コメディ・ライト小説(新)
- Re: 空飛ぶ島の冒険家 ( No.22 )
- 日時: 2019/04/02 16:49
- 名前: azuno* (ID: s00TEuml)
ゼロ「ここがロクサキ島か…」
ミーニャ「てっきりユニはプリーマ島出身だと思ってたわ」
ユニ「途中で引っ越してきたんだよ。で、すぐにゼロと会って仲良く
なったの」
季節も相まって風が吹く度に桜が降る。
???「何でェ何でェ誰かと思えば久し振りに見た顔だなユニ」
藍色の和服を着たべらんめえ口調の男はユニに手を振る。
ユニ「久し振りですランマルさん!」
全員の自己紹介をパパッと終わらせた。
ランマル「お前さんたちユニの友だちだったのか、そりゃあ良かった。
そうだ…神社に行くか?」
ユニは大きく頷いた。
ランマル「そういやぁアイツがお前に会いたがってたっけなぁ」
ユニ「アイツ?って…?あ、ランマルさん。流石にもう借金はないですよね?」
ランマル「テメェ!言うなバカ」
長い階段を無事に上り終え鳥居を潜るとそこには真っ白な髪をした男が
縁側に座っていた。
ランマル「ツキカゲ~巫女さんの登場だ」
ツキカゲ「お帰りユニ様」
ツキカゲが元の妖狐の姿になる。真っ白な九本の白い尾、左目は青から
黄色に変わっていた。妖怪たちの悪事を制裁する一家が引っ越し
共に巫女であるユニも神社を去るとき彼女の母は自身が一番信頼する妖狐
ツキカゲに神社を任せた。
ミーニャ「じ、獣人!?獣人って人間に変身できるの?」
ランマル「いや獣人とはまた違う。妖怪と言ってな、ツキカゲは九尾狐だ。
力の強い妖怪は人間に化けることができる、だろ?」
ツキカゲ「全部説明しちゃったな…それと大きくなったなユニ様」
- Re: 空飛ぶ島の冒険家 ( No.23 )
- 日時: 2019/04/02 19:41
- 名前: azuno* (ID: s00TEuml)
暗い夜道に誰の耳にも届かない悲鳴が聞こえた。だが声を上げた人間は
いない。その代わり人間を襲った鬼がいた。口の周りを舌で舐め回した。
???「…コイツも大した力は持ってなかったか」
赤髪の鬼は歩き出した。
城のミカドの妹サヤは神社にやってきた。
サヤ「ランマルはん、おる!!?」
ランマル「何でェ急に。うるさいぞサヤ」
サヤ「し、仕方ないやろ!とにかく手を貸して、もう私の言葉も聞いてくれへん。
もう怒ったんや!!」
ゼロ「とりあえず色々教えてくれ。何があったんだ」
互いに軽く自己紹介し彼女は話し始める。ミカドは黒曜教団と繋がり
鬼たちを従わせているようだ。
ツキカゲ「本当に鬼を従わせているのか?」
サヤ「嘘とちゃうで。うち、ちゃんとこの目で見たんや」
ランマル「まぁでも俺たちにも妖怪はいるじゃねえか。妖狐がな」
全員の視線がツキカゲに集まる。遅れてサヤもツキカゲを見た。
サヤ「ツキカゲはん妖怪なん?」
ツキカゲ「うん妖狐、だね。俺が鬼に勝てるのは術だけだ。否、相手に
よっては力尽くで術を破っても可笑しくないかもな…」
ミーニャ「あら?ここにも鬼がいるのね~…やっぱり鬼って力持ちなの?」
ツキカゲ「術を扱える者は少ないが筋力は人間の何倍もある。肉弾戦に
持ち込まれたら分が悪いな」
- Re: 空飛ぶ島の冒険家 ( No.24 )
- 日時: 2019/04/02 21:32
- 名前: azuno* (ID: s00TEuml)
翌日、神社に一人の鬼が姿を現した。
???「ほぅ…お前さんかい?帰還した巫女ってのぁ」
ユニを鬼はマジマジと見つめる。
ミーニャ「ま、まさかコイツも操られてるの…!?」
???「操られて殺せって命令されてたら悠長に会話なんざしちゃいないさ。
俺はサカズキって言ってな、鬼をまとめてた鬼の長さ。俺も部下に色々
追われててな。深手を負っちまったんだよ」
