コメディ・ライト小説(新)

Re: うちのクラスには魔王がいる ( No.15 )
日時: 2019/06/07 21:21
名前: 塩鮭☆ユーリ (ID: 7/pkw8b6)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

☆麻尾宇くんは友達になりたい 06




「そうだろ?そうじゃないと考えられない……」

 いや待って。ストップストップ。

「けしからん……親友にまで上り詰めておいて裏切るなんて……」

 ピクリ。
 親友?
 誰と誰が?

 戸惑う俺を放ったまま、一ノ瀬は形のいい眉を歪めた。

「親友だからって魔王様が油断したすきをつくなんて……見損なったよ……龍太。いいやつだと思ってたのに、実は魔王様の敵だったんだな。勇者の手の者か?それとも勇者本人か?」

「……俺は麻尾宇と親友だった覚えはないし、俺が心臓を止めたわけじゃない」

 俺の否定に、一ノ瀬は目を丸くする。

「そうなのか?」

 いくらなんでも人を信じすぎだと苦笑したくなるが、それが一ノ瀬のいいところでもある。誤解しやすいが、誤解を解きやすく、こじれることがない。

「あぁ。あれは麻尾宇が数学の授業をサボるためにやったことだよ」

 仮病だということを伝えると、一ノ瀬は安堵の表情を浮かべた。

「よかった。魔王様のために何でもするつもりだが、流石にクラスメイトを殺さなければならないとなると胸が痛むからな……」

 ……は?

 殺す?

「というか、さっきから魔王様って……なんで様づけなんだ」

 一ノ瀬は美しい微笑を浮かべる。
 俺が女だったら間違いなく惚れていた微笑だ。

「……そりゃあ、僕は魔王様にお仕えする魔人だからな」

 何の躊躇いもなく、その口で頭のおかしいことを言いやがった。
 ……えっと。

「とりあえず、保健室に入ろうか」

 俺がおそるおそる保健室を指差すと、一ノ瀬はゆるやかに首を振った。

「遠慮しておくよ。僕がここでこうして人間になりすまし、密かに魔王様をお守りしていることは魔王様にバレちゃいけないんだ。……今朝は少し危なかったけど」

 あー。見てたもんな。

「だから、ダメだよ?僕のこと誰かに言っちゃ」

 ドスのきいた声で言い放ち、一ノ瀬は踵を返して去っていた。
 ……嵐のようなやつである。