コメディ・ライト小説(新)
- Re: リベンジ インフェクション ( No.3 )
- 日時: 2019/06/14 00:19
- 名前: 柞原 幸 (ID: Ytr7tgpe)
「…え?何言って…。」
ミアとアクトは酷く驚いた顔で母を見つめる。
「コロモロがとんでもなく値上がりしてるの。八百屋さんと帰りに立ち話をしたのだけれど到底下がりそうにないらしいわ。」
アマリアは悔しそうに顔をしかめた。
そのまま体を拭いたタオルを食卓の自分の椅子の背もたれにかける。
「値上がりって…どういうこと。どれくらい?」
ミアは胸がざわざわしてくるのを感じながら聞いた。
「普段なら50ルヒアで5個買えるのだけれど、今日は10万ルヒアで3個セットになってたわ。」
ルヒカラ王国の通貨はルヒアだ。
10ルヒアで駄菓子が3個ほど買える価値がある。
10万ルヒアといったら、二ヶ月間家族を養える価値があるだろう。
ミアとアクトは静かな緊張した空気の中に吐き出された言葉が重くのしかかってくるのを感じた。
お使いを頼まれる時、リストの中には必ずコロモロが入っていた。
10万ルヒアなんて見たこともないし使ったこともない。
生まれた頃からずっと当たり前のように食べてきた主食の一部が遠いところに行ってしまう予感がする。
たった一つの作物に手が届かなくなってしまうだけだが、ルヒカラ国民としては大きな壁に面しているに違いない。
日常が崩れるのは嫌だ。
一体何故そんなに値上がりしたのだろうか?
「マストレード王国に何かあったに違いないわ。」
ミアの表情から気持ちを汲み取ったのか、アマリアが口を開いた。
アクトがハッとする。
「不作が続いてるとか?」
普段穏やかな気候のマストレード王国も天候が酷く崩れることはおかしいことでない。
あって当然のことだ。
もっと考えれば、コロモロの栽培域の中でコロモロの伝染病が流行っている可能性だってある。連作障害かもしれない。
少しの間辛抱するだけ。
別に一生コロモロが食べられなくなるわけでもない。
何よりマストレード王国ならそんなの軽々乗り越えて、またさらに美味しいコロモロを作ってくれるはずだ。
自分はマストレードを信じて待とう。
二人とも、同じことを思ったのだろう。
同じ決意の表情を見せる二人の我が子の顔を見て、アマリアは微笑んだ。
3人家族は何事もなく、その日を終えた。
その日が思えば国々を巻き込んで大波乱を起こす大冒険の最初の1日目だったのかもしれない。