ゼロたちはサカズキの全身を見る。傷一つ無いように見える。
サカズキ「負った、過去形さ。回復力には自信があるんでな。そこで
取引しないかい?お前たちの味方になってやるよ見返り無しでな」
ランマル「オイオイ本気かィ?」
サカズキ「俺は嘘は大嫌いでね。一度宣言したからには嘘は言わない。
鬼に二言は無しさ。それに俺が協力してやるって言ったのはそっちの
嬢ちゃんにだから…どうするんだい?俺の言葉を嘘とみるか真実とみるか」
ユニは少し考える。嘘を吐いていないと断言できるわけじゃないが
相手は未知数、彼が入ってくれれば百人力という奴だ。
ユニ「分かった信じてみる。これからよろしくね」
城にはすでに黒曜教団の幹部と王の後継者自ら出向いていた。
シュバルツ「チェリベ、何を呆けている?」
黒いケープを身に着けた青年チェリベは我に返り一言謝る。
シュバルツ「俺たちのすることは奴らに絶望を与えることだけだ」
チェリベ「そう…ですね」
- Re: 空飛ぶ島の冒険家 ( No.25 )
- 日時: 2019/04/03 09:20
- 名前: azuno* (ID: s00TEuml)
サヤは朝早く目が覚めてしまった。他はまだ眠っている。だがたった一つ
誰もいない布団があった。サヤは起き上がり辺りを見回した。縁側に座っている
サカズキがいた。
サヤ「(何してはるんやろ…)」
そこでサヤは驚いた。サカズキは自身の手首に噛み付いた。思わず声が出て
サカズキもサヤの存在に気が付いた。
サヤ「飢餓感…そんなのあるんか…」
サカズキ「ここにいれば落ち着くとは思ったんだけどな~。まぁ驚かせて
悪いな嬢ちゃん、このことは秘密にしてくれ。あまり心配されるのは
嫌でな」
日も高く昇り既に全員が起床している時間になった。仕掛けるのは今夜
夕方になったら移動し始める予定だ。
サカズキ「ユニって言ってたな。狐、お前はもしアイツに一緒に旅を
しないかって言われたらついていくのか」
ツキカゲは首を横に振る。
ツキカゲ「行かない、そう言うと思う。俺はここを守るように命令
されている。背くことは出来ないさ」
サカズキ「ならこれから時々来てやろうか?ここの眺めは最高だからな」
酒を注いだ盃に桜の花弁が浮いた。それを気にせずサカズキは酒を飲んだ。
階段に座り込みサヤとユニは会話していた。
サヤ「ユニはん元々はこの島に住んでたん?」
ユニ「うん、お父さんの仕事が冒険家でね。プリーマ島に引っ越したんだよ」
サヤ「そうやったんか~…通りで苗字がこの島らしい苗字で」
サヤは言った後から何度も頷いた。
- Re: 空飛ぶ島の冒険家 ( No.26 )
- 日時: 2019/04/03 10:15
- 名前: azuno* (ID: s00TEuml)
夕方になり階段を降りて城を見据える。ここは城下町、城まですぐだ。
ミーニャ「ってあら?ランマルは…?」
サヤ「やることがあるゆうてどっか言ったで?」
大きな足音が聞こえる。大人数の足音だ。
サカズキ「お前ら構えろ!奴らは鬼だ」
サヤを守るように全員が彼女の前に立ち構える。
ゼロ「行こう!皆!!」
全員が地面を蹴る。ユニは弓を引いた。その矢は鮮やかな緑色の光を
纏っている。サカズキは鬼を殴り飛ばし一直線に飛ぶ緑の矢を見つめる。
サカズキ「(これも巫女の力かい…)」
ツキカゲ「(不味いな…数が多い…)」
このままでは此方がやられることをツキカゲは勘づいた。遠方から数十人の
足音が聞こえた。鬼とは違う。この足音は妖怪とは違う。
ランマル「悪ィ!間に合ったか!?天下の大将軍様のお通りだ、退きやがれ!!」
ショウグン「ったく大きな顔して…やらないときはとことんやらねえ癖に
良いところばっかり取っていきやがって」
将軍とランマルは兄弟、ランマルは弟だ。
