コメディ・ライト小説(新)
- Re: 霊障対策・零<改> ( No.1 )
- 日時: 2019/05/01 18:10
- 名前: 来海九重 (ID: s00TEuml)
暗い夜の車の中。運転してるのはたばこを口に咥えた2係の男、
金指 優だ。だが『すぐる』と呼ばれるのは嫌らしく『ユウ』と
呼ばれるのを好むので玲音はユウさんと呼んでいる。霊に触れる、話す、
見ることぐらいしかできない玲音はあまり役に立てずにいた。一方ユウは
金属を硬化することができ身に着けている物には大抵金属が練り
込まれている。
ユウ「大丈夫かぁ佐伯。さっきから顔が暗いぞ」
玲音「す、すみません…」
ユウ「今日の事か?得意不得意はあって当たり前だ。落ち込むことねえよ。
それに犯人の霊障は退治出来たんだ。終わり良ければ総て良し、ってな」
車はゆっくり停車しユウはふぅ…と息を吐いた。
玲音「それは分かってるんですけど…。見たり触れたりできる程度なのに
この先やっていけるんですかねぇ…」
ユウ「そっちの係長が推薦したんだろ?真さんが受け入れたんだから
自信持って良いと思うぞ」
ユウは小さく微笑んだ。そして警察庁本部付近のアパートの前で車は
止まった。助手席側のドアを開け外に出た。
玲音「ユウさん、ありがとうございました」
ユウ「気にするなよ。寄り道って感じだから」
玲音「はい」
翌日の朝、1係オフィス。自身のデスクに玲音は伏せていた。大きな溜息が
聞こえた。彼女より1年先輩の福野宮子はそんな彼女を不安そうに見ていた。
宮子「た、大変です!玲音ちゃんがぁ~」
八月朔日幸定も彼女を見ている。
幸定「先輩、大丈夫っすか。徹夜でもしたんすか」
玲音はゆっくり顔を上げた。
玲音「徹夜ってワケじゃないんだけどねぇ…家の近くにいるおばちゃんの
霊の話を聞いて消えてくのを見送ってって…そしたらもう朝1時だった」
宮子「それは気の毒ね…まぁでもほら、頑張ろうよ」
玲音「はい」
- Re: 霊障対策・零<改> ( No.2 )
- 日時: 2019/05/01 19:08
- 名前: 来海九重 (ID: s00TEuml)
小さなとある祠にやってきた。幼少期から霊と話したりできる玲音は
ここで一人の霊に会いに来た。
???「玲音、凄い大きくなったのね」
玲音「神楽ちゃん」
祀られている霊、座敷童の神楽だ。
幸定「先輩、割と顔が広いんすね」
神楽「この人は…玲音の後輩?初めまして私は座敷童の神楽。よろしくね玲音の
後輩君。で、お話しに来てくれたの?」
玲音は首を横に振った。
玲音「今日は仕事で来たの。人の不幸を食べる霊能力を持ってる人がいるの」
神楽「それって宮子って人でしょ。いつもこの道、通ってるから知ってるわ」
玲音「それで可笑しいことが起こってるの。異常に発達した不幸があちこち
から滝のように流れてるんだって。私も恐ろしい目に遭った…」
神楽に「例えば?」と聞かれた。
玲音「本の山が落ちてきたんだよ、ついさっきね。今は着替えてるけど
運悪く転んで水溜りにドボン」
神楽「そこまで続いたの?私の力も落ちてきちゃったかしら…なんて
私も神社から追い出されてるのよ」
神楽は話し始めた。彼女は幸福を呼ぶ座敷童、人間が今、普通に日常を
過ごせるのは彼女の力があるから。そんな彼女が古びた祠にいるのは
その神社を追い出されたからだ。彼女と対を成す存在、疫病神に…。彼は
どうやらかなり前から少しずつ1、2係を含めた人間から幸福を奪っていた
らしく彼女の力を超えた存在になっているらしい。つまり彼女は…。
玲音「って!前々から知ってたなら言ってよ!!!?」
神楽「し、仕方ないじゃない!私もあそこまでとは思わなかったもの…」
他の二人が上を向いて目を見開く。気付いた時には頭に痛みがあった。
玲音「いっ…たぁぁぁぁぁぁ!!!?」
1係オフィス。犬山秋久は椅子に体重をかけた。
秋久「なんか転んで骨折したって話がありましたよ。うちは割と普通ですね」
宮子「そうね。大きい事は…今は起きてないわね。約一名、不幸の連鎖が
