コメディ・ライト小説(新)
- それでも彼らは「愛」を知る。 ( No.24 )
- 日時: 2019/11/29 01:07
- 名前: 猫まんまステーキ (ID: m9ehVpjx)
「―――まったく。最後に油断しているからこんなことになるんですよ」
「‥それは返す言葉もない‥」
ことの顛末はこうだ。
あのあと、実はまだ戦意を喪失していなかった犯人にあたしはかなり油断していた。
ナイフだけだと思っていたその思考は、左ポケットから出された拳銃により覆されることになった。
一つ目の弾は反射的によけたが二つ目は運悪くあたしを引っ張って避けさせようとしてくれていた宮司の右頬をかすめてしまった。
「そういえば、一人で避ける事だってできたのに、なんであの時あたしの腕を引っ張ったんだ?」
「‥‥あなたがとろそうに見えたからですかね?」
「なんだと?」
犯人はあとから来た守衛の人に連れていかれ、荷物は無事持ち主のところへ戻った。
持ち主からは大層感謝をされ、お礼にとこの町一番といわれているケーキまでもらうことになった。
「ケーキまでもらったぞ宮司!これホールだから皆で食べることができるな!」
「はいはい」
宮司にてきとうに受け流されながらちらりと顔を見ると、まだ頬に少し血がにじんでいた。
「‥まだ、痛むか?」
「‥‥いえ。痛いというわけでは」
「‥ごめんな。あたしが油断したばかりに」
「‥‥‥」
「あの時、反射的にでもなんでも、あたしを守ろうとしてくれたのには感謝する‥ありがとう」
「――別に。あなたにもしものことがあると千代さんたちが悲しむと思ったからです」
呆れられながら返される返事に少し嬉しさを感じながら静かに笑った。
「あ、そうだ。宮司、ちょっと頬貸してよ」
「え?何でですか‥」
そういいながらも宮司は少しかがんでくれた。
「えっ、ちょっと、勇者?」
そのまま宮司の右頬にあたしの左手のひらをのせ、呪文を唱える。
すると手から白い光がはなたれ、傷はあっという間になくなった。
「はい!せめてものお詫びだ!あたしが使える数少ない魔法なんだけどな、このくらいの傷なら簡単に治すことができ――」
ここまで話した時、自分と宮司の距離が異常に近いことに気づく。
「‥る、んだ‥これで痛くもなんともないだろ‥」
「え、えぇ‥たまには役に立つ魔法も使えるんですね」
「ひっ、一言余計なんだよお前は相変わらず!」
「おや、さっきの勇者かい」
ちょうど最後の薬草を買う店で店主に声を掛けられた。
「さっきあたしも見ていたんだよ。いやぁすごかったよ!息もぴったりでさぁ!あんたたち、恋人同士で勇者のパーティ組んでいるのかい?」
けらけらと笑う店主に顔が熱くなるのを感じた。
「「違います!!」」
同時に否定するあたしたちをみてまた更に笑う店主がうらめしい‥。
◇◇◇
「ただいまぁ」
「ただいま帰りました」
「あらあら勇者ちゃん!宮司!お帰りなさい!!ありがとう!‥なんだかとても疲れているようにみえるけれど‥」
「ええ、まぁ‥」
「ちょっといろいろあって‥」
帰った先で出迎えてくれた千代さんを見ると二人してどっと疲れが出てきた。
「‥‥あら?二人とも、荷物はそれだけ?」
「えっ?」
千代さんがあたしたちを指さす。
「あれ?」
「えっ?」
そして宮司が乾いた笑いを漏らした。
「勇者‥‥あの、荷物は‥」
「‥‥えっ?‥あっ‥あーーーーーーーー!!!!!!!!!」
そして気づいてしまった。
あたしが持っていた荷物をすべて町の薬草売り場に置いて行ってしまったことを。
「うわぁぁぁぁあ!!えっ、どうしようどうしよう!もぉぉまた町に戻らないといけないよ!!!」
「―――――‥ふっ、アハハハハハハハハハハッ!!!!!」
焦って取り乱すあたしとは対照的に肩を震わせて盛大に笑っている宮司の姿がそこにはあった。
「――――‥宮司‥?」
「ハハッ‥あー、笑いました。失礼勇者。あなたがあまりにも‥フフッ‥まったく、仕方ない人ですね」
ひとしきり笑ったあと
「そうか、だからあなたは――、」
何かを納得したような、呆れたような、顔をした。
「ほら、何やっているんですか。さっさとあの薬草売り場に戻りますよ」
「えっ!?あっ、ついていってくれるの?」
「まぁ半分は俺の監督不行き届きのようなものですしね。ここまできたんです。どうせなら最後まで付き合いますよ」
相変わらず一言余計だ。
けれど不思議と嫌な感じは、しなかった。
「‥ということで、すみません、千代さん。もう少しかかります」
「えぇ、わかったわ。気をつけてね~」
「もう一回!いってくる!‥ってちょっと宮司!早いよなんでそんな早歩きで行くんだよ!!」
どうやら宮司との買い物はまだまだ続くようだ。
あぁ、でも少しだけ
「~~~~!!」
楽しくなっている自分がいる!