コメディ・ライト小説(新)

それでも彼らは「愛」を知る。 ( No.12 )
日時: 2019/10/13 22:32
名前: 猫まんまステーキ (ID: rFnjVhnm)



「‥‥ところで勇者はさっき窓をみていたけど何見ていたの?‥‥あぁ!」

静寂を遮ったのはまたしてもルカだった。

「サクラ見てたんでしょ!」

「―――――サクラ?」


聞きなれない言葉に思わずルカの方を見る。

「そう!なんでも、東の方のずっと果ての方にある地域で咲いていた花なんだって!宮司様が好きでここにも植えたんだよ!」

「‥‥へぇ」

「このくらいの季節になると毎年咲くの!とーっても綺麗でしょ?」

「あぁ‥」

「この時期になると毎日宮司様は見て嬉しそうにするの!」

「ふーん‥」

別に宮司の事は聞いても特に興味はなかったがこのサクラというものには惹かれるものがあった。


「確かに、綺麗だとは思う」

「でしょ?私もミラもお気に入り!みんなの大好きな場所なの!」

「‥‥‥」


魔王や、その仲間たちがこうして人間のようなことを当たり前のように話すのが不思議でならない。


現に今目の前で話しているルカやミラなんてまるで自慢話をする子どものようにみえる。


「じゃあ私達はお仕事に戻るからまた会えたら会おうな!!」



そういってルカはミラを連れてどこかへ行ってしまった。

「(まるで次があるような言い方‥)」


その言葉に違和感を覚えながらもしばらくサクラを見ていた。


 ◇◇◇



「‥‥‥なんだ、まだいたのか」

「‥‥げ」

サクラを見たからなのかなんだか気分が良かった。鼻歌なんて歌いながら歩いていたらまたあの魔物に出会ってしまったのだ。思わず変な声が出てしまった。



「‥‥ハァ、」


あたしを一瞥するとまた窓の方に目をやっていた。


「(‥ああ、そうか)」


こいつも、サクラを見ていたのか。


宮司の目線の先を見るとやはりそこにはサクラが咲いていて、


風に舞うと花びらがひらひらと舞っていた。


――――『この時期になると毎日宮司様は見て嬉しそうにするの!』


先ほどのルカの言葉を思い出す。



確かにあの花を見ている時のこいつの顔は


「(‥心なしか穏やかだ)」



なんだ、なんだって皆、そんな顔をするんだ。









「(まるで人間みたいだ)」