コメディ・ライト小説(新)

Re: うちのクラスには魔王がいる ( No.13 )
日時: 2019/06/06 22:20
名前: 塩鮭☆ユーリ (ID: 7/pkw8b6)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

☆麻尾宇くんは友達になりたい 04




 仮病。
 そう言うなり、何の打ち合わせもなしに突如麻尾宇が倒れた。なにせ体格がいいので、すごい音をたてて倒れる。一瞬の静寂のち、教室は騒然となった。

 俺はとりあえず、脈をとることにした。
 別に悠長にしているつもりではないが、あまりのことに頭のなかがぼんやりとしてて、とっさの行動がぼんやりとしたものになったのだ。

「……脈が……ない?」

 息もしていない。心臓も動いていない。俺はどうするべきかためらう。AED……だが、あいつは魔王だし、仮病と言った。頭のなかがぐちゃぐちゃで、次の行動がわからない。どうするのが最善かーー。

「何してるんだっ」

 泡をとばす勢いで先生は騒然とした教室内の生徒に指示を飛ばす。その眼光は鋭く、騒いでいた生徒たちもそれを見て腹が決まったようで、顔つきがはっきりした。先生は飛ぶように麻尾宇のところへ行って心臓を押し始める。

「先生、でも……麻尾宇に、人間への対処が有効でしょうか」

 麻尾宇に、AEDがきくのだろうか。
 俺は無知な中学生で、よくわからないけれど、そういうものは人間用につくられてはいないのか。
 さらに、麻尾宇の心臓が本当にここにあるかもわからなかった。
 ラスボスの臓器の位置がおかしいのはファンタジーあるあるである。

「今俺たちにできることを精一杯やるんだよ。そうするしかない……魔族にこういうのがきくのかわからんがな」

 たぶん、俺よりもずっと混乱してるはずだ。
 もっと取り乱したっておかしくない。

 だって、目の前で生徒が倒れたのだ。
 取り乱さないほうが無理というものだろう。

「先生ッ」

 バタバタとAEDを持ってきた生徒、他の先生を呼びに行って戻ってきた生徒……それぞれ、自分がするべきと判断したことをしている。

 俺は、ふと視線を感じて教室のすみを見る。






 ーー赤い眼光。
 一ノ瀬が、そこに立っていた。まっすぐに俺を睨み付けていた。人間とは思えない、赤い赤い瞳で。