コメディ・ライト小説(新)

それでも彼らは「愛」を知る。 ( No.19 )
日時: 2019/10/23 23:50
名前: 猫まんまステーキ (ID: rFnjVhnm)


 

 それは遠い昔、昔のお話。


 Episode6『かつての泣き虫だった君へ』
 

 「あぁこれだから魔族の奴らは!そうやって人間を下に見ることしかできないのか」

 「これはすみませんね、ただ俺は勇者がまだいたのでてっきりもう『魔王倒し(笑)』というのは終わったものだとおもっていました」

 「はぁ?なんだその言い方!まだ終わってないし絶対お前も倒してやるからな!」

 「己の実力を知ってさっさと帰る準備をしたらどうです?」

 「あぁうるさいうるさい。そうやってネチネチとしか言えないお前が不憫に思えてくるわ」

 「失礼、つい笑ってしまいました。本当に無知なのですね、憎悪を通り越して呆れてむしろ同情します、勇者」


宮司様と勇者は顔を合わせれば言い合いばかり。

 「あきねぇなぁお前らも」


なんて龍司様が二人を見て笑っている。


数週間前までは二人とも顔すら合わせなかったのに今やこうして口喧嘩をしていると考えれば少しは距離は縮まったのだろうか。



 「まぁまぁ勇者、あまり怒らないであげて。宮司様は人間があまり好きじゃないから‥」


そうフォローを頑張って入れてみたがまったく効果がないみたいだ。


 「そりゃぁ人間が好きだったらあんなぺらぺらと悪口はでてこないだろうね!!」


千代様が入れてくれたお茶を飲みながら勇者はまだ不機嫌そうだ。

いつのまにか宮司様はどこかへ行ってしまった。



 「‥‥‥そうだ!勇者!ちょっと気分転換しようよ!」

 「え?」


 ◇ ◇ ◇


 「じゃーーーん!!!ここ、私のお気に入りの場所でーす!!」

 「‥ってここ屋根の上じゃん!!」


気分転換に私のとっておきの場所につれてきたのに思った反応ではなかった。むぅ、頑固だなぁ。


 「でもここ、風が吹くと気持ちいいしサクラもよく見える!気分転換にはもってこいの場所だよ!」


そういうと勇者は少し納得してくれたのかしぶしぶ腰を下ろした。



 「‥‥ありがと、ルカ」

風でかき消されそうな声。でもしっかりと聞こえたその言葉に私はにんまりと笑うのだった。


 「どういたしまして!ねぇ勇者!勇者のこと、もっと教えてよ!勇者は遠い所から来たってきいたけど、どこから来たの?」



人間は、どこか閉鎖的で偏見があって、案外臆病だ。



そんなことをどこかで聞いたような気がするし、実際に感じたような気もする。


大の人間嫌いである宮司様は相変わらず勇者の事を敵視しているけれど。



 「(なんかこの勇者、悪い人ではなさそうだなぁ‥)」



なんて考える私は甘いのだろうか。



 「お話しようよ勇者!勇者のこと、もっと教えて!!」






それならまずは、お互い知ることから始めましょうか!