コメディ・ライト小説(新)

それでも彼らは「愛」を知る。 ( No.34 )
日時: 2020/02/15 23:59
名前: 猫まんまステーキ (ID: m9ehVpjx)

 
   ―ある日の勇者と宮司―

 「……このケーキうまいな!」
 「そんなにがっつかなくてもケーキは逃げませんよ」
 「ふぉうゆうわけじゃ、はいんがけど……」
 「食べるかしゃべるかどっちかにしてくださいよ」
 「んぐ‥‥そういうわけじゃ、ないんだけど‥」
 「まったく‥本当にせわしない人ですね。落ち着いてケーキを食べることもできないのですか」
 「だっておいしくてつい‥千代さんたちも一緒に食べればよかったのにな」
 「仕方ないでしょう。たまたま皆出払ってて俺たちしかいなかったんですから‥残りはきちんと取っておくので問題ないでしょう」
 「それにしても、人助けをするといいこともあるもんだなぁ‥まさかこんなにおいしいケーキをもらえるなんて!」
 「まぁ‥‥それに関しては‥‥少しだけよかったかなとは思いますが――」
 「あ、この茶もうまいぞ!どうしたんだ?これ」
 「茶って……これは以前商売先の人間からもらったものです。ケーキと合うと思ったので出してみましたが、お口に合うようで。よかった」

 「……」
 「……なんですか」
 「いや、あたしにもくれるんだなぁって……思っただけだ」
 「俺一人だけで飲んでも味気ないと思っただけです」
 「だったら、龍司とか千代さんとか。他の奴らと飲めばよかっただろう……何も『人間』のあたしに出すことなかったんじゃないのか?人間嫌いなんだろう?」
 「まぁそれも考えたのですが――‥もし毒でも入っていたら、と思ったもので」
 「……毒見役か?あたしは」
 「おや、勇者にしては察しがいい」
 「お前この野郎……」
 「冗談ですよ」
 「お前の冗談はどこまでが冗談なんだ‥?」

 「ですが……まぁあなたとお茶をするのもまぁ悪くはないかなと思いまして」
 「それって‥」
 「――特に深い意味はありませんが」
 「でも前のお前だったら絶対そんなこと思わないだろ?」
 「……まぁ、否定はしませんが」
 「だよなぁ……ふふっ」
 「なんですか急に笑い出して」
 「いや、ちょっと嬉しかっただけだ」
 「……まったくあなたはそう恥ずかしげもなくよくそんなことが言えますね」
 「だからお前は一言余計なんだよ」
 「まぁ、あなたは人間の中でも少しはマシな人間なのかな、と思っただけです」
 「……」 
 「なんですか?そんな呆けた顔をして」
 「いや……お前もそんな風に笑うんだなと思って‥」
 「そんな風、とは?」
 「いや!なんでもない!顔を凝視するな!お前も早くケーキを食べろっ!!!」
 「まったく‥よくわからない人ですね本当に‥」
 


    番外編『ケーキ×ケーキ』



 「――おいしいな、宮司」
 「えぇ、おいしいですね、勇者」