コメディ・ライト小説(新)

それでも彼らは「愛」を知る。 ( No.33 )
日時: 2020/02/15 23:56
名前: 猫まんまステーキ (ID: m9ehVpjx)



 「だいぶ打ち解けた様子ですねぇ。勇者とカナメ」
 いつの間にか俺たちのところへ戻っていたルカがしみじみと語りだした。
 
 「あの二人、本当に恋仲になったらどうなるんでしょうか‥まさか、二人で城に攻め込んでくるんじゃ‥!」
 しまった、という顔をするルカに「いや、それはないでしょう」と声を掛けた。

 「そうですか‥?」
 「まぁ、勇者は少なくとも‥」 
 「まるで勇者の事ならわかるといった口ぶりだな」
 「そんなの勇者をみてれば――」

 そこまで言ってハタと気づく。

 「‥『勇者を見てれば』ねぇ‥」

 目ざとく穂積がつつきだす。

 「――別に深い意味はないですよ」

 そう、深い意味はないのだ。

 「……あ、」
 「「あ?」」

 ルカが声を漏らしたその先にはやはり勇者とカナメがいて。

 カナメがゆっくりと、勇者の髪に触れ――――

 



 「――――っ、シュナ」



 思わず、声が漏れていた。
 
 口から出たそれが何か少し時間がかかった。中々聞きなれないその単語は、そうだ、そういえば彼女はシュナという名前だったなと、頭の隅で考える。

 言葉となって出たそれは彼女の耳にも届いたようで

 一瞬疑問符を浮かべていた彼女がやがて驚いた顔をしていた。

 「宮司……?」
 「もうそろそろ帰らなければいけない時間です。千代さんたちも心配してしまう」
 「あっ、あぁ‥‥うん、そうだな」
 「……」

 そしてまたカナメの方を向く。

 「今日は楽しかった‥‥とても。ありがとう‥その、告白、も‥嬉しかった‥けど、今はやっぱり付き合うとか恋仲とか‥‥考えられない。それよりも大事なことをやらなくちゃいけなくて」
 「……そっか」
 「あっでも、友達!!友達でいいなら!また会おうよ!」
 「‥‥ハハッ!シュナはおもしろいなぁ」
 「えぇ‥?あたし何か面白いこといったか‥?」
 「いや、こっちの話。‥‥うん、ありがとう。じゃあ友達ということで」 

 
 そして勇者の髪にすっと触れた。

 「ゴミが髪の毛についてたんだ」
 「え?あ、あぁ‥ありがと」

 心なしか俺の方をみて言ったのは、気のせいか。


 「じゃあまたね」
 「うん‥また!」

 こちらへ走ってくる勇者。「おまたせ」なんて言う顔はどこかほんのりと赤い。そしてそのままルカと穂積と一緒に歩き出した。

 「―――‥あーあ。残念だなぁ」 
 「……」
 「あんた、シュナの事好きなの?」
 「……まさか」
 「ふーん」
 
 そして俺を見てにっこりと笑った。

 「じゃあ、あんたもまた」


 そういってカナメは俺たちとは反対方向に歩いて行った。

 「あれ?宮司?何してんだ?早くいくぞー?」
 「‥あぁ、はい」


 こうして、


 日の暮れた町並みをぼんやりと眺めながら、勇者たちのもとへ向かうのだった。