コメディ・ライト小説(新)
- それでも彼らは「愛」を知る。 ( No.23 )
- 日時: 2019/11/11 22:46
- 名前: 猫まんまステーキ (ID: m9ehVpjx)
「‥よし、あとは解熱作用のある薬草を買えば終わりか‥」
「そうですね」
無駄口をたたきたたかれながらなんとか千代さんから頼まれていたものを買いそろえることができそうだ。
「‥そういえば一つ気になったんだけど、魔族でも病に侵されることってあるのか?」
「まぁ‥人間ほどやわではないですが。不治の病というものもあまり聞いたことがないので今回のミラのケースも比較的早く回復するとは思います」
「ふーん‥そっか‥‥なら、いいんだ‥」
「‥‥‥」
「あ、そうだ。あとさー」
「一つって言ったじゃないですか。‥‥なんですか?」
「ずっと気になっていたんだけど今まで払ってきたお金ってどこから出ているんだ?」
「――‥主に貿易や商いをやっているといった方が早いですかね。兄さんや俺は酒や穀物を商人に売ったり千代さんは薬が作れるので薬を作ったり‥あと小物なんかも作っているのはよく見ますが‥それらをルカやミラが町へ出て代わりに売ったりしているんです」
「‥人間から何かを奪っているわけではないのか」
「当然でしょう。案外我々は自給自足の生活を送っているんです‥だから知識のない偏見ばかりの人間が嫌なんだよ」
最後はやはり嫌そうな顔をした宮司だったがそれよりも、魔王たちが自分たちの力で生活しているという事実に驚いていた。
「‥‥じゃあ、なぜあのような話が伝わっていく‥‥?」
いよいよ混乱してきたその時だった。
「きゃぁぁあああ!!!!」
「!?」
近くで悲鳴が聞こえた。
「どうやらひったくりですね。勇――」
気づいたら体が先に動いていた。
「勇者!?」
宮司の声が遠くなっていくのを感じながらひったくり犯を追いかける。
あぁ、宮司に半分以上持ってもらっていた荷物にいら立ちを感じていたがまさかこんなところで役に立つなんて。
(かなり身軽で追いかけやすい!)
「待て!!!」
あと少しで手が届く、はずだった。
「えっ!?」
突然犯人が振り向き、荷物を盾にあたしに向けてナイフを振りかざした。
「ちょっ、おい!まてっ!」
「うるさいうるさい!!死ね!!」
よけながら距離を置き、どうやら相手は激情して我を失っているということに気づく。
「勇者!」
やっと追い付いてきた宮司に気をとられたすきにあっという間につかまってしまっていた。
「えっ?あっ!!」
「馬鹿ですかあなたは!!」
「宮司ぃ‥」
ナイフを持っているため周りの人間も近づくことができなかった。
「お前、勇者なのか‥おい連れぇ!お前、この嬢ちゃんの仲間か?こいつ殺されたくなければ有り金全部おきな!さもなくばこいつを殺すぞ!」
頬にナイフが当たる。ちらりと宮司を見ると、あぁ、なんて面倒くさそうな顔。
「はぁ、よりにもよってこの人と同じ仲間とされるなんて‥だから面倒だと思ったんだ‥」
盛大なため息とともにこちらへ近づいてくる宮司。
「くっ‥来るんじゃねぇって!!おい!こいつがどうなっても――」
「どうぞ、ご勝手に」
「へっ‥?お、おい、お前何言って――」
「勇者も、いつまでそんなおとなしくしているんですか?今のあなたと俺の利害は一致しているはずだ。あなたならこれくらい、すぐに片付くでしょう?」
「でもっ、」
「不服ですが、周りへの防御はしておいてさしあげますよ」
「‥‥なら」
「おい!さっきから何話してっ‥」
一瞬だった。宮司が防御層を作りあたしと犯人と宮司の三人だけの状態にしたあと、犯人の腕に空いたわずかな隙間から手を入れ、油断しているところを一気に背負い投げた。そしてナイフを奪い、額に当てる。
「これでも一応、『勇者』だからな」
「そういっているあなたの顔、今最高に悪人のような顔していますよ」
「なっ!?」
そんなやり取りをしていると外から歓声が響いた。
「‥へへ」
「だから嫌だったんですよ。変に目立つし、面倒だ」
「でも宮司も助けてくれたじゃん。『人間』を」
「あなたが先に行動したからです。それを放っておいた方が面倒だと思ったので」
そう、話していた。向こうが完全に戦意は喪失していると思っていた。
「――――――っ死ね!」
「‥っ!?」
「――勇者、」
パン!!!パン!!!!!
二つの銃声が、鳴り響いた。