コメディ・ライト小説(新)
- Re: 霊障対策・零<改> ( No.5 )
- 日時: 2019/05/02 16:51
- 名前: 来海九重 (ID: s00TEuml)
数年前、ある事件が起こっていた。その事件で死んだのは市川沙希という
女性だ。市川家は三人家族で父親の市川頼正は疑われかけている息子を隠し
警官に逮捕され拘置所にいたが数日前に死んだ。生き残ったのは息子の海斗
のみだ。この事件について調査していた普通の刑事たちが
死んだ。運よく生き延びた刑事によると子どもに食われたという何とも
信じがたい証言でその海斗も行方不明になったため事件の真相は消えたが
後に霊能課の監察が調べたところ沙希は鬼と化した海斗により食われたという
ことが分かったが行動に移すこともできずやっぱりちゃんとした解決には
至らなかった。事件簿を閉じた。割と最近出来たものかと思ってたが割と
昔からあったようだ。霊能課、否正しくは霊障対策課は二つの係に
分かれている。今回は珍しく二つの係が集まっていた。
霊能課課長である雨宮 命は全員の前に立つ。彼の後ろの
スクリーンに二つの死体の画像が映し出される。
雨宮「数年前の人食い事件に似た事件が今回発生した。さらに数年前と
同じ骨だけ残った死体もある。同時に二つの事件が起こった。一人は
恐らく人食い事件の容疑者、市川海斗。もう一人はまだ調べている途中だ。
だが刑事課で一人食われた人物がいる。他にも沢山の白骨化した遺体が
発見されている。霊能対策課全精力を使い、犯人逮捕を目指すぞ!」
解散するときに一人の青年に声を掛けられた。玲音が真っ先に見たのは
顔、ではなく両肩にいる小さな鬼。
???「あ、こっちはまぁ兄弟みたいなモンです。ユウさんが言ってた
1係の佐伯玲音って貴方ですよね」
玲音「うん確かに私は佐伯玲音だけど…」
???「俺は獅堂総悟、こっちはカグマとツヅル」
総悟はこの二人を自身に憑かせて戦うらしくカグマは物理、怪力を持ち
ツヅルは妖術を扱うことが出来るという。
ユウ「あーここにいたのかお前ら。現場、見に行くぞ。勿論玲音もな」
- Re: 霊障対策・零<改> ( No.6 )
- 日時: 2019/05/02 11:30
- 名前: 来海九重 (ID: s00TEuml)
そこには既に多数の刑事たちが集まっていた。テープを越え中に入った。
他の刑事たちの体をすり抜け子どもの霊が玲音の元に集まって来た。
『お姉さん、私が見えるの?』
玲音「うん。もしかしてここで何か、誰か見たんだね?良かったら教えて」
『確かね~こーがって名前だったよ。えっとねぇ手が真っ赤でね、顔に
包帯してた』
『それだけじゃなかったんですよ』
中学生の少女の霊が割って入って来た。
『もう一人、男の子がその人と話してたんです。ヤバいんですよ、
カニバリズムですよ!』
ユウ「その子、こんな感じの子か?」
ユウは褐色肌の少年の写真を見せた。少女は「そうですそうです」という。
『あ、でもこんな小さくなかったかな?話し方は幼稚園児みたいだったけど
成人ぐらいの身長だったし。そうだな僕は鬼でお母さん食べちゃったとか
言ってたよ』
『あ、そーだ!骨を食べてるお兄ちゃんも俺は骨を食べなきゃ死んじゃうって
言ってたんだよ!』
玲音は小さな女の子の頭を撫でた。
玲音「ありがとう教えてくれて」
二人は照れくさそうに笑って姿を消した。玲音の前に男が立った。
???「アンタら霊能対策課の刑事か。俺は大神咲斗だ」
玲音「私は佐伯玲音、こっちは2係のユウさんと総悟さんです」
大神「霊能課が来てるってことはこの事件はオカルトの類か?」
ユウ「まぁそんなところだ。人食い鬼と骨食い男だとよ」
他の刑事は首を傾げるか嘲笑っている。そんなわけねえだろ、と。だが
大神は納得しているようだ。
玲音「どちらも人間を喰らっています。あり得ないと思うかもしれないけど
