それでも彼との契約で姉だけは助けられると
いうことになり自ら望んで液体を体内に流し込む。その度に破壊衝動に
狩られ、その衝動を森に住まう魔獣で発散させている。
クレイン「これも…姉さんを…!」
ユニ「あの…これって」
サラから渡された橙色のリングを見てユニは訊いた。
サラ「貝殻を拾いに行ったときに拾ったの。なんか綺麗だったからね。
良かったらどうぞ」
ミーニャ「え?大事な物じゃないの?」
サラ「私には弟がいます。彼ほど大切なものはありませんよ」
ライアル「クレインその注射ちゃんと打ってくれてんのか。感謝するぜ」
クレイン「ライアル…何の用だ」
ライアル「良い仕事を用意した」
渡された依頼書に載っている写真は―。
- Re: 空飛ぶ島の冒険家 ( No.8 )
- 日時: 2019/03/30 18:01
- 名前: azuno* (ID: s00TEuml)
朝になりキッチンではクレインが料理をしていた。
ゼロ「いつもクレインが料理してるのか」
クレイン「姉さんは歩けない。もう少しキッチンが低ければ姉さんでも
料理は出来るがこの高さじゃ大変になる。だから俺がやってる」
クレインは黙々と手際よく料理を皿に盛り付ける。
サラ「クレインいつもありがとう。ごめんなさいね迷惑ばかり…」
クレイン「別に感謝も謝罪もいらない」
ユニ「クレインはいつもどんな仕事をしてるんですか?」
クレイン「魔獣討伐とか護衛とか…」
朝食を食べ終えクレインは早々に上の自室に行った。彼から何かを感じた。
黒い闇のような…それは姉であるサラも感じ取っている。この島の何処かで
水色の慈愛のリングは光を放っている。そして微かに橙色のリング、
寛容のリングが光を放っていた。
依頼書にはサラが客として連れてきたゼロとユニの名前があった。
ライアル「その二人、最低ユニを殺せば欲しいだけ金を払ってやるよ」
ライアルはフードの下で笑みを浮かべる。クレインは頷いた。
クレイン「(殺すのは…今日だ…)」
クレインはユニを呼び出した。人があまり寄ってこない進入禁止の場所だ。
ユニ「あのクレイン、ここは入っちゃダメな場所では…ッ!!?」
ユニは後ろに避ける。目前を大きな鎌が通り過ぎる。その鎌を握るのは
クレインだ。身の丈程ある大きな鎌を片手で器用に操る。
クレイン「お前、プリーマ島にいたっていう聖女なんだろ?早くその力を
使って俺を殺してみろよ」
ユニ「どうしてそれを…!!?」
- Re: 空飛ぶ島の冒険家 ( No.9 )
- 日時: 2019/03/30 18:38
- 名前: azuno* (ID: s00TEuml)
サラ「ゼロさんミーニャさん、クレインが何処にいるか知りませんか!?」
ミーニャ「大変!ユニもいないわ!!」
ユニとクレインがいないと部屋では全員が慌てている。部屋を駆け上がり
クレインの自室に足を踏み入れる。机に置かれた一枚の依頼書には
ゼロとユニの名前が書かれていた。
ゼロ「ユニを殺せば…望む金を報酬として出す…!?」
サラ「そんな…クレイン、どうして…?」
結界を張ったままユニはひたすら耐えていた。
ユニ「(あの大きさ、結構な重量はあるはずだけどクレインはそれを器用に
身体の一部のように扱っている。それだけ鍛えてるってことになる。
威力もかなりあるし結界も長くは持たない)」
クレイン「お前を殺せば…お前が死ねば全部終わるんだ。この仕事を
終わらせれば俺はもう解放されるんだ!姉さんも幸せになるんだよ…!」
ユニ「…これはお姉さんサラさんのため?」
結界が緩んだ。クレインが隙を狙い鎌を振り下ろし結界が砕けた。
ユニ「間に合わない!!」
サラ「待って!!!」
鎌がピタリと止まる。クレインはゆっくりと視線を声がした方向へ向ける。
哀しそうに見つめるサラとユニを心配して来たらしいゼロとミーニャ。
サラ「もうやめて…貴方のそんな姿は見たくないわ!今のままでいいの、
私は辛く思ったことなんて一度も無いのに…」
クレイン「ッ…ッ―!!」
クレインの耳にライアルの声が聞こえた。
ライアル『いいのかぁ?本当に。姉さんはそう言ってるけど諦められない…
そうだろう?』
黒い魔力がクレインからあふれ出る。
- Re: 空飛ぶ島の冒険家 ( No.10 )
- 日時: 2019/03/30 18:55
- 名前: azuno* (ID: s00TEuml)
右目は黒眼黄瞳、顔の右半分に赤い紋様が浮かび上がりクレインは
不気味な笑みを浮かべていた。
サラ「クレイン…?」
ゼロ「サラ!」
クレイン「ドケェェェェェェェッ!!!!」
クレインはゼロに飛びかかる。間一髪ユニの結界で守られた。
ユニ「寛容のリングの加護!」
結界は桃色から橙色に変わり変形する。鎖状になりクレインを拘束する。
ユニ「大地に眠りし慈愛のリングよ主の声を力を感じたのなら姿を現し
力を貸せ!」
水色のリングがユニの掌に乗る。その水色の光がクレインを包む。
拘束から逃れたクレインが頭を抱え苦しむ。
クレイン「い、嫌だ…嫌だ!!!お、俺が生きてたら姉さんガァ…」
ガックリと膝を折り四つん這いになり嘆くクレインにサラは寄り添い
背中を摩る。
サラ「気に病むことはありません。さぁ帰りましょうクレイン」
クレイン「え…?」
ユニ「じゃあじゃあ帰りましょう帰りましょう!」
ミーニャ「あ、でも目的は達成したからそろそろ私たち島を出ることに
なるわね~」
翌日の朝、海岸。
クレイン「その…あ…迷惑、掛けた…」
ユニ「気にしないで。生きてるんだからオッケーオッケー!」
ゼロ「じゃあ元気でなクレイン、サラ!」