コメディ・ライト小説(新)

それでも彼らは「愛」を知る。 ( No.29 )
日時: 2020/02/10 22:41
名前: 猫まんまステーキ (ID: m9ehVpjx)




 「‥で?例の少年はとやらはどんな顔をしているんだ?」
 「えーっと確か、背は勇者よりも小さくて黒髪で‥」

 次の日、結局四人で町へ向かい例の少年を探すことになった。
 昨日よく眠れなかったのかそれともそのやり取りに辟易しているのか、少し落胆している勇者のことには誰も触れないようだ。

 「宮司様、」
 「え?」
 「‥の、ようなきれいな黒色の髪でした。ね、勇者」

 視線が俺に集まる。

 「‥えっ、あぁ、まぁ‥」

 一瞬ちらりとこちらをみた勇者はその後思い出したかのように

 「うん、確かに綺麗な黒髪だった」

 とつぶやくように言った。

 「‥‥そう、ですか」
 思わず照れてしまいそうになる、だなんて。自分が馬鹿みたいだ。


 「あっ」
 「あ‥?」

 噂をすればなんとやら。きっと目の前にいる人間が件の少年だというのはすぐにわかった。

 「‥また会えた。今日こそ名前を聞きたい」
 「えっ‥と‥」
 
 まったく。自分よりも年下の人間に何をそんなたじろいているんだか。

 「勇‥いや、シュナよ。自己紹介くらいはしたらどうだ?」

 完全に面白がっている穂積がわざと勇者の名前を呼んだのを少年は聞き逃さなかった。あぁ、そういえば彼女はシュナというんだったっけか。

 「――シュナ、というのか。いい名前だ。できればあんたの口からもう一度聞きたい」

 となりでルカがほぅ‥と感嘆の声を漏らしていた。まったく、どう生きていたらそんなに歯の浮くような言葉が浮かんでくるんだ。

 「‥シュナだ」
 「シュナ‥うん、やはりいい名前だ。俺の名前はカナメ。なぁ、シュナは今恋人や想い人はいるのか?」
 「えっ!?いっ、いない!いないよそんな人なんて!」
 「よかった。ならばこれから仲良くなっていきたい」
 
 照れながら笑う少年とどうしたら良いかわからなくなっている勇者と。

 「‥おもしろくなってきたよなぁ?」
 
 そして含み笑いをしながらこちらを見る神が一人。