それが事実です」
大神「そうか…そういうのは俺たちじゃなくお前たちの方がいいか。
丁度伝達も回って来たし任せるぞ」
- Re: 霊障対策・零<改> ( No.7 )
- 日時: 2019/05/02 16:47
- 名前: 来海九重 (ID: s00TEuml)
仕事帰りの夜。そこで玲音は噂の男と遭遇する。骨食いではない、人食い鬼に
なった青年だ。
玲音「そこで…何してるの?」
海斗は玲音を睨む。そして地面を蹴り飛びかかった。だが彼の勢いは
寸前で止まった。
玲音「これね…お守りだよ。持ってて正解だった。君には申し訳ないけど
こっちに来てもらわないといけない。私には見えるんだ、人を喰らい
続ける君を不安そうに悲しそうに見つめる人の顔が…」
話が通じないワケではないようだ。バタン、と何かが閉じる音がした。
ユウ「玲音、ソイツが市川海斗って子か。資料だと子どもだったが…
成長しきってたか」
海斗「やっぱり…そうだ…」
海斗は玲音に飛びかかる。ユウが反応し海斗の顔面に蹴りを入れた。それも
霊能力で強化した蹴りだ。ユウは少し顔を顰める。
ユウ「頑丈な体だな」
玲音「ちょっ、ユウさん!だ、ダメだよ」
玲音は何かを感じサッと地面に伏せた。呆気に取られてる玲音の首根っこを
掴みユウは無理矢理車に投げ込む。本気でやらなければ捕らえられないと
判断したユウは手に持っていたアタッシュケースを能力で硬化し薙ぎ払う。
まだ意識がある。だが怯んでいるようだ。
ユウ「すまねえ、寝てろよ!」
海斗「ッ!?」
脳天にかかと落としを喰らわせた。
そして一夜が明けて海斗の首や腕には封印用の糸が巻かれた。
真「そうか…お疲れ様、確保に協力してくれて感謝するよ佐伯」
玲音「あの海斗君はどうなったんですか?」
真「監察のほうで様子見だ。で、どうやら懐かれてるみたいだぞ玲音」
玲音「は、はぁ…」
- Re: 霊障対策・零<改> ( No.8 )
- 日時: 2019/05/02 17:25
- 名前: 来海九重 (ID: s00TEuml)
命「ここに佐伯玲音はいるか」
扉を開けて来た命は玲音を探して居た。
玲音「あ、はい。私ですけど」
命「少し、話がある」
離れた場所で二人は向かい合う。
命「霊能力は…何かをきっかけに目覚める場合と生まれた時から持っている
場合がある。前者は少数だ。その中にはお前がいる。前の課長、佐伯慧という
男がいる。聞き覚えはあるか」
佐伯慧、佐伯玲音の父であり霊能課の先代課長。
命「俺のデスクの中にこんなものが眠っていた。お前の父親は預言者か
何かか?この紙に今いる職員の名前が全部書いてあるぜ。まぁそうだった
らしいがな。その手紙の中にお前についても書いていた。お前の父親も
元々はお前と同じで霊が見えたり触れたりできる程度だったがある時を機に
とんでもねえ霊能力に目覚めたって話だ」
玲音「何だか凄い詳しいですね課長」
命「俺の親父がお前の親父さんと仲良しだったからってのとこれがあるから。
そのある時ってのがお前が生まれた時らしいぜ」
扉をノックする音が聞こえた。命は席を立ち扉の前に行くと振り返り
後は親と話せという。
???「玲音、お仕事お疲れ様」
玲音「お、お母さん!」
玲音の母、佐伯美音は玲音の隣に座った。
美音「お父さんの事、少しだけ聞いた?」
玲音「うん…」
美音「元々オカルト好きで怪談話とか大好きだったの。お父さんがね霊が
見えるって聞いて何だか嬉しかったのを覚えてる。お父さんね玲音が
生まれたときに見えたって叫んだの」
玲音「見えた?何が?幽霊?」
美音は「私にも見えたの」と言ってから話し始める。
美音「大きくなった玲音がここで働いてるところ。貴方の霊能力は
不思議なんだって言ってたのよ。分理と融合の二つを操るって…その力が
あれば今回の加害者の子、救えるかもしれないわよ」
