コメディ・ライト小説(新)
- Re: リベンジ インフェクション ( No.18 )
- 日時: 2019/06/25 23:28
- 名前: 柞原 幸 (ID: Ytr7tgpe)
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「くそっ。流石に暑すぎるだろ…!!」
ジリジリと太陽が大地を焼き付ける、南の都。
その都の中にある王宮の門の前で一人の金髪で背の高い門兵が心の中で限界の叫びをあげていた。
彼の名前はカール。
カールは家族の勧めで王宮の警備軍隊に所属していた。
北の都出身であったので、寒さの中では鋼のように強いのだが、こんな暑さを経験したことがなかったせいで、今は溶けたアイスクリームのようになってしまっていた。
「はぁ…。こんな思いをする為に警備軍隊に入ったわけじゃないのに…」
一週間連続で同じ仕事をしてその度に同じことを思う。
なぜ暑さに弱い北の都出身の新米警備員を重要な役の門兵なんかに指名するのだ。
南の都を舐めていた。
暑さの為、目も霞んできて、気を保っているのがやっと。
もしかしたら軽い脱水症状が出ているのかも知れない。
意識もぼーっとしてきたので、持っている武器用の槍でガリガリと地面を削る。
そうでもしないと気が狂ってしまいそうだから…。
ああ、暑い。
「おい新入り。」
声が聞こえてカールはハッと顔をあげた。
そこには身長176cm程の黒髪の若い男が立っていた。
「あっ、ルセル先輩…。」
そう気づくなり、力を振り絞って気をつけの姿勢を作り敬礼する。
ルセル=ローベはカールの上司だった。
まだ25という若さだが、最高指導官の右腕と呼ばれる程の実力者である。
今年入ってきた新米警備員達を指導する教官としての役割も担っているので、カールはルセルの顔をよく見知っていた。
…まずい。槍で地面を削っていたのを見られたかも知れない。
サボっていたとバレたら勿論すぐクビになる。
カールは暑さの為ではない汗も大量に噴きだしてきた。
ルセルはカールが槍で地面を削っていた部分を見、そしてカールの顔を見た。
「脱水を起こしているな?」
「…!」
ジッとカールを見るルセルは尋常ではない量の汗に目をやっていた。
「す、すみません…。もう水を飲み尽くしてしまって…。」
カールは地面に置いていた空の水筒を手に取り、振ってみせる。
もう1時間ほど前に水筒の水を飲み尽くしてしまっていたのだが、持ち場を離れることができない為、喉が渇いていても水を飲めなかったのだ。
「謝らなくていい。お前、北の都出身のカール=ファイネンだろ?暑さに弱いのもしょうがない。…だが、生憎俺もお前に分けてやれる水がない。」
「だ、大丈夫です。まだ頑張れますから…。それより、失礼ですが、何故ここに?」
本来ルセルのような上位の警備軍隊は王宮で仕事をするはずだ。
実際ルセルとの話もこれが最初であった。
「マストレードとの一件があっただろ。あれが原因で今王宮は警備を最大レベルに引き上げている。特に今日はフロッド=ルーベンが旅立つ日だ。俺もこっちに回されたんだよ。」
日差しの眩しさに目を細めながらルセルが言う。
非常用アナウンスが流れてから今日で3日目。
フロッド=ルーベンの出発日。
カールはぼーっとした頭でなんとかルセルの言葉を理解しようと頑張っていた。
「というかお前、本当に大丈夫なのか?俺が見ててやるから一旦王宮に戻ったらどうだ。」
「い、いえ…。先輩に仕事を任せるわけには…。」
カールはとんでもない、といった様子で手を振る。
もし先輩に仕事を任せて自分だけ休んでいたことがバレたら即クビだ。
ましてやルセル先輩に押し付けるなんて。
でも喉は御構い無しに乾き続けているし、頭は暑さでガンガンと痛い。
どうすればいいのだ。
「お兄ちゃん大丈夫?」
突然、子供の声がした。
カールは呼ばれたのが自分であることに気づいて、振り向く。
10歳、いや、8歳くらいだろうか。
目を向けた場所には、細く綺麗な白い肌をした小さな男の子が上目遣いで立っていた。