コメディ・ライト小説(新)
- Re: リベンジ インフェクション ( No.13 )
- 日時: 2019/06/22 22:48
- 名前: 柞原 幸 (ID: Ytr7tgpe)
『フロッド=ルーベン。
彼は優秀な警備隊員です。
すぐに偵察者としての任務を快く引き受けてくれました。
きっとこの先のルヒカラ王国の未来に光をもたらす偉大な人物となるでしょう!
彼が偵察を終え、ルヒカラ王国に帰ってくるまで、道のり的に約一ヶ月はかかります。
それまでスパイ行為や、情報漏洩により国に危険が降りかかるのを防ぐ為、一切の外国への外出を禁止します。
門を閉ざすので、近づかぬ様。』
ルヒカラ王国では、国の外に出るのに門に行かなくてはならないという制度がある。
門からしか外に出てはいけないのだ。
そしていざ外に出るときは誰かに付き添って見送ってもらわなくてはならない。
しょっちゅう門の周りには外国に行く人を見送る家族や友人で溢れている。
しかしたった今、それもしばらく禁止されることとなった。
流石に黙って話を聞いていた人々も名残惜しそうだった。
「フロッド、ルーベンさん?って人?いい人だね…!」
「ありがたいねぇ、これで少しは安心して暮らせるよ。」
また一方でフロッド=ルーベンに対する反響も凄まじい。
『以上で王宮からの臨時の報告を終了とさせて頂きます。
さぁ、皆さん。フロッド=ルーベンに盛大な拍手を!!!』
ロトの声と同時にブワッと拍手の嵐がおこった。
国民達は一人の勇敢な警備隊員に対して心からの敬意を払いながら手を懸命に叩いた。
放送が途切れると広場には人々の盛り上がる様な熱気だけが残った。
ーーーーーーーパサ。
土の地面に透き通った綺麗な緑色のペリ草が散らばる。
広場から、数百メートル離れた八百屋の前だった。
「ちょっと、お客さん?ペリ草全部落っことしましたけど。どうしました?
今の放送がそんな衝撃的だったんですか?
僕的には後の笑い話ですみそうな気がするけどな…。
だってマストレード王国と戦争だなんて、ないない!
皆疲れたから一週間だけお昼寝week!とか馬鹿なことやってるんですよ!きっと!
…でも万が一の時にも備えておかなきゃな。
万が一の時だったら、偵察者はもう戻っては来ないだろうけどよ。」
野菜に囲まれながら一人でペラペラと喋る八百屋の店主は自分でゲラゲラと笑った。
「……さん。」
「え?」
店主は笑うのをぴたりと止め、目の前の女の子と男の子に目を向ける。
二人とも固まり、顔が恐怖の色に染まっているのが分かる。
カタカタと小刻みにも震えている。
「…は?お前らまさか…。」
「お父さんが、偵察者だなんて。」
ミアとアクトは事実を受け止められず、目の前で困惑する店主と、散らばったペリ草を前に、拳を握りしめ、佇んでいた。
皮肉なものだ。
もう少しでようやく会えると思っていたのに。
ミアは悲しげな笑みを浮かべ、広い空を見上げる。
勿論父親を何が起きるかわからない地へ命の危険があるまま、黙って行かせる気は無い。
どうにかしなければ。
ルーベン家の姉と、弟は同じ決意をお互いの目線を交わして固める。
これしか無い。
反抗するのだ。
ルヒカラ王国に。
自分達で父を守る。
ギギッ、と扉の開く、始まりの音がした。