コメディ・ライト小説(新)

それでも彼らは「愛」を知る。 ( No.11 )
日時: 2019/10/13 21:00
名前: 猫まんまステーキ (ID: rFnjVhnm)

「あぁもう腹が立つ!!なんだってあいつはああいう言い方しかできないんだ!」

イライラする気持ちをおさえつつ、相変わらず無駄に広い廊下を一人で歩くのだった。


Episode3『勇者と侍女とあの花は、』

「ああもう!!どんだけ広いんだよこの屋敷は!!」

さっきから歩いても歩いても景色があまり変わらないことにいら立ちを募らせながら、けれど歩くことしか今は出来ないので仕方なく歩いていた。

「――あれ?」

歩いていて気づかなかったがふと、窓を見るときれいな花が咲いていた。


「‥‥綺麗」

思わずため息がでてしまうほどきれいなその花の木は風が舞うと花びらが散ってより一層綺麗さと儚さを演出しているようにも感じられた。

「こんなところにもこんな綺麗な花が咲いているんだな」

なんてのんきなことを考えていた。


「あっ!!あの人じゃない!?龍司様達がいっていた人間!勇者だよ!」
「‥‥多分、そう」


大きな声が聞こえて振り返るとそこにはあたしより背の低い二人の少女がたっていた。

「ルカ、そんなに近づいちゃダメ。宮司様も言っていたでしょう?何をするかわからないって」
「えーでもそんなに悪そうな人かなぁ?ちょっとだけ!ちょっとだけだから!」
「ルカ、」
「こんにちはー!」

突然距離を詰められて思わず後ずさりをしてしまった。何なんだこの子たちは‥‥!!

「ねぇねぇあなたが龍司様たちが言っていた勇者?私の名前はルカ!この屋敷の侍女ってのをやってるの!」

笑顔で話しかけてきた侍女は頼んでもいないのにぺらぺらと話し出した。

「勇者!あなたの名前は?」
「‥‥‥‥シュナ」
「シュナ!へぇ!ねぇ、勇者はどこから来たの?」

名乗った割には勇者呼びをしてくるこの侍女はあたしを置いてどんどん話しかけてきた。

「ルカ」
「ああごめんね!そういえば千代様がまだ疲れてるだろうからあまり騒がしくしちゃダメって言われてるんだった!ごめんなさい勇者!」
「いや別に‥‥」

相変わらず客人扱いする千代という人にも戸惑いを覚えつつ、それでもまだルカは話し続けた。

「遠い所から来たんだよね!龍司様が言ってた!私も遠い所の村に昔住んでたんだよ!今はここに住んでいるんだけどねー!あ!でもでも、ミラ――あ、この子がミラね!ミラも結構遠い所の出身なんだって!知ってる?吸血鬼って――」
「ルカ!」
「あ、ごめん‥‥」


何度目かの声掛けでようやく我に返ったのかばつが悪そうに笑った。


「‥‥ミラ。この子と同じで侍女をやってる」
「‥あ、あぁ‥‥」

「ねぇ、勇者は、私たちを殺すためにやってきたの‥?」


不安そうな目。こちらを伺っている様子が痛いほどわかる。


「‥‥えっと、」

うん、と言えばいいのに。実際そのつもりだと、お前たちを倒すためにやってきたと。

「‥‥そうだ。あたしは村を脅かす魔王を倒すためにここへ来た。邪魔をするなら誰であろうと切るつもりだ」
「―――‥そっか」

始めからそのつもりだ。なのに彼女の悲しそうな顔を見るとこちらまで悲しくなってくる。

アタシが悲しむことなんて、何もないのに。

なのに言葉がうまく出てこない。