美音の身体が透けていく。霊、否玲音の守護霊は両親だった。
- Re: 霊障対策・零<改> ( No.9 )
- 日時: 2019/05/02 20:50
- 名前: 来海九重 (ID: s00TEuml)
2係の係長、睦月真の兄、睦月 剣は真に伝言を頼んだ。
真『剣か?なんで電話なんだ。すぐ近くなんだから来ればいいだろ』
剣「俺も忙しくて離れられねえんだ。手身近に伝える。確かそっちに
分離と融合を操る霊能力者がいるよな」
真『佐伯か…アイツがどうした?』
剣「骨食い咲風紅牙は骨食いに憑りつかれている。ソイツのことは
詳しく知ってるだろ?」
骨食い、がしゃどくろという妖怪の弟のような妖怪で人から人へ
憑りつく妖怪だ。宿主が死ねば次の宿主に憑りつき人を殺す。
剣「それで俺たちは宿主を倒すことは出来ねえ。警察が殺人鬼を生むわけには
いかねえだろ?そこでだ、その佐伯って奴の能力で無理矢理融合させれば
恐らく連鎖は止まるはずだ」
咲風紅牙の魂と骨食いの霊をくっつけ一体化させれば彼が死んだとき同時に
浄化することができるという考えだ。
真『分かった。場所は何処だ?そっちに佐伯を向かわせる』
剣「あー今、鬼童夕陽がソイツと応戦してるらしい。パワーファイターだし
スタミナもあるから大丈夫だろうが傷を負ってないとは言いきれねえ。だから
急いで向かわせてくれ」
真は小さく頷き玲音を向かわせた。
場所は夕方、封鎖された公園。咲風紅牙の前には赤紫の炎のような刺青が
浮き出ている刑事、鬼童夕陽がいた。
夕陽「お前の悪事ももうすぐ終わる」
紅牙は首を傾げる。
紅牙「何だ?そっちの親玉でも来るのか」
夕陽「俺よりも一年先輩の人が来てる。戦闘向けではないですけどね」
紅牙「なら心配はいらねえな…俺も死ぬのは嫌だからな…誰が来ようが
容赦はしねえ!」
異形の腕が振り下ろされる。赤紫の炎を纏った拳で夕陽は応戦する。
係長の剣曰く、傷を付けられたら最後、白骨化していくらしい。
- Re: 霊障対策・零<改> ( No.10 )
- 日時: 2019/05/02 21:44
- 名前: 来海九重 (ID: s00TEuml)
紅牙が目を覚ますと暗い部屋にいた。体は鎖で椅子に拘束され身動きは
取れない。微かに残ってる記憶には殴られたということしか分からない。
鬼童夕陽という刑事に殴られ気絶し確保されたのだろう。微かに声が
聞こえる。
玲音「夕陽君お疲れ様」
夕陽「玲音先輩、あの男を助けるんですね。気を付けてください」
玲音「いやそんな危なっかしい事しないって。でもありがとう」
紅牙「(玲音、ねぇ…名前からして男か。声は中性的だが…)」
扉が開いた。癖毛の黒髪の中性的な男、ではなく女が入って来た。
玲音「初めまして咲風紅牙さん。私は1係の佐伯玲音です」
紅牙「てっきり男かと思ったんだが…違うんだな。で、俺はどうするんだ?
死刑にもできねえだろ」
玲音は小さく頷いた。紅牙に少し近寄った。
玲音「確かに殺すことは出来ません。なので殺しません」
紅牙「このまま終身刑っていうのか?やめとけよ」
玲音「いいえ…人殺しをしたのは事実だし罪は重い、でも被害者だから。
咲風紅牙という人間は骨食いに日常を奪われた被害者。だから私は今から
もう骨を食べなくてもいいようにする」
目の前の女刑事の言葉に耳を疑った。
玲音「貴方の魂と妖怪は憑いてはいるけど分離したまま。魂と霊ってね。
だからその二つを合わせるんだ。正し、妖怪と共に貴方は死んだら転生する
ことも成仏することも無く消えちゃうけど…ごめんなさい」
紅牙「何謝ってんだ?それが俺の罰だろ。早くやれよ刑事」
玲音がゆっくり顔を上げた。泣いてる。何でお前が泣くんだ?俺が
どうなろうと関係ねえことだろ…。玲音は手の甲で目を擦りそして目を閉じた。
紅牙の身体が白い光に包まれていく。魂と霊が融合していく。光が消えた。
融合は完了したようだ。