コメディ・ライト小説(新)
- Re: ハーバリウム ( No.1 )
- 日時: 2019/04/18 19:57
- 名前: 枢 (ID: s00TEuml)
小学校、中学校、ちょっとした容姿の違いなどで酷いことを言う人物は
世の中には何人もいる。勿論、言われる側だった私、生まれつきの癖毛と
乾きやすい頭皮でフケも出がちだった私は虐めのターゲットにされがちだった。
勿論、友達もいたので助けてくれる人はいた。そんなのは過去の話、今の私は
転生してフケと言うコンプレックスを無くしてスッキリしている。
???「貴方そんな所でどうしたの?」
鮮やかな緑の長髪の女性が声を掛けてきた。この女性、リースが私の
これからを大きく左右する人物だった。彼女は私が転生してきたことを
素直に受け入れてくれた。彼女も転生してきた人物だ。そして今では
有名な女勇者。
サクラ「リースさんも日本人なんですね」
リース「えぇ。といっても話を聞く辺り私とは時間軸が違うわね。私は
戦時中に転生したの。原爆に巻き込まれて…」
サクラ「原爆…広島ですか」
リースは頷いた。申し訳ないことを聞いてしまった。
リース「でも大変なのはお互い様。貴方も虐められて大変だったでしょ?
大丈夫、私が預言してあげる。貴女の仲間は絶対貴女を傷つけたりしない」
リースさんは微笑んだ。こういう人の周りには自然と人が集まることを私は
知っている。
- Re: ハーバリウム ( No.2 )
- 日時: 2019/04/18 21:29
- 名前: 枢 (ID: s00TEuml)
リース「そうねぇ戦闘が多くなるし色々教えるわね」
リースさんは相手の能力を見ることが出来る。リースさんは剣術に長けて
いるが私は遠距離攻撃、魔術に特化しているようだ。さらに魔力はかなり
高いという。
サクラ「そんなに分かるの?」
リース「えぇ。私は魔術特化じゃないからあまり細かくは言えないけど前に
魔術師の人が言ってたの。魔術は大抵が想像力だって」
サクラは想像する。主に放出系の魔術を使ってみたい。両手を前に出すと
青い極太レーザーが放たれた。その大きさには使用者である私も驚いた。
リース「バッチリね!」
サクラ「え…はい…」
リース「私は主に火属性を使ってるの。サラマンダーっていう精霊を体に
宿しているから」
サクラ「宿してる?」
リース「正確には加護を貰ってるって言った方が良いかもしれないけど」
そんなこともあるんだなぁ…。異世界では私の常識が非常識になることも
あるのかと思い知らされた。それはそうか。ここでは魔法もある、人間以外の
種族も存在すると言っていた。現実的ではない世界、それが異世界という
ことなのかと思った。でも声を掛けてくれたのが優しい人で良かった。それも
同じ転生者だとは…。嬉しさの影に何か不安な気持ちが見え隠れしている。
フラグではないことは祈りたいがこの嬉しさはずっと続いてくれるのかな?
そんな疑問と不安に駆られつつリースさんと共に道を歩いていく。そよ風の中
私たちは森を探検し始める。
- Re: ハーバリウム ( No.3 )
- 日時: 2019/04/19 22:53
- 名前: 枢 (ID: s00TEuml)
この異世界には魔王もいる、勇者もいる。どちらも自由に名乗れるわけではない
とリースさんは話した。リースさんと繋がりを持つ魔王カイラという男。
大空襲で大怪我をしたリースさんに彼は怪我を治し異世界のすべてを教え
サラマンダーを宿らせた。その力で彼女の寿命は徐々に縮まっているらしいが
彼女は怒りを感じたことは無い。彼女に案内されやってきたのはある城だ。
その中に入ると踊り場に一人の男が立っていた。金色の瞳孔に白髪の美青年
彼が魔王カイラだとリースさんは言った。
カイラ「そろそろ…時間だな。短い時間での仲間はどうだったかい?」
リース「時間軸は違うけれど同じ世界から同じこの世界にやってきた彼女と
話せて良かったと思っています。それと貴方にも礼を」
カイラは首を傾げた。
カイラ「何故俺に礼を言う。お前の寿命を縮めたのは俺、殺したも同然だろ」
リース「確かに正論ですね。ですが大怪我まで治しここのことを教えてくれた
のは貴方でしょう?最初から殺す気なら他に簡単な方法があったはずだから」
リースさんの体が炎に包まれていく。嘘、行かないでくださいよリースさん!
あと少しで良いから!炎に私から触れることは出来ない。リースさんの白い
指が私の頬に触れる。
リース「私、大変だったけど楽しかったの。最後に貴方に出会えて本当に
良かった。この世界に貴方はもう認められてるのよ。私のスキル、貴方に
託すわ。ありがとうサクラ、私の最後の―」
親友、リースさんは消える最後にそう言ってくれた。その言葉が一番
嬉しかった。そこに残ったのは小さな水晶のネックレスだった。
カイラのほうを見ると受け取れと言わんばかりの顔をしている。
ネックレスを首に掛けた。
- Re: ハーバリウム ( No.4 )
- 日時: 2019/04/20 10:09
- 名前: 枢 (ID: s00TEuml)
私のほうを見てカイラはクスッと笑う。何だろう?
カイラ「面白い物を見ることが出来た。調整者、先駆者…良いだろう」
カイラは「ウィール」と名前を呼んだ。影からワインレッドの瞳が
浮き上がる。
真っ白な肌に全身黒服に身を包んだ美青年だ。
カイラ「良い住居を教えてやる。エアルの森という場所がある。そこには
小さな村がある、その森の管理者はきっとお前を仲間にしてくれるだろう」
森の管理者、どんな人なんだろう?カイラが話始める。
カイラ「能力はあれど身は人間、お前にはウィールと主従関係を結んでもらう」
カイラは一枚の紙とペンを差し出す。既にウィールは名前を書いていた。
1.主の命令は絶対
2.従者になる以上、主に忠義を尽くす
3.主を裏切ることは出来ない
などのことをウィールは承諾したようだ。ペンを握る。紙をカイラに
差し出す。主従の契約は成立した。
外に出た。ウィールは何故かフードを目深に被っている。ど、どうしたんだろ?
あれか、日光が嫌いなあの種族なの?
サクラ「あのウィールさん」
ウィール「俺の事、呼び捨てで良いから」
サクラ「え?あ、ご、ゴメンじゃあウィール。日光は嫌いなの?」
ウィール「俺はダンピール、人間と吸血鬼の混血。日光で死ぬことも無いけど
苦手なんだ。血も…衝動ぐらいはあるから」
死ぬことは無いと言っても苦手な物は苦手だし仕方ないよね。その辺は
ちゃんと配慮しないと!うわッ!?なんか飛んできた?飛んできた方向に目を
向けるもいない。だが少し速くウィールが何かを感じたらしく手を
突き出す。私も気が付き振り向く。喉にナイフが当てられる。ナイフを
持っている男の喉には貫手が食い込む。
???「何故ダンピールと人間が…」
- Re: ハーバリウム ( No.5 )
- 日時: 2019/04/20 13:01
- 名前: 枢 (ID: s00TEuml)
サクラ「貴方は…森に住んでるエルフ?あの私」
エルフは問答無用でナイフを振るう。そのナイフをサクラは躱す。
サクラ「ち、ちょっと!!」
???「やめなさい!リヴ」
薄い緑色の長髪の女性がエルフ、リヴにそう叫んだ。
???「魔王カイラから話は聞いています。サクラ・クランベルそしてその従者
ウィール・スカーレット、ようこそエアルの森へ。私はこの森の管理人
ティターニアです」
夏の夜の夢という作品に出てくる妖精の女王ティターニア、彼女は本当に
綺麗だ。透けた水色の羽を持つ。
リヴ「だがティターニア様、まさかダンピールまで森に入れるのか?」
ティターニア「えぇ、そうですけど」
リヴ「そうですけど、じゃねえ!俺は反対だ、人間は兎も角、吸血鬼の
混血を森に入れるなんて」
ティターニア「いいではないですか。彼はこの森に凶事をもたらすことは
ありませんよ。いざとなれば彼だって自分で責任を取るでしょう?」
ティターニアはウィールのほうを見て微笑んだ。ウィールは頷いた。
ウィール「迷惑をかけるつもりはない。それに暴れ出したら好きなように
してくれればいい。迷惑を掛けたなら殺されても構わないからな」
ティターニア「カイラ様の言う通り彼にそっくりな方ですね。貴方に
この森の盟主を頼みたいのです」
サクラ「盟主!?そんな私、そんなリーダーみたいなのは…」
恥ずかしい…そんなリーダーシップなんて持ってないのにぃ。でも頼みたい
なんて言われて断れるような性格でも無いんだよね…仕方ない引き受けよう。
サクラは頷いた。
リヴ「じゃあさっさとついて来いよサクラ様…ってな」
サクラ「あ、うん」
リヴの案内の元、二人は村にやってきた。
- Re: ハーバリウム ( No.6 )
- 日時: 2019/04/20 13:48
- 名前: 枢 (ID: s00TEuml)
リヴ「この森には幾つかの種族がいる。鬼、エルフ、ゴブリンとか。
この村には多くの種族が集まってる」
多くの村人を掻き分け人混みの中を進む。綺麗な琴の音と凛とした声だ。
演奏が終わり人々が消えた。すると歌っていたエルフの青年がサクラたちの
方を向いた。深緑の髪に閉じられた両目。
???「リヴ、彼女がティターニア様が言っていた新しいリーダーかな?」
リヴ「あぁサクラ・クランベルとその従者のウィール・スカーレットだと」
青年は切り株から立ち上がった。
ソアラ「僕はソアラ、戦力にはなれないかもしれないけど他の事では君を
全力で支えさせてもらうよ」
サクラ「あ、ありがとうございます」
ソアラ「よしてくれサクラ様、敬語なんて必要ないさ」
ソアラは困ったように笑った。
???「もしかしてその人がクランベル様の子っすか?俺、ユータっす!!」
ゴブリン、ユータは訊いてもいないのに名乗って来た。
ソアラ「そうだ。大昔、貴方にそっくりな男がいたんだ。彼も貴方同様
クランベルの名を持ち人間だった。最初のほうは非力な人間なのにと
思っていたが次第に彼の器の大きさと性格に惹かれていった。彼は自身の
持つスキルに先駆者と調整者とそれぞれ名付けていた。先駆者はここには
無いオリジナルの魔法やスキルを作成できるスキル、調整者は相手の
スキルを封印したり逆に解いたり出来るスキルだと」
そういえば魔王カイラも先駆者、調整者と言っていた。
ソアラ「今では他にも自身のスキルに名前を付ける人物も多くいる。彼が
始めたことだ彼は本当の先駆者だったよ」
知ったような口ぶりだ。そのクランベルと言う男を見たかのような…。
ティターニアさんの言っていた彼はその男だと推測できる。
- Re: ハーバリウム ( No.7 )
- 日時: 2019/04/20 14:08
- 名前: 枢 (ID: s00TEuml)
リヴ「クランベルについてもっと知りたい?そりゃあ知ってるが…」
???「あらその人がサクラ・クランベル様ね?聞いていた通りそっくりですね」
白いドレスを着たエルフの女性、彼女はエルフ族の長ルミエルだ。
ルミエル「クランベルについて知りたいの?いいわよ話してあげる」
時は遡り数十年前、この森のリーダーをしていたクランベルは一人の少女を
助けた。その少女こそリースだ。彼女が身の丈に合わない四代精霊の
サラマンダーを身に宿していることを知った。
ルミエル「クランベル、その子をどうするつもり?」
クランベル「助ける。熱と疲労で倒れてるんだ。寝かせてやろう」
ルミエル「そうじゃなくてその子に宿ってる精霊の力よ。暴走しても
可笑しくないのよ」
クランベルはリースを抱き小屋の中にあるベッドに寝かせた。村人たちは
氷水を袋に入れ、それをリースの額に乗せる。
クランベル「ある程度、彼女が大きくなるまでここで彼女を居候させる。
その間は俺のスキル調整者で彼女の力を抑えておく」
クランベルはずっとリースのいるベッドを離れなかった。一週間が過ぎ
彼女は大分元気を取り戻した。それから彼は彼女に剣術の指南をした。
ルミエル「お疲れ様リース」
リース「ルミエルさん」
ルミエル「クランベル相手にあそこまで粘れるなんて貴方、凄いわね。
そのうち彼を倒しちゃうんじゃないかしら?」
ルミエルがそう言うとリースは照れながら首を横に振る。
リース「そんな…あの人はとても強い。私なんかまだまだです」
ルミエル「本当よね~ここに彼が来た時もエルフのみならず鬼まで相手に
しても一切傷つけられなかったのよね…本当に人間なのかしらね彼って」
更に時は経ったある日、リースも大人になり彼女は冒険家になることを
決意した。
- Re: ハーバリウム ( No.8 )
- 日時: 2019/04/20 14:28
- 名前: 枢 (ID: s00TEuml)
クランベル「冒険家、ねぇ…なりたいなら好きにしろよリース」
リース「クランベルさんも一緒になろうよ冒険家に」
リースにクランベルはそっと微笑んだ。
クランベル「自覚しているだろうがそろそろ俺のスキルを解こうと思う。
お前はもう大人、充分戦える。俺がサラマンダーの力を抑えなくても良いだろ。
どうなるか、分かってるだろ」
クランベルの少し低い声がリースの耳に入る。彼女は頷いた。
リース「寿命が縮んでいく、それは分かってるよ。ここも楽しいし感謝してる
だけど私、冒険家になりたいって思ってたから」
クランベル「…だったら俺がとやかく言う必要はねえな。頑張れやリース」
クランベルはネックレスと懐中時計を渡した。彼が大切にしていた物。
それを受け取りリースは森を出た。
ルミエル「何だか彼女の父親みたいねクランベル」
クランベル「俺が、か?…俺も寿命ってのがあるんでね」
クランベルが咳き込む。微かに彼の吐き出した血が見えた。寿命が
近付いているようだ。
クランベル「何か感じるんだよ。アイツは最後に良い奴と出会う、ソイツは
彼女と離れた後きっとここに来るぜ。俺もソイツの守護霊になって
帰って来るかもな!」
クランベルは笑った。そんな彼にティターニアは恋をしていた。ある日、
ティターニアはクランベルに話をする。
ティターニア「貴方にはここにいて欲しいのです。森を支えてくれた
貴方に死んでほしくない。それに…私の初恋相手ですから」
クランベル「何だァ?告白か」
ティターニア「えぇそんな感じです。それで寿命を延ばしませんか」
その言葉でクランベルは少し笑みを消した。
クランベル「俺は充分ここで楽しく暮らしたからな。これ以上望んだら
罰が当たるぜ。ってなわけで悪ィなティターニア、俺は長生きしない。
その代わり、此処に来た人間をお前が支えてやってくれよ」