ショウグン「敵は鬼だ!この島を…死ぬ気で守るつもりで戦え!!」
侍たちが声を上げる。
ランマル「さぁ俺たちは急いで城に行くぞ」
サカズキ「俺とツキカゲは残るぜぇ。人間だけじゃ心許ないしな」
ツキカゲは走っていくユニの姿を見ていた。もう守られるだけの子どもでは
ない。そして彼女を守る必要は無いようだ。
城に入り倒れるミカドにサヤは駆け寄った。
サヤ「お兄!しっかりしいや、こんなところで眠ったらダメやで!!」
ミカド「…めん‥‥」
微かに聞こえた謝罪の言葉はサヤの耳にしっかり入る。力を無くした
ミカドはサヤに謝罪し臨終した。
- Re: 空飛ぶ島の冒険家 ( No.27 )
- 日時: 2019/04/03 10:49
- 名前: azuno* (ID: s00TEuml)
シュバルツ「悪いな聖女、斬らせてもらうぞ」
ユニの後ろに刀が迫る。だがその剣は弾かれる。
ランマル「折角帰って来た巫女さんを殺されるわけにゃあ行かねえな」
チェリベ「…邪魔だ」
隠し持っていた短刀でランマルの脇腹を切り裂いた。チェリベは素早く
ユニとの距離を縮め短刀を突き出す。
ユニ「無理、しなくていいんだよ?チェリベさん」
チェリベ「ッ!?」
シュバルツ「何をしているチェリベ。お前は俺に従っていればいい」
微かに見えた。チェリベの心が揺れたのが…。仕方なく従っている。
そんな感じだ。
シュバルツは音も無く近付きゼロに噛み付いた。
シュバルツ「ここまで不味いとは思わなかったなぁ?でもこれでお前も
きっとこっち側に目覚めるだろうよ」
弓を使っているため至近距離では戦えない。それを理解しているため
チェリベはリーチが短い短刀を使いユニと戦っている。ユニの行動を
知り尽くしているのかそれともただ単に強いだけなのかユニは押されている。
チェリベ「無理をしなくていいと言ったな。君さえ死ねば俺は解放されるさ」
ユニ「やっぱり…仕方なく従ってるんだ」
チェリベ「君のお人好しが君を死へと誘う…」
ユニ「ッ!純潔の鎖!」
黄色の鎖はチェリベを拘束する。だが鎖は砕けチェリベから黒い瘴気が
放たれる。右腕に禍々しい黒い模様が浮き出る。相当闇に侵食されている。
チェリベ「大丈夫そのうち俺は地獄に行くんだ…あの人と同じあの世に、な」
悲しげに微笑むチェリベの顔はすぐに殺意の籠った顔になる。
- Re: 空飛ぶ島の冒険家 ( No.28 )
- 日時: 2019/04/03 11:00
- 名前: azuno* (ID: s00TEuml)
チェリベの首に刀が当てられる。
ランマル「殺したはずなのにって顔だな?ところがどっこい生きてるんだなぁ
これが…なぁ?妖怪」
ツキカゲ「形勢逆転、かな」
シュバルツ「役立たずだな…退くぞチェリベ。聖女、また会おうじゃないか」
黒い霧が消えていく。彼らの気配は消えたようだ。
翌日、ランマルは自ら一緒に冒険したいと言って来た。
ツキカゲ「犯人を倒したい…そんなこと言ったって本当は借金から
逃げたいんじゃないのか?」
ランマル「うぐっ!な、ンなことぁないぞ!!」
図星だということは全員が分かった。
ツキカゲ「ユニ様、再会できて成長が見れて良かったです」
ユニ「私もまた話せてよかったよツキカゲ!」
ユニをツキカゲは抱きしめた。
ゼロ「じゃあさようなら皆」
ユニ「私たち頑張るから。またね!!!」
ユニたちは手を振った。
サカズキ「行っちまったなぁ…泣いてるのかい?狐」
ツキカゲ「…そうかもな」
空を飛んでいくプリーマ島を見ながら二人は呟いた。
サヤ「二人とも何ボーっとしてるねん!」
サカズキ「プレゼント喜んでくれたかなぁって、な?」
ツキカゲは小さく微笑み頷いた。
サヤ「サカズキはん、鬼のことは頼んだで」
サヤは小さな手でサカズキの背中を叩いた。藍色の光を放っていた
忍耐のリングはユニの手に渡っていた。