コメディ・ライト小説(新)

Re: うちのクラスには魔王がいる ( No.14 )
日時: 2019/06/07 14:25
名前: 塩鮭☆ユーリ (ID: 7/pkw8b6)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

☆麻尾宇くんは友達になりたい 05




 結果として、麻尾宇のあれは仮病というか、よくつくりこまれた演技だった。心臓を止めるのも息を止めるのも、魔王にとってはなんでもないことだったらしい。
 AEDを使う直前で目を覚まし、ケロリとした顔で保健室に行きたいなどと言ったのだった。
 加減がわかってないーーというか。全く、規格外なやつである。

 麻尾宇が騒いだおかげで、一時間目の授業の半分が消えた。

 俺はその後、宿題を忘れたのが麻尾宇だけでなかったことを知る。残った半分の何割かも俺への説教へと変わり、滅茶苦茶な一時間目は幕をとじた。その日はそれ以外に変わったこともなく、麻尾宇は保健室から戻ってくることはなかった。

「はー……」

 重い足を引きずって、保健室へと向かう。
 なんで俺が見舞いに行かねばならんのだ。何人もの女子が立候補したが、最終的に「多勢で押し掛けると悪いから、仲のいい水野に行ってもらおう」ということになったのだ。

 仲がいいなんて心外である。

「嫌々でも見舞いに行くとは律儀なことだね」

 ……保健室前の廊下に、整った顔のクラスメイトが立っていた。

「一ノ瀬」

 一ノ瀬仁。
 今はいつもの黒い瞳だが、あの一瞬の赤い光が夢だとは思えない。あれからなんだか恐ろしくてまともに顔をあわせられなかった。

「どうして……ここに」

「決まってるだろ。……龍太。君が魔王様の心臓を止めたんだろ」




 ーーはぁ?