コメディ・ライト小説(新)
- それでも彼らは「愛」を知る。 ( No.13 )
- 日時: 2019/10/13 23:59
- 名前: 猫まんまステーキ (ID: rFnjVhnm)
そうしてこうしてこの屋敷に転がり込んで気づけば一週間がたっていた。
Episode4『絆されて、解されて』
‥‥‥‥‥‥‥あれ?
あたし、何やってんだ?
「勇者ちゃん、これもあるわよ~」
「わぁ‥ありがとう、ございます‥おいしそう‥」
「でしょう?ルカとミラも頑張って作ってくれたの。どんどん食べてね」
「いただきます‥」
「ふふ」
気付いたら毎日のようにご馳走を食べ、よく眠り、よく鍛錬をして過ごしていた。
なんだこの快適ライフ。
「おいそれよりなんだよ勇者さっきの軟弱な腰は!そんなんじゃいつまでたっても俺を殺すことはできねぇぞ!」
「うるさいなぁ!!黙ってて!」
「おいルカ、ミラ!お前ら今度勇者と手合わせしてやったらどうだ!そうだ、それがいい!」
「勝手に決めんな!」
気付いたらこの屋敷の住人と何の違和感もなく会話をしていた。
「―――――‥」
前言撤回。こいつだ。宮司だけは相変わらず不機嫌そうな目であたしを見ていた。
「(まぁでも本来ならきっとこの状況が異常なんだろうけど)」
殺されるどころか逆に歓迎されもてなされる日々。本来ならこんな状況が異常だといえる。
相変わらず魔王はうるさいし千代さんの作るご飯はおいしいしルカやミラはいい子だと思う。
ただ一人を除いて。
「(あたしだってあんたと食べるのなんてごめんだっつーの)」
それにしても、と思う。
あたし、絆されすぎていないか‥?
「複雑だ‥‥」
「どうしたの?勇者」
「いや、なんでもない‥」
ルカのぱっちりとした黒い目とかち合う。ルカもルカで何とも思ってないのかなぁ、なんてのんきなことを考えていた。
「――それにしても‥」
千代さんがちらりと窓の外を見た。
「最近雨がひどいわね‥それに段々雨風が強くなってきてないかしら‥?」
「んあ?そうか?」
「そうよ龍司!このままだとサクラ、折れちゃわないかしら‥?」
サクラ、という単語にかすかにだが宮司が反応した。
「そうですね、確かに少し、危ないかもしれないですね」
「えー大丈夫だろ!」
「兄さんはもう少し危機感を持った方がいいと思いますよ。いろいろと」
そういいながらちらりとあたしを見た。
「‥‥何よ」
「いいえ別に」
「お前らなぁ‥」
龍司は呆れた声を出しながらもどこか楽しそうだった。