コメディ・ライト小説(新)

それでも彼らは「愛」を知る。 ( No.106 )
日時: 2023/03/09 00:32
名前: 猫まんまステーキ (ID: gb3QXpQ1)





 「―――よし。ひとまず話は終わったってことにしていいか?」
 「は?」
 「俺は千代のところにいく。お前は?」
 「え?は?チヨ……?誰ですかその人は。ていうか、この話の流れでよくそこまで明るく切り替えることができましたね情緒どうなってんですか」

 ノアはジトっとした目でこちらを見ていたがそんなものはお構いなしだ。

 「千代は俺の一番大切な人だ」
 「大切な――ってちょっと!」

 俺が歩き出すとノアもその後をついてきた。

 「……まぁでも、あなたたち魔族も人間のような営みをしているのは大変興味があります。人間のように恋をし、誰かを愛すことがあるのか、と」
 「おいおい俺らを何だと思ってるんだ」
 「強力な魔力を持つが故に人々を脅かし、支配し、頂点に君臨しようとしたと言われている魔族にもそのような心や感情があったのかと思っただけです」
 「だーかーらー別に俺たちはそんなことやったことないって言ってるだろう」
 「……」
 「俺たちはここで‥きっとお前のいう『人間のような』暮らしをしていただけだ。――そこにある日勇者がやってきて、俺に戦いを挑んできた」
 「――まぁ、彼女ならやりかねない」

 思い当たる節があるのかノアが呟く。

 「始めはお前たちのように敵意むき出しだった。何度も俺に戦いを挑んでは負けての繰り返しだったよ。それはもう笑っちゃうくらいにな。――けどあいつは俺たちの大切なものを一緒になって大切にしようとしてくれた」



――そうだ、あいつはそういう人間だった。



 「敵だ、魔族だ、と言っていたのにも関わらずそれでも、と歩み寄ろうとしてくれた。俺たちと一緒に笑って過ごしてくれた。それだけでも俺は嬉しかったよ」


 常に全力で、一生懸命なあいつだったから、この城の奴らを変えることができたんだろうな。


 「魔族がとか人間がとか、誰が正義で誰が悪かとか正直俺にもわかんねぇよ。けどな、




―――俺はそんな風にもがく勇者の事を好ましいと思っている」


 


 「……まったく。相変わらずですねあの人たらしは。そうやっていつも彼女中心に周りを巻き込んでいく」
 「アッハッハ!!!!人たらし!!!確かにそうだなぁ!!」
 ノアの言葉に妙な納得感を覚えて思わず笑ってしまう。



 ああ、あいつならきっとこの世界だって――――‥














 「…‥‥‥‥‥‥‥‥‥あ?」








 世界だって、







 「………………なん、」







 世界だって、変えられる。









 「………………千代?」










―――――――本当に?