起こってたけど」
秋久「佐伯先輩ですね。転んで棚の角に頭ぶつけて、本の雪崩に巻き込まれ
更には片付けられてなかったホースから運悪く水が噴射されるって…」
宮子「1係全員の不幸を受け持っちゃったってカンジね。礼、言った方が
いいのかしら…?」
- Re: 霊障対策・零<改> ( No.3 )
- 日時: 2019/05/01 19:26
- 名前: 来海九重 (ID: s00TEuml)
幸定「2係とかは不幸が降ってるみたいっすけど1係は平和っすね。先輩が
俺たちの不幸を受けてたみたいっすね」
玲音「いや…あんな連鎖もう二度と受けたくない…早いところ疫病神を
どうにかしないと」
幸定「でも、どうするんすか?不幸には勝てませんけど」
言う通りだ。正面から行ったところで不幸に遭うだけで結局尻尾を
巻いて帰って来るのがオチだろう。疫病神は神楽からも力を奪ってるらしいし。
神楽「…玲音、私も神社に行くわよ。アイツは私の力を奪ってる。なら私も
同じことが出来るはずよ。長くは続かないかもしれないけどね。幸せって
言うのはね、私がいるからってワケじゃないのよ。不幸も捉え方次第では
色々なのよ。散々な目に遭った、仲間は何も起きなかった。自分だけ?って
思うかもしれないけど皆を不幸から守れたって考えればそれだけで
良いことしたって思わない?」
神楽の言う通りだ。こんな時は出来るだけポジティブに考えよう。
真「…そうか。座敷童を仲間に付けてたか。了解、そっちは任せるぞ」
携帯をデスクに置き息を吐いた。彼女は無能ではない、霊と仲良くできる
存在である。
黒い和服を着た褐色肌の銀髪の男の手には水色の炎がある。彼が疫病神だ。
鳥居の前には座敷童の神楽とその他二人の霊能課の刑事がいた。
疫病神「刑事ってのは馬鹿が多いんだな。真正面から来て…まぁその
おかげでたんまりと集まって俺にしちゃ好都合だな」
神楽「貴方の思い通りに行くと思わないで!皆の、人間の幸せ返してもらうわ」
疫病神は嘲笑する。そして水色の炎、奪った幸福を見せつける。
役病神「これだけの量だぜ?お前より俺のほうが強いんだ。出来るわけねえ!」
玲音「分からないよ?そういうのフラグっていうんだからさ」
疫病神「散々不幸に遭った奴がいうのかよ、そんなことはッ!?」
神楽が両手を合わせ祈り始めると水色の炎が揺らぎ始め、白い蝶になり
飛び去っていく。幸せが持ち主の元に帰っていく。
- Re: 霊障対策・零<改> ( No.4 )
- 日時: 2019/05/01 20:08
- 名前: 来海九重 (ID: s00TEuml)
ユウ「お前が例の疫病神か」
疫病神の鳩尾に鋭い蹴りがめり込む。
玲音「ユウさん!」
ユウ「よぉ、佐伯。無事だったようで安心したぜ。そっちの座敷童もな」
ユウは立ち上がる疫病神を睨む。さっきよりも幼い姿になってる。
神楽「奪った幸福が戻っていくから、その分の力が減ってきてるのよ。
形勢逆転って奴ね」
疫病神「調子に…乗るなぁ!!ガァッ!!?」
ユウの蹴りを真正面から受け疫病神が地面に倒れた。強化されてる分、
威力はかなり高くなっている。
ユウ「もう悪戯もクソもねえだろ」
神楽「えぇ皆の元に幸福は戻ったみたいだし。玲音、貴方の仲間のおかげで
助かったわ。ここに来てくれてありがと」
玲音「私は何もしてないから…礼はユウさんに、ね?」
玲音は微笑んだ。
後日談。神社に来ると神楽と疫病神の閃がいた。
神楽「あら?様子を見に来てくれたのかしら玲音」
玲音「まぁそんなところ。閃も神楽と一緒にいることにしたんだね」
玲音は縁側に座り笑った。
閃「ハッ、そんなわけねえだろ。また奪うために来ただけだ」
玲音「そんなことしない方が良いと思うよ?今度は蹴られるだけじゃ
済まないと思う。ボコボコにされるの目に見えてるし」
閃は歯ぎしりした。勝てない、それを自覚したようだ。不幸の疫病神と
幸福の座敷童が一緒にいることで互いの力を調和して平均的な運気に
なる。これで事件解決、不幸事件